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37話

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中々にクサイ小説を何冊か爆速で読み終えたあと、読んでだから何?実践すればいいのか?と賢者モードにも等しい現象に襲われている真っ最中であった。

「何を読んでるのかしら~?」
「うわっ!」

最近知ったことだが、俺は考え込むとトコトン自分の世界に入ってしまうタイプらしい。そして現在進行系で背後からおそらくワザと驚かすように声をかけてきたのはアルレアである。

「なんだお前か……….って!見るな!」
「昼頃から深夜まで寝室に入り浸ってたら何してるのか気になるでしょ?」

と言いながら背中で隠していたものをスラッと長い腕を使って素早く奪われてしまった。

「『貴方の肝臓を食べたい』……?あら、これシリアスめの恋愛小説じゃない。」
「知ってるのか?」
「ええ、何年か前に少女らに読み聞かせしたからね。」

なんてタイトルのモノを読ませてるんだというツッコミの前に、「読み聞かせ」という単語が気になり過ぎて固まった。

「少女ってどこのだ?」
「……そういえば貴方ユースちゃんじゃないのよね。記憶も全くないの?」
「大抵はあるんだが、一部思い出せないことがある。」
「そう…なら仕方ないわね…………ワタシ子供が好きなのよ。」

シーンと部屋に沈黙が訪れる。

「……はあ。」
「興味なさそうなとこアイツにそっくりだわ。……子供はいいわよ、純粋で穢を知らない上、どんな奴らよりも刷り込みやすいもの。」

それは子供好きと言っていいのか?という言葉を飲み込んで、しかし明らかに先程より機嫌が良くなったことをいいことに会話を続ける。彼の一番漬け込みやすい所はこれなのではないかとすぐに思った。

「孤児院みたいなのでもある、らしいな。」
「……思い出したみたいね。」
「ああ、だから明日そこに連れて行ってくれ。」
「はあ?」

どんなものか見に行ってみたいついでに、アルレアの意外な一面も確認できるかもしれないという下心もあるにはあるが、何より前世で年下の親戚が多かった俺は当然子供好きであり、ちょっと癒やし的存在が欲しかった。

「あと俺は子供の扱いには上手いぞ。盗られても怒るなよ?」
「同じ顔で解釈違いなこと言わないでくれる?あとまだ良いとは言ってないわ。」
「場所も思い出したことだし勝手に行く。……それとまさかだと思うが子供を人体実験に使ってたりしないだろうな?」
「失礼だわ!ワタシがそんなことすると思うの?」

信じられないと傷ついた表情をする彼が、この家の裏切り者は全てアルレアによって良いように使われていることを俺は知っている。ただ、幾らか良心はあるようで、ひとまず安堵ため息をついた。
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