7 / 51
7話
しおりを挟む
「し、失礼します。」
「どうぞ。」
そーっと扉を開けて入ってきたのは今朝約束を取り付けたレイクだった。
「ハンスに用意してもらった塗り薬だ。間違いなく逸品だろう。…んー、あそこでも適当に座ってくれ。」
「っ、床で十分です!!」
その辺にあった椅子を指差すと、それだけは譲れないと首を振りその場に跪いた。しばらく視線の攻防が続いたが先に折れたのは俺だった。
「仮面を外すぞ?」
その言葉にピクっと反応したが、大丈夫そうなのでロックを解除し取り外す。
顔から取り外した途端、ずっしりと重みを感じ「こんなクソ重いの付けてたのかよ。」とゾッとする。少年に耐えれるような重量ではない。
仮面をつけるよう命じたのは嫌がらせも含まれているのでは?と自分の身体に嫌悪せざるを得なかった。
棚から取り出した塗り薬を少量指につけ、そっと塗り込む。
跡が治りはできないが、痒み止めくらいにはなるだろう。
死者の復活はダメでも、聖女の力があればこの程度の傷跡など簡単に消えてしまうらしい。
多分もう少し先の未来の妹が治すはずなので、それまでの辛抱といったところだろうか。
「よし、これで終わりだ。もう部屋に戻ってくれていい。」
「うえ!?……あの、対価は…。」
「…対価?朝も言ったけど、今日は俺の善意だ。いつも頑張ってくれているからな。これからもよろしく頼む。」
「あ、あ、ありがとうございます……地下の世話も頑張ります!」
……地下の世話?
なんの話だとユースの記憶を探るが、肝心な情報が1つも出てこない。発言から推測するに、この屋敷には地下があって何かを飼っているのだろうか。
まあ、間違いなく碌でもないモノだろうが。
「ではおやすみなさい、ご主人様。」
「ああ。」
足音1つなくスッと部屋を出ていった彼を見送った後、踵を返し「さて……かなり遅い時間帯だし俺も寝ないとな。」とボヤいた時だった。
「イヤだもう!まーたワタシ以外の男を部屋に入れてる~~!」
完璧に防音な筈だが、レイクが出ていくとき閉まりきっておらず、扉が若干空いていたせいで廊下から野太い男の声が聞こえてくる。
扉が完全に閉まる前にガッと指が入ってきたかと思うと、普通に開けて堂々と入ってきた。
……誰だお前。
敵意は感じられないが、まず家の使用人だと夜に部屋に入ってくることはまずないので、攻略対象者ではないか?と思い、図鑑を開いた。
ーーーーーーー
『アルレア・コンゼット』
元大魔法使い
幼馴染であり、今は秘書として政を手伝っている。
オネエ口調にしているのはそれが面白いと思っているだけであり、真面目なときは全然普通に話す。逆にオネエ口調の時は真剣に思ってない。(例外としてユースにはオネエ口調。なんか楽しいから。)
楽しいことが大好き。
ーー詳細不明
ーー詳細不明
ご奉仕は一切させていない。キモいから。
ーーーーーー
攻略対象者という予想は見事的中したわけだが、おうおう色んな意味で情報量がすごいな。
こんなやつが元大魔法使いだあ?世の中外面だけでは判断できないというのはこういうことを言うんだろう。
「ハンスとかいう悪い男だけじゃなく、ワタシが出かけている間に今度は一体誰よ!!」
「塗り薬を渡しただけだし。それにもう最近そういうことに興味がなくなったんだ。」
「………使いすぎて枯れたの?」
「っ!馬鹿!!んなわけないだろ!!」
そういや、こいつの好感度はいくらくらいだろうか。記録からして普通に高そうだが。しかしハンスの件がある。油断はできない。
待てよ、そういや好感度を見るスキルは数日に一回と言っていたな。………1人あたり数日に一回だとしたら?レイクだって、アルレアも確認できるんじゃないのか?
(アルレアの現在の好感度は?)
〈アルレア・コンゼットの只今の好感度 : 96%〉
よっしゃビンゴ!!もっと早くに気がついてレイクも確認すれば良かったかもしれない。
…それにしても96%って……ほぼ攻略してるようなもんじゃないか。
「なら君も自室に帰ってもらおうか。部屋がないとは言わせないぞ。俺は今日はもう寝るんだ。」
「えー!?報告聞いてかないの?あんなに欲しがってた情報なのに?ワタシちょー頑張ったのに?」
「明日でいい。なんか、、睡魔がすごくて。」
緊張が解けたせいかレイクが出ていってからずっと、フラフラして強烈な睡魔が襲う。昨夜はしっかり寝たはずなのに。
「やっぱり?だってあそこに暗殺者がいるもんね。」
「え?」
アルレアが手を動かしたと思ったら、ボッという音と共に悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたのよ。普段そんなヘマしないでしょ?」
「……えっと、ハハ。…別のことに気とられててな。」
「……?」
普段って…俺そんなに命狙われる存在なのか?さっきの明るい表情から一転、アルレアは訝しげな表情をする。
この96%の好感度を持つこいつが1番厄介かもしれない。
「どうぞ。」
そーっと扉を開けて入ってきたのは今朝約束を取り付けたレイクだった。
「ハンスに用意してもらった塗り薬だ。間違いなく逸品だろう。…んー、あそこでも適当に座ってくれ。」
「っ、床で十分です!!」
その辺にあった椅子を指差すと、それだけは譲れないと首を振りその場に跪いた。しばらく視線の攻防が続いたが先に折れたのは俺だった。
「仮面を外すぞ?」
その言葉にピクっと反応したが、大丈夫そうなのでロックを解除し取り外す。
顔から取り外した途端、ずっしりと重みを感じ「こんなクソ重いの付けてたのかよ。」とゾッとする。少年に耐えれるような重量ではない。
仮面をつけるよう命じたのは嫌がらせも含まれているのでは?と自分の身体に嫌悪せざるを得なかった。
棚から取り出した塗り薬を少量指につけ、そっと塗り込む。
跡が治りはできないが、痒み止めくらいにはなるだろう。
死者の復活はダメでも、聖女の力があればこの程度の傷跡など簡単に消えてしまうらしい。
多分もう少し先の未来の妹が治すはずなので、それまでの辛抱といったところだろうか。
「よし、これで終わりだ。もう部屋に戻ってくれていい。」
「うえ!?……あの、対価は…。」
「…対価?朝も言ったけど、今日は俺の善意だ。いつも頑張ってくれているからな。これからもよろしく頼む。」
「あ、あ、ありがとうございます……地下の世話も頑張ります!」
……地下の世話?
なんの話だとユースの記憶を探るが、肝心な情報が1つも出てこない。発言から推測するに、この屋敷には地下があって何かを飼っているのだろうか。
まあ、間違いなく碌でもないモノだろうが。
「ではおやすみなさい、ご主人様。」
「ああ。」
足音1つなくスッと部屋を出ていった彼を見送った後、踵を返し「さて……かなり遅い時間帯だし俺も寝ないとな。」とボヤいた時だった。
「イヤだもう!まーたワタシ以外の男を部屋に入れてる~~!」
完璧に防音な筈だが、レイクが出ていくとき閉まりきっておらず、扉が若干空いていたせいで廊下から野太い男の声が聞こえてくる。
扉が完全に閉まる前にガッと指が入ってきたかと思うと、普通に開けて堂々と入ってきた。
……誰だお前。
敵意は感じられないが、まず家の使用人だと夜に部屋に入ってくることはまずないので、攻略対象者ではないか?と思い、図鑑を開いた。
ーーーーーーー
『アルレア・コンゼット』
元大魔法使い
幼馴染であり、今は秘書として政を手伝っている。
オネエ口調にしているのはそれが面白いと思っているだけであり、真面目なときは全然普通に話す。逆にオネエ口調の時は真剣に思ってない。(例外としてユースにはオネエ口調。なんか楽しいから。)
楽しいことが大好き。
ーー詳細不明
ーー詳細不明
ご奉仕は一切させていない。キモいから。
ーーーーーー
攻略対象者という予想は見事的中したわけだが、おうおう色んな意味で情報量がすごいな。
こんなやつが元大魔法使いだあ?世の中外面だけでは判断できないというのはこういうことを言うんだろう。
「ハンスとかいう悪い男だけじゃなく、ワタシが出かけている間に今度は一体誰よ!!」
「塗り薬を渡しただけだし。それにもう最近そういうことに興味がなくなったんだ。」
「………使いすぎて枯れたの?」
「っ!馬鹿!!んなわけないだろ!!」
そういや、こいつの好感度はいくらくらいだろうか。記録からして普通に高そうだが。しかしハンスの件がある。油断はできない。
待てよ、そういや好感度を見るスキルは数日に一回と言っていたな。………1人あたり数日に一回だとしたら?レイクだって、アルレアも確認できるんじゃないのか?
(アルレアの現在の好感度は?)
〈アルレア・コンゼットの只今の好感度 : 96%〉
よっしゃビンゴ!!もっと早くに気がついてレイクも確認すれば良かったかもしれない。
…それにしても96%って……ほぼ攻略してるようなもんじゃないか。
「なら君も自室に帰ってもらおうか。部屋がないとは言わせないぞ。俺は今日はもう寝るんだ。」
「えー!?報告聞いてかないの?あんなに欲しがってた情報なのに?ワタシちょー頑張ったのに?」
「明日でいい。なんか、、睡魔がすごくて。」
緊張が解けたせいかレイクが出ていってからずっと、フラフラして強烈な睡魔が襲う。昨夜はしっかり寝たはずなのに。
「やっぱり?だってあそこに暗殺者がいるもんね。」
「え?」
アルレアが手を動かしたと思ったら、ボッという音と共に悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたのよ。普段そんなヘマしないでしょ?」
「……えっと、ハハ。…別のことに気とられててな。」
「……?」
普段って…俺そんなに命狙われる存在なのか?さっきの明るい表情から一転、アルレアは訝しげな表情をする。
この96%の好感度を持つこいつが1番厄介かもしれない。
90
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。


ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です


普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる