4人の乙女ゲーサイコパス従者と逃げたい悪役令息の俺

りゅの

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10話

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ヒロインを開放したとどこぞの誰かから報告を耳にしてから、しばらくたった。あれからどう接していいか分からない俺はできるだけ接触ないようにしていた。彼女もこちらには来ていないらしい。

最近はめっきり部屋に訪れる者が減った。マッサージやら菓子やらと人を完全に駄目にしてしまうようなことをしてこようとするので、俺になってからには人を払うようになっている。

一応「本日もよろしいのですか?」と使用人が声はかけてきたりするものの、俺が首を縦に振らない限りそれだけだ。

ずっと怒涛の1日を過ごし、気がついたら夜遅くになり寝ることを繰り返す。正直もう疲れていた。俺はユースではなく一般市民の思考をしている。無意識に心が追いついていないせいかもしれない。

1日1番の楽しみである睡眠の基台となる寝室を開ける。さあ、今寝にゆくぞ!と己の心を奮い立たせた時だった。

「ダーリン♡」

聞き覚えしかない野太い声に一瞬で顔がきゅっとなる。

そこにはユースのキングサイズのベッドに堂々と横たわるアルレアの姿があった。

「……出ていけ。」
「えーいやよ~。」

呑気な声でゴロゴロと寝そべる姿は、ここの家の者なら信じられない行動だ。間違いなく戦力元大魔法使いになる居候にしかできない所業だろう。ユースがこいつに奉仕とやらをさせていない理由はここにいるのかもしれない。

「ちょっと!?どこ行くのよ。」
「興醒めた。散歩に行ってくる。」

というのは口実で、正直俺は定期的に絡んでくるアルレアを可能な限り避けていた。オネエのせいで隠されているだけで、彼の聡明さはこの家にいるもの全員にかかっても辿り着けないだろう。何も語らなくても彼の行動から滲み出ている。

好感度96%はユースに向けてあるだけで、俺ではない。隣にいるだけで実質鋭い刃を向けられているようなものだった。もしバレたりなんかしてみろ。碌でもないことが起こるに違いない。

「……行かせるかよ。」
「え?」

地を這うような声に、一瞬誰だと思ったが、部屋には主人とその居候の2人のみ。俺が発していないのなら先程の声の持ち主などわかりきったようなものだろう。

と考えているうちに視界は天井に……つまり温度のない床に押し倒されていた。

何をと考える間もなく、ガッという音と痛みが首元に走り悲鳴にならない悲鳴をあげる。

傷口からじゅるじゅるとまるで吸血鬼かのように吸ったかと思うと、今までニコニコとしていた表情が嘘だったかのように抜け、真顔で迫ってきた。

どうしたらいいんだと言うよりも勝手に身体がものすごい速さで彼の頬を殴り飛ばす。自身でもこんなに力があるとは思わず、アルレアが壁に大きく打ちつけたことに驚いた。

しかしすぐにフラフラと起き上がったと思うと「躊躇いのない殴り……これでこそ貴方よね……」と嬉しそうに頷いている彼を見て絶句せずにはいられなかった。

なんでそんな恍惚そうな顔をするんだ……。

理解が追いつかない上、不気味な彼に別の意味でうるさい心臓が聞かれないようにと逃げるように自室を出た。
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