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19話
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連れてこられたのは、厳重に鍵が施されており、周りには鋭い目つきの警備の者はいるが、生きているのかを疑うレベルで石像のようにピクリとも動かないという気味の悪い場所だ。
「ここから機密の場所になります故、他言無用でお願いします。」
金属でできた扉を前にレファルドは暗号キーを入力し終わると自動的に開いた。
それと同時に襲う腐敗臭に思わず眉間に皺を寄せる。
「我々に敗れた魔族はどうなったと思います?」
「急になんの話だ……えっと、奴隷か捨てたんじゃなかったか?」
これも都合よくユースの記憶が残っているおかげで、魔族とかいうファンタジー要素がよく分かるが、改めて説明しよう。
昔から人間と魔族という種族は争いが絶えなかった。力の差は五分五分だったが近年やっと人間はその戦争に終止符を打つことができた。
そして捕虜となった魔族らは……奴隷か遠くの治安の悪い場所に捨てられたときく。それはどの一般人も知っている教養だ。
「私は彼らの優秀な魔力を捨て置くのは勿体無いと思ってしまったのです。」
「それで?」
「こうして彼らの魔力を吸い取り、兵器の糧となってもらう装置を開発しました。」
「なっ……」
次に扉を開けた先は、全身に針のようなものが刺され、痩せ細って骨と皮だけのようになっている魔族と呼ばれる者たちの姿があった。
込み上げる吐き気を必死に耐え、次第に痛くなっていく頭に気が遠くなっていく気がした。
頭に………変なのが流れ込んでくる…………。
幸い魔族の前で熱弁している彼は俺の容体の変化など微塵も気が付いていないようで、これ幸いになんとか我慢しようと奮闘するが………努力も虚しく…………………
『どうか、どうか弟を助けてください。』
(……ハンス?)
気が付いたら明らか重傷を負っていたハンスが俺に縋るように裾を掴んでいた。
(どこだここは………。)
ここは間違いなくさっきの暗闇ではなく、一面雪が積もっており、そしてその雪は赤黒く染まっている。流しているのはハンスのものだろう。
………これは過去のユースの記憶?
「お願いします!私の命などどうでもいいのです。先程連れ去られたのは私の弟です。返してください!!」
「……ふーん、あれはお前の弟さんだったのか。しかしな、連行したのは俺が連れてきたやつじゃないからどこへ行ったのか知らないな。」
「っ……」
全くそんなことを言おうとしていないが、勝手に言葉が紡がれ、勝手に動かれる。どうやら俺には操作不可能みたいで、ただ眺めていることしかできなかった。
「おい、何しようとしてる。」
「弟を探しに行きます。」
「ハっ、残念ながら俺も人間なものでな、魔族を易々と逃すわけにはいかないんだ。」
(や、やめろユース、!?何しようとしてるんだ!?)
そういうと彼は慣れた手つきでハンスの魔族の証であろう、羽を簡単に手折った。
「ぐぅっ、」
(ハンスッ!!)
そこには神経がみっしりと詰まっているだろうに、ハンスは右目から生理的な涙を流して睨みつけるだけでこちらの様子を伺っている。
「……うーーん。」
さっきまでの低い声から急に呑気な声が自分からあがったかと思うと、ニコリと俺は笑い彼の顎を強引に掴んで目を合わさせた。
「良い顔してるな。」
「………は?」
「やっぱりお前の殺すのはやめた。俺に仕えろ。そしたら弟のことを探してやるし、お前が魔族の王子であることを黙っといてやるよ。」
ーーーこれは契約だ。
ハンスの目に反射したユースのニコニコと微笑む顔はそれはもう無邪気な子供のような顔をしていた。
「ここから機密の場所になります故、他言無用でお願いします。」
金属でできた扉を前にレファルドは暗号キーを入力し終わると自動的に開いた。
それと同時に襲う腐敗臭に思わず眉間に皺を寄せる。
「我々に敗れた魔族はどうなったと思います?」
「急になんの話だ……えっと、奴隷か捨てたんじゃなかったか?」
これも都合よくユースの記憶が残っているおかげで、魔族とかいうファンタジー要素がよく分かるが、改めて説明しよう。
昔から人間と魔族という種族は争いが絶えなかった。力の差は五分五分だったが近年やっと人間はその戦争に終止符を打つことができた。
そして捕虜となった魔族らは……奴隷か遠くの治安の悪い場所に捨てられたときく。それはどの一般人も知っている教養だ。
「私は彼らの優秀な魔力を捨て置くのは勿体無いと思ってしまったのです。」
「それで?」
「こうして彼らの魔力を吸い取り、兵器の糧となってもらう装置を開発しました。」
「なっ……」
次に扉を開けた先は、全身に針のようなものが刺され、痩せ細って骨と皮だけのようになっている魔族と呼ばれる者たちの姿があった。
込み上げる吐き気を必死に耐え、次第に痛くなっていく頭に気が遠くなっていく気がした。
頭に………変なのが流れ込んでくる…………。
幸い魔族の前で熱弁している彼は俺の容体の変化など微塵も気が付いていないようで、これ幸いになんとか我慢しようと奮闘するが………努力も虚しく…………………
『どうか、どうか弟を助けてください。』
(……ハンス?)
気が付いたら明らか重傷を負っていたハンスが俺に縋るように裾を掴んでいた。
(どこだここは………。)
ここは間違いなくさっきの暗闇ではなく、一面雪が積もっており、そしてその雪は赤黒く染まっている。流しているのはハンスのものだろう。
………これは過去のユースの記憶?
「お願いします!私の命などどうでもいいのです。先程連れ去られたのは私の弟です。返してください!!」
「……ふーん、あれはお前の弟さんだったのか。しかしな、連行したのは俺が連れてきたやつじゃないからどこへ行ったのか知らないな。」
「っ……」
全くそんなことを言おうとしていないが、勝手に言葉が紡がれ、勝手に動かれる。どうやら俺には操作不可能みたいで、ただ眺めていることしかできなかった。
「おい、何しようとしてる。」
「弟を探しに行きます。」
「ハっ、残念ながら俺も人間なものでな、魔族を易々と逃すわけにはいかないんだ。」
(や、やめろユース、!?何しようとしてるんだ!?)
そういうと彼は慣れた手つきでハンスの魔族の証であろう、羽を簡単に手折った。
「ぐぅっ、」
(ハンスッ!!)
そこには神経がみっしりと詰まっているだろうに、ハンスは右目から生理的な涙を流して睨みつけるだけでこちらの様子を伺っている。
「……うーーん。」
さっきまでの低い声から急に呑気な声が自分からあがったかと思うと、ニコリと俺は笑い彼の顎を強引に掴んで目を合わさせた。
「良い顔してるな。」
「………は?」
「やっぱりお前の殺すのはやめた。俺に仕えろ。そしたら弟のことを探してやるし、お前が魔族の王子であることを黙っといてやるよ。」
ーーーこれは契約だ。
ハンスの目に反射したユースのニコニコと微笑む顔はそれはもう無邪気な子供のような顔をしていた。
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