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くもり
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しおりを挟む休み時間、各々が談笑したり読書したりと自由に過ごす中、一際うるさい一角の騒がしさに釣られ目をやると、一軍の男女に囲まれてる綾野統万とバッチリ目が合ってしまった。
「…!」
青木智は瞬時に自身の顔が熱くなるのを感じ、急いで目を逸らした。
「智、また赤くなってるぞー」
「やっぱり…?」
友人の本田に指摘され「すぐ赤くなるの嫌だなぁ…」と顔を手で覆い隠した。
何があったか聞かれ、先程のなんて事ない出来事を伝えると「そんだけで?赤面症って大変だな~」と呑気な返事が返ってくる。
「そうなんだよ…。昔からちょっとドキッとするだけで赤くなっちゃってさ、しかも今赤くなったら嫌だな。とか考えるだけで赤くなっちゃうしさ!」智の愚痴を本田はうんうんと聞いてくれる。
「そんでさ、さっきみたいに急に目が合うとかホント駄目でさぁ~…」そこまで聞いて山田はハッとした顔をする。
「でも俺と目が合って顔赤くなったことなくない?初対面の時から。」
「確かに…。」
(本田とは自然体で話せるんだよなー。)なんて考えていると、本田のじとーっとした視線を感じる。
「何だよ…」と聞けば、「イケメンの綾野には赤面するのに…」と本田は恨みがましく言った。
「いや、まぁ思いがけず目が合っちゃったからだと思うし!それに本田はぁ~。うーん…別にイケメンじゃないから落ち着くとかじゃなくて…。そうだ、似てるんだよ!」
「誰に?」
「じいちゃん家の犬に!」
なんて考え無しに言ってしまったので、本田は「はぁ?!いぬぅ?!!」と声を荒らげ「人ですらねぇ!」とそっぽを向いてしまった。
何度か本田に呼びかけるが、こっちを向く様子は無い。智は本気で怒らせてしまったかと焦り「本田、ごめん…」と真剣に謝った。
しばらくの沈黙の後、もう一度ごめんと謝って自席に戻ろうとした時。
バッと突然本田が振り返った。
バチりと視線を合わせたまま、親指と人差し指を使ってブイにして顎に重ね、片眉と片口を釣り上げニヒルに笑っている。
「・・・・・・・・・ブッ(笑)」
キメ顔で見つめられる時間に耐えられず智は思わず吹き出してしまった。
「思いがけず目が合っても、やっぱ俺じゃ赤くなんないじゃん!つか、人のキメ顔を笑うなや!」
ごめんやら許さんやら、智と本田がふざけ合っていると、クラスの一軍が屯する辺りが一際騒がしくなり「うわ、声デケェなー」とぼやく本田に釣られて智も目を向ける。
「なんか、壁ドン~とかイケメンは~とか聞こえるけど、なんの話ししてるんだろ……って、やばっ」
ガッツリ綾野と目が合ってしまった。やばいと思いすぐ視線を逸らしたものの顔に熱が急速に集まっていくのを感じる。
「うわ、智また赤くなってるぞ」
「だよね、わかってる。…また、綾野と目が合っちゃって」
本田は、そういって俯きがちに顔を手で仰ぐ智を見ながら何かを思い立ったように口を開いた。
「普通さ、そんなに何度も同じやつと目合うかな?意識して見てたりしないと無理じゃないか?」
本田の意見に智はハッと顔を上げる。
「実はさ…、今だけの話じゃないんだよね…。最近綾野と頻繁に目が合う気がしてて…。」
智は自分の気のせいだと言い聞かせてきたここ数日の出来事を本田に告げた。
「お前さ。それ、目つけられてない?アイツらになんかした?」本田は神妙な顔で尋ねる。
「こ、心当たり無いけど…。目つけられるって、え、こ、怖い」
もともと陰キャよりの智は、ただでさえも苦手な一軍陽キャに、もしかすると目をつけられてる疑惑に怯えて涙目で本田に詰寄る。
「お、俺どうしたらいいかな…?!」
「うーーん。取り敢えず、できる限りもう向こう見るなよ。目を合わさない!関わらない!」
智は、わかった。と返事をし「俺が虐められたら助けてくれる?」と上目遣いで本田に尋ねた。「いや俺は秒で見捨てる」と真顔で吐き捨てる本田に、この弱虫陰キャ!雑魚!と暴言を吐きながらふざけ合っていると、少し心が落ち着いてくるのを感じた。
不安も少し忘れた頃、授業前の鐘がなり智は自席に戻り教科書等の準備を始めた。
黒板へ向き直る智の後ろ姿を見つめる綾野
の熱い視線に、智は気づかないまま一日を終えた。
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