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13話
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「ユース様…おはようございま………っ」
「あ、ああ、おはよう。」
気まずい………。
俺を起こそうと入ってきたハンスは表情はニコニコと一切変えないものの、扉を開け、俺に抱きつく形ですやすやと寝ている妹の存在を確認した途端固まった。
目で何があったんですかと訴えてくる。
俺だってまさか同じベッドで寝るとは思っていなかったし、こんな抱きつかれるとも想像すらしていなかった。
俺がユースならまだいい。しかし中身は成人男性の舞塚裕也だ!!女の子にこんなことされてドキドキしないわけがない。
「ご主人様、顔に酷いクマが出来てしまっています。今蒸しタオルをお持ちいたしますので少々お待ちください。」
「頼む。」
とそそくさと出ていってしまった。お察しの通り本当に一睡も出来なかった。
「ティア、ティア、起きて。」
「んう……」
抱きつく腕の力強さにちょっと感心しつつ、また誰かが部屋に入ってきたら誤解を招かねないので、この状況から逃げ出したかった。
何やってんだ馬鹿。昨日の俺はどうにかしていた。何があっても断るべきだった………いやでもそうしたらヒロインの好感度(というかあるのか?…は置いといて)が上がることはないだろう。
うーんと唸っていると扉が開いた。ハンスかと思って目をやったのだが、残念ながらノックもなしに入ってくる人物の心当たりは1人しかいない。
「おはよ~ダーリン♡」
「うげっ、」
とても聞き覚えのある声にまたしても眉間に皺が寄ってしまう。跡がついたら全部こいつのせいだろう。
「あら、首すっかり綺麗になってるのね。今度は妹ちゃんをたぶらかして治療したのかしら。罪な男ね。」
「これはそんなんじゃ……いや、そうなのか?」
「何で疑問系なのよ。」
と素振りは案外いつも通りで逆に怖いがあまり深掘りしないでおこう、というかそもそもお前が噛みついて来なければこんなことにはならなかったのだ。
「あら、私だってあれくらいなら治せたのに。ユースちゃんが逃げちゃったから……。」
そんなに顔に出したつもりはなかったが、俺の心は何かに書き起こされているかのように的確に読み取られてしまった。
「おや、おはようございますアルレアさん。」
「あらあ、泥棒猫1号ちゃんおはよう。」
「はて泥棒猫とはどなたのことでしょうか。」
アルレアは明らかに鋭い視線を寄越しているのだが、ハンスは何事もないように通り抜けると、失礼しますと断りを入れて蒸しタオルで顔を丁寧に温め始めた。
正直本人に尋ねても墓穴を掘る未来しか見えないので、ハンスが間に入ってくれてよかった。アルレアかハンスの一対一だと精神攻撃を喰らうが、3人の方がいくらか中和されるらしい。酸と塩基みたいなやつらだ。
「そうだ、ユースちゃん。これ今度のパーティの参加者の資料をまとめてきたわ。目を通しておいてね。それから最近力をつけ始めている男爵のアポとりできるかしら。個人的に嫌なものを感じるのよね。」
「もしかして……リーゼン家の者でしょうか。」
いつもなら耳に入っていても何も反応することなくスッといなくなってしまうハンスだが、今日は珍しく会話に入ってくる。
これにはアルレアも驚いたようで、目をぱちくりさせていた。
「ハンスは知っているのか?」
「……詳しくはないのですが身内からよくない話を伺います。」
「……その件…具体的に話してくれる?」
少し考えるような素振りを見せてから、ポツポツと語り始めた。
「あ、ああ、おはよう。」
気まずい………。
俺を起こそうと入ってきたハンスは表情はニコニコと一切変えないものの、扉を開け、俺に抱きつく形ですやすやと寝ている妹の存在を確認した途端固まった。
目で何があったんですかと訴えてくる。
俺だってまさか同じベッドで寝るとは思っていなかったし、こんな抱きつかれるとも想像すらしていなかった。
俺がユースならまだいい。しかし中身は成人男性の舞塚裕也だ!!女の子にこんなことされてドキドキしないわけがない。
「ご主人様、顔に酷いクマが出来てしまっています。今蒸しタオルをお持ちいたしますので少々お待ちください。」
「頼む。」
とそそくさと出ていってしまった。お察しの通り本当に一睡も出来なかった。
「ティア、ティア、起きて。」
「んう……」
抱きつく腕の力強さにちょっと感心しつつ、また誰かが部屋に入ってきたら誤解を招かねないので、この状況から逃げ出したかった。
何やってんだ馬鹿。昨日の俺はどうにかしていた。何があっても断るべきだった………いやでもそうしたらヒロインの好感度(というかあるのか?…は置いといて)が上がることはないだろう。
うーんと唸っていると扉が開いた。ハンスかと思って目をやったのだが、残念ながらノックもなしに入ってくる人物の心当たりは1人しかいない。
「おはよ~ダーリン♡」
「うげっ、」
とても聞き覚えのある声にまたしても眉間に皺が寄ってしまう。跡がついたら全部こいつのせいだろう。
「あら、首すっかり綺麗になってるのね。今度は妹ちゃんをたぶらかして治療したのかしら。罪な男ね。」
「これはそんなんじゃ……いや、そうなのか?」
「何で疑問系なのよ。」
と素振りは案外いつも通りで逆に怖いがあまり深掘りしないでおこう、というかそもそもお前が噛みついて来なければこんなことにはならなかったのだ。
「あら、私だってあれくらいなら治せたのに。ユースちゃんが逃げちゃったから……。」
そんなに顔に出したつもりはなかったが、俺の心は何かに書き起こされているかのように的確に読み取られてしまった。
「おや、おはようございますアルレアさん。」
「あらあ、泥棒猫1号ちゃんおはよう。」
「はて泥棒猫とはどなたのことでしょうか。」
アルレアは明らかに鋭い視線を寄越しているのだが、ハンスは何事もないように通り抜けると、失礼しますと断りを入れて蒸しタオルで顔を丁寧に温め始めた。
正直本人に尋ねても墓穴を掘る未来しか見えないので、ハンスが間に入ってくれてよかった。アルレアかハンスの一対一だと精神攻撃を喰らうが、3人の方がいくらか中和されるらしい。酸と塩基みたいなやつらだ。
「そうだ、ユースちゃん。これ今度のパーティの参加者の資料をまとめてきたわ。目を通しておいてね。それから最近力をつけ始めている男爵のアポとりできるかしら。個人的に嫌なものを感じるのよね。」
「もしかして……リーゼン家の者でしょうか。」
いつもなら耳に入っていても何も反応することなくスッといなくなってしまうハンスだが、今日は珍しく会話に入ってくる。
これにはアルレアも驚いたようで、目をぱちくりさせていた。
「ハンスは知っているのか?」
「……詳しくはないのですが身内からよくない話を伺います。」
「……その件…具体的に話してくれる?」
少し考えるような素振りを見せてから、ポツポツと語り始めた。
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