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48話
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誰かの荒い呼吸音がする。いや、そりゃ近くに生き物がいたら当たり前なのだが眠っていたのだろうか、どうも閉じている瞼のせいで目の前は真っ暗で耳に届く音だけが敏感に響いた。
「っ、お兄様………」
どうやら近くにいるのは妹らしい。金縛りのような状態で身動きが取れず何か幽霊にでもましてや助けられたのが夢だったのではないかという不安で目が開けられないままでいたが、その声に安心してゆっくり開ける。
そこは確かにユースの寝室で、妹が俺に背を向けるようにして「お兄様、お兄様」と小さな声で呼びながら熱心になにかをしている。
何してるんだ……?
相変わらず金縛りのようなもので身体は重く動かすことも話しかけることも叶わずただこちらを振り返れと言わんばかりに視線で訴える。
くち、……くちゅ、ぬちゃ、
先程からイヤらしい音がしているのは俺の幻聴ではないらしい………自慰でもして…………
いやいやいや男ならまだしも妹が兄の名前を呼びながらそんなことするわけがない。
ははは、悲しいことに健全男子の脳みそは水っぽいスライムがシェイクする音だけであらぬ方向に想像してしまう生き物だ。もちろんそういうことが好きな方々も男女問わずいるとはわかっているのだけど………
ま、まあこれはあくまで煩悩による憶測なので深く考えるのはよそう。無理があるかもしれないがもしかしたらお肉でも食しているのかもしれない。貴族界では夜食ははしたないことだけどその美味しさはとても理解してるつもりだ。それと一緒に飲む酒がこれまた………
「あれ……」
と、勝手に納得しているところでふと何かに夢中になっていたティアがゆっくりとこちらを振り返った。思ってた以上の冷たい声に「え」という言葉を漏らしつつ顔を見ると、影のせいか形相は恐ろしく見え………なにより
男性の性器がいもうとに、つ、いて、る?
「うあぁぁぁあああ!?!?」
そんな叫び声とともに飛び起きた俺は慌ててあたりを見渡した。すっかり朝というには日が登りすぎており、隣ですぅすぅと寝息を立てている妹の姿が見受けられた。
段々と昨夜の記憶が蘇り冷静になってくる。レウォラに長い間(実際はほとんど経ってなかった)囚われていたところハンスに助けてもらい、それからつい妹に失言をしてしまった俺に「今日はもてなした後一緒に寝てもらいますからね!」とプンスコ頬を膨らまして怒りながらされるがままになり今に至ったのだ。だから先程の摩訶不思議な出来事は完全に夢であり…
「んぅ…」
「!?」
ごそっと布団で身動きしたティアを横目に、俺は絶賛自己嫌悪の只中だった。………俺は妹でなんという夢を…………これは心から訴えたいのだが、ヒロインらしくかわいいからって決してそんな目では見てないし、妹を男にした覚えもない。こんなに可愛がっているのだ。そんな穢らわしい思考があってみろ、間違いなく自分の脳みそを刺す奇行に走る。
「っ、お兄様………」
どうやら近くにいるのは妹らしい。金縛りのような状態で身動きが取れず何か幽霊にでもましてや助けられたのが夢だったのではないかという不安で目が開けられないままでいたが、その声に安心してゆっくり開ける。
そこは確かにユースの寝室で、妹が俺に背を向けるようにして「お兄様、お兄様」と小さな声で呼びながら熱心になにかをしている。
何してるんだ……?
相変わらず金縛りのようなもので身体は重く動かすことも話しかけることも叶わずただこちらを振り返れと言わんばかりに視線で訴える。
くち、……くちゅ、ぬちゃ、
先程からイヤらしい音がしているのは俺の幻聴ではないらしい………自慰でもして…………
いやいやいや男ならまだしも妹が兄の名前を呼びながらそんなことするわけがない。
ははは、悲しいことに健全男子の脳みそは水っぽいスライムがシェイクする音だけであらぬ方向に想像してしまう生き物だ。もちろんそういうことが好きな方々も男女問わずいるとはわかっているのだけど………
ま、まあこれはあくまで煩悩による憶測なので深く考えるのはよそう。無理があるかもしれないがもしかしたらお肉でも食しているのかもしれない。貴族界では夜食ははしたないことだけどその美味しさはとても理解してるつもりだ。それと一緒に飲む酒がこれまた………
「あれ……」
と、勝手に納得しているところでふと何かに夢中になっていたティアがゆっくりとこちらを振り返った。思ってた以上の冷たい声に「え」という言葉を漏らしつつ顔を見ると、影のせいか形相は恐ろしく見え………なにより
男性の性器がいもうとに、つ、いて、る?
「うあぁぁぁあああ!?!?」
そんな叫び声とともに飛び起きた俺は慌ててあたりを見渡した。すっかり朝というには日が登りすぎており、隣ですぅすぅと寝息を立てている妹の姿が見受けられた。
段々と昨夜の記憶が蘇り冷静になってくる。レウォラに長い間(実際はほとんど経ってなかった)囚われていたところハンスに助けてもらい、それからつい妹に失言をしてしまった俺に「今日はもてなした後一緒に寝てもらいますからね!」とプンスコ頬を膨らまして怒りながらされるがままになり今に至ったのだ。だから先程の摩訶不思議な出来事は完全に夢であり…
「んぅ…」
「!?」
ごそっと布団で身動きしたティアを横目に、俺は絶賛自己嫌悪の只中だった。………俺は妹でなんという夢を…………これは心から訴えたいのだが、ヒロインらしくかわいいからって決してそんな目では見てないし、妹を男にした覚えもない。こんなに可愛がっているのだ。そんな穢らわしい思考があってみろ、間違いなく自分の脳みそを刺す奇行に走る。
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