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くもり
4.
しおりを挟む翌日
授業終了の鐘が鳴ると、誰が呼びかけるわけでもなく綾野統万の席には男女問わず人が集まり談笑が始まる。
統万は、昨日読んだBL漫画を再現する為、物憂げな顔をしながら友人の話に耳を傾け機会を待っていた。
「どうした統万?今日元気ないじゃん」
多田が統万の異変に気づいて声をかける。
統万は内心ニヤリとほくそ笑んだ。
「うーん…実はさ~…」
それだけ言い、勿体ぶるように黙りこむと周りは『どうした~?』『大丈夫?』と興味を高まらせ返事を急かした。
「いや、何ていうか…青木がね。ちょっと怖いなぁーって思ってて…」
「え!青木が?!」
クラスで良くも悪くも目立たない青木の名前が出てきた事に、皆一様に驚きつつも『青木が怖いって何で?』と更に興味をかきたてられていく。
「俺の事めっちゃ見てる?ってくらい目が合うし、しかもその度顔真っ赤にしててさ…」
『え~!』と友人達の、キモいと面白いが混じった驚きの声に手応えを感じ、さらに続ける。
「でさ、もしかして俺の事好き?って思ってさ、本人に直接聞こうと思って話しかけたら明らかに避けられてさ…顔真っ赤にしながら逃げるから話も出来ないって感じ?」と、統万は少し苛立っている風を装って話した。
そんな統万の様子を見て、皆口々に『え~避けるとか心当たりないとしないよね?』とか『ホモってこと?』と言い合っていると、多田が口を開いた。
「そういや結構前の話になるけど、体育の着替えの時に、青木コソコソ着替えてんな~っと思ってチラッと見たら全身真っ赤になってた事あったわ!男の体みて興奮してたんかな~~~。俺ちょっと無理ぃ~!」
多田の燃料投下に、統万を置いてどんどん盛り上がりをみせる。
『てかさ、普段大人しい陰キャのくせに、たまにめっちゃ笑い声でかい時ない?うるさーって何回かなったんだけど(笑)』
『わかるわかる!』
『つか、ホモって知っちゃったら、もうアイツと喋れないな~惚れられちゃったら困るし?』
『青木智じゃなくて青木ほもだ(笑)』
(うわぁすごい♡めっちゃ良い流れじゃん。俺天才♡)
なんて事を統万が考えていると、多田が席を立った。
「俺ちょっと聞いてくるわ~」
多田はそう言うなり青木の席へ向かった。
「青木ーちょっといい?」
「え…何?」
青木は普段話すことの無いクラスメイトに急に話しかけられ困惑していた。隣で一緒に話していた本田も少し緊張している様子だ。
「青木ってホモなの?」
「…は…えっ?」
1ミリも予想してなかった質問と、ホモというワードに驚き、青木の思考は一気に混乱に陥った。
急いで否定しなくては、と思うより先に青木は自身の顔が熱くなるのを感じ焦った。
「全然っ、違うけど?!」
赤面しながら声を裏返らせ、酷く焦った形相に説得力は無いが、
多田は特に追求することなく「ふーん」とだけ言うと、ニヤつきながら本田と青木を意味ありげに一瞥し去っていった。
「なっ何今の…って、え……本田?」
青木が言いながら本田を振り返ると、そこには真っ青な顔をした本田が居た。
「えっ!えっ?だ、大じょ「お前マジでアイツらに何した?」
大丈夫?と言い終わる前に、本田の怒りを孕んだ声に遮られた。
「し!してない!………とおもう」
いつもと様子の違う本田に焦り、食い気味に否定したが、先日本田に『お前さ、それ目つけられてない?』と言われたばかりなのを思い出し自信をなくした。
「…………」
しばらくお互い沈黙が続いたが、本田が口を開く。
「まぁ、変な勘違いされてもあれだからさ。暫くはソーシャルディスタンス保とうぜっ☆」
本田はわざとらしくおちゃらけて言った。
「あ…そ、そうだね。ソーシャルディスタンス…あはは」
本田の明るい振る舞いにぎこちなさを感じ、猜疑心と申し訳なさが混濁する頭で
青木は無理に笑った。
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