晴れのち智くん

ももゆき

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(チクってない…!)

そう智は言おうとしてやめた。
智は、綾野と多田が仲良しだからと、綾野も智の事をホモだと思っていると早とちりしてしまったが、
ホモでないと誤解を解くのに、多田の名前を出す必要はなかったと思い直したからだ。

(というか!綾野は何で多田に言っちゃうんだ!)

智は責任転嫁で綾野を責めたが、多田がチクったと怒ってるところを見ると、ホモ弄りしたことを綾野は咎めてくれたのかもしれない。

頭の中でモヤモヤと考えている間に沈黙が長くなったことに気づき、智は焦って口を開く。

「チクったつもりは無くて…!で、でもごめん…。」

智は謝罪の為に頭を下げ、そのまま多田の言葉を待った。

ツカツカと多田がソファから立ち上がり、こちらに近づいてくる音が聞こえ、顔をあげようとするのと同時に、
多田が智の前髪を捻じるように掴みあげ上を向かせた。

「い゛っ?!」

髪が引っこ抜けるんじゃないかと思うほどの強さと勢いに、驚きと痛みで顔を歪ませる。

「言い訳してんじゃねぇよ!チクってんだろうがよ!!」

痛みと恐怖で、智は涙を滲ませる。
謝ろうとして口を開くが、ガチガチと震えるだけで声が出ない。

多田は、さっきまで智が座っていたパイプ椅子に向かって智を投げた。

ガガン!!!
と大きい音を立てながらパイプ椅子と共に床に倒れる。

「…う゛っ…ぅうぅ~~~」

痛みに悶えながら起き上がろうとする智に、多田は足を蹴り下ろした。

「ぃぎっ!!」

頭を強く踏まれた衝撃で汚い悲鳴を上げながら再び床に倒れる。
多田は倒れる智の耳を掴みあげると、耳元で叫んだ。

「机にホモって彫られてんのも俺のせいにしてたよなぁ?
てめぇが男見て盛ってんの丸出しだからやられんだろうが!人のせいにしてんなよ!!」

「すみませんっ…ごめんなさい…!」

机のイタズラを多田のせいにしたのは本田だったが、訂正する勇気など智には無く、みっともなく謝り続けることしか出来なかった。

多田の暴力の容赦の無さに、もうこのまま殺されるかもしれない。
とよぎった時だった。

「うっわ!青木、顔血まみれじゃん!」

出入口の辺りから女性の驚くような声が響き、反射的に目をやる。
まなみだった。
まなみの他にも、多田とよく居るメンツが何名か居るようだ。

皆、一様に『やばっ』『やりすぎだって』とは言うものの、その声はどこか楽しげで、とても助けてくれそうにない雰囲気に智は絶望の色を深めた。

多田と智の周りに、多田の仲間たちが集まってくる。

「机のやつ俺のせいにした事と、統万にチクった事のお仕置してたとこ~」

先程までの怒号とは打って変わって、多田はのんびりとした口調で言った。

「ふ~ん?じゃあ分からせるのは、まだなんだね?」

まなみが、智を舐めるように見ている。

「そーそー。んじゃ、早速わからせてやりますか」


(分からせるって、何…?)

智は、嫌な予感がしながら周りの様子を伺った。

多田とまなみの他、男子が2名。
智は話したことないが、たしか渡辺と林だったはずだ。
2人とも多田や綾野のグループのメンツだ。


「青木。お前、統万に俺はホモじゃないって言ったんだって??」

多田が不敵な笑みを浮かべている。

「…ぅ………うん…」

自分の返答次第では、また暴力を振るわれるかもしれないと思い、智は慎重に返事をした。

「じゃあ、証明しろよ。」

多田がそう言うと、渡辺が智を羽交い締めにした。

「え?!な、なにっ…?!離して!!」

智は反射的に暴れたが、渡辺の拘束は強くビクともしなかった。

「お前のチンコ、俺らがしごいてやるけど、勃起すんなよ?ホモじゃないなら余裕だろ?」

多田のその言葉を聞いて、林が智のズボンに手をかける。
智は血の気が引いた。
ズボンを下ろされまいと必死に暴れるが、渡辺の拘束は緩まず、あっというまに脱がされてしまった。

「や、やめて…やめてください…おねがい、します…」

智はみっともなく泣きながら懇願した。

「えーーー。じゃあ…
まなみオカズにしてシコれよ。」

「…え?」

多田の提案に、智は耳を疑った。
仲間であるはずのまなみをオカズにしろと言ったのだ。
そんなの、まなみの方が嫌だろう、とまなみを見る。

「え~~?しょうがないなぁ♡」

「…ぇえ?!」

すぐにまなみの方から断るものだと思ってたのが、まなみは満更でも無い様子どこほか、なんならシャツを半分脱いで、豊かな胸元を智に見せつけている。

「んで、どっちにすんの?」

多田が選択を急かしてくるが、智はどちらも嫌で答えられずにいた。
どっちもしないで済む道はないか、智は必死に思考をめぐらせる。

例えば、少し大人しくしてれば渡辺の気も緩んで拘束が弱まるのでは?
弱まった隙を突けば、どうにか振り解けないだろうか。
そして、すぐに全速力で走れば何とか逃げきれないだろうか。

しかし、考えている間大人しくしている智に対して、渡辺の拘束が弱まることは無かった。

(なんとか、何とか時間を稼がないと…っ)

必死な智の思惑も虚しく、「おせぇよ」と多田が智の頭を足で小突いた。

「あと10秒で俺が決めるわ。じゅー」

「っ…!」

(やばい!時間稼いでる余裕ない!)

「きゅー」

焦る智の体に無意識に力が入る。

「はーち」

智が力んだことで、渡辺の拘束もより一層強まった。

「なーな」

(どうしよう…!どうしよう!)

「ろーく」

もう先程思い描いてた案は無理だ。
智は絶望的な状況に泣きそうになっていると、あることに気づいた。

「ごー」

自慰をさせられてる時は、拘束されないのでは無いか?

「よーん」

確証は無いけど、誰かに陰部を触られる状態よりは自由である可能性が高い。

「さーん」

なら、途中まで大人しく従うふりをして、隙を見て逃げ出せるのでは?

「にー」

急いで決断しないと、多田に決められてしまう。

「いーち…」

「じ!自分で…!………自分でやりますっ」

智は意を決して言った。



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