10 / 51
10話
しおりを挟む
ヒロインを開放したとどこぞの誰かから報告を耳にしてから、しばらくたった。あれからどう接していいか分からない俺はできるだけ接触ないようにしていた。彼女もこちらには来ていないらしい。
最近はめっきり部屋に訪れる者が減った。マッサージやら菓子やらと人を完全に駄目にしてしまうようなことをしてこようとするので、俺になってからには人を払うようになっている。
一応「本日もよろしいのですか?」と使用人が声はかけてきたりするものの、俺が首を縦に振らない限りそれだけだ。
ずっと怒涛の1日を過ごし、気がついたら夜遅くになり寝ることを繰り返す。正直もう疲れていた。俺はユースではなく一般市民の思考をしている。無意識に心が追いついていないせいかもしれない。
1日1番の楽しみである睡眠の基台となる寝室を開ける。さあ、今寝にゆくぞ!と己の心を奮い立たせた時だった。
「ダーリン♡」
聞き覚えしかない野太い声に一瞬で顔がきゅっとなる。
そこにはユースのキングサイズのベッドに堂々と横たわるアルレアの姿があった。
「……出ていけ。」
「えーいやよ~。」
呑気な声でゴロゴロと寝そべる姿は、ここの家の者なら信じられない行動だ。間違いなく戦力になる居候にしかできない所業だろう。ユースがこいつに奉仕とやらをさせていない理由はここにいるのかもしれない。
「ちょっと!?どこ行くのよ。」
「興醒めた。散歩に行ってくる。」
というのは口実で、正直俺は定期的に絡んでくるアルレアを可能な限り避けていた。オネエのせいで隠されているだけで、彼の聡明さはこの家にいるもの全員にかかっても辿り着けないだろう。何も語らなくても彼の行動から滲み出ている。
好感度96%はユースに向けてあるだけで、俺ではない。隣にいるだけで実質鋭い刃を向けられているようなものだった。もしバレたりなんかしてみろ。碌でもないことが起こるに違いない。
「……行かせるかよ。」
「え?」
地を這うような声に、一瞬誰だと思ったが、部屋には主人とその居候の2人のみ。俺が発していないのなら先程の声の持ち主などわかりきったようなものだろう。
と考えているうちに視界は天井に……つまり温度のない床に押し倒されていた。
何をと考える間もなく、ガッという音と痛みが首元に走り悲鳴にならない悲鳴をあげる。
傷口からじゅるじゅるとまるで吸血鬼かのように吸ったかと思うと、今までニコニコとしていた表情が嘘だったかのように抜け、真顔で迫ってきた。
どうしたらいいんだと言うよりも勝手に身体がものすごい速さで彼の頬を殴り飛ばす。自身でもこんなに力があるとは思わず、アルレアが壁に大きく打ちつけたことに驚いた。
しかしすぐにフラフラと起き上がったと思うと「躊躇いのない殴り……これでこそ貴方よね……」と嬉しそうに頷いている彼を見て絶句せずにはいられなかった。
なんでそんな恍惚そうな顔をするんだ……。
理解が追いつかない上、不気味な彼に別の意味でうるさい心臓が聞かれないようにと逃げるように自室を出た。
最近はめっきり部屋に訪れる者が減った。マッサージやら菓子やらと人を完全に駄目にしてしまうようなことをしてこようとするので、俺になってからには人を払うようになっている。
一応「本日もよろしいのですか?」と使用人が声はかけてきたりするものの、俺が首を縦に振らない限りそれだけだ。
ずっと怒涛の1日を過ごし、気がついたら夜遅くになり寝ることを繰り返す。正直もう疲れていた。俺はユースではなく一般市民の思考をしている。無意識に心が追いついていないせいかもしれない。
1日1番の楽しみである睡眠の基台となる寝室を開ける。さあ、今寝にゆくぞ!と己の心を奮い立たせた時だった。
「ダーリン♡」
聞き覚えしかない野太い声に一瞬で顔がきゅっとなる。
そこにはユースのキングサイズのベッドに堂々と横たわるアルレアの姿があった。
「……出ていけ。」
「えーいやよ~。」
呑気な声でゴロゴロと寝そべる姿は、ここの家の者なら信じられない行動だ。間違いなく戦力になる居候にしかできない所業だろう。ユースがこいつに奉仕とやらをさせていない理由はここにいるのかもしれない。
「ちょっと!?どこ行くのよ。」
「興醒めた。散歩に行ってくる。」
というのは口実で、正直俺は定期的に絡んでくるアルレアを可能な限り避けていた。オネエのせいで隠されているだけで、彼の聡明さはこの家にいるもの全員にかかっても辿り着けないだろう。何も語らなくても彼の行動から滲み出ている。
好感度96%はユースに向けてあるだけで、俺ではない。隣にいるだけで実質鋭い刃を向けられているようなものだった。もしバレたりなんかしてみろ。碌でもないことが起こるに違いない。
「……行かせるかよ。」
「え?」
地を這うような声に、一瞬誰だと思ったが、部屋には主人とその居候の2人のみ。俺が発していないのなら先程の声の持ち主などわかりきったようなものだろう。
と考えているうちに視界は天井に……つまり温度のない床に押し倒されていた。
何をと考える間もなく、ガッという音と痛みが首元に走り悲鳴にならない悲鳴をあげる。
傷口からじゅるじゅるとまるで吸血鬼かのように吸ったかと思うと、今までニコニコとしていた表情が嘘だったかのように抜け、真顔で迫ってきた。
どうしたらいいんだと言うよりも勝手に身体がものすごい速さで彼の頬を殴り飛ばす。自身でもこんなに力があるとは思わず、アルレアが壁に大きく打ちつけたことに驚いた。
しかしすぐにフラフラと起き上がったと思うと「躊躇いのない殴り……これでこそ貴方よね……」と嬉しそうに頷いている彼を見て絶句せずにはいられなかった。
なんでそんな恍惚そうな顔をするんだ……。
理解が追いつかない上、不気味な彼に別の意味でうるさい心臓が聞かれないようにと逃げるように自室を出た。
131
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる