上 下
5 / 49

5話

しおりを挟む
「さーて、聞きたいことが山ほどあるから質問に答えてもらおうか。」
〈…ウッ〉

元の身体が早起きに慣れているせいか知らないが、気持ちのいいくらい早くに目が覚めたことをいいことに、チエを呼び出した。

「俺の妹が本来ここに連れてこられる筈だったんだろ?その理由を聞いてもいいか?」
〈簡単なことです。春奈様が新作転生キャンペーンに応募されていらっしゃいましたから実行しようとしたまでです。しかしそれも手違いがあったようですが。〉
「……転生キャンペーン?なんだそれは!軽く言ってるが物騒すぎじゃないか?」

妹はそんな変なものに易々と応募していたのかと先の心配がせり上がってくる。

〈あくまでして登場人物に貼り付けるだけなので現実でご本人様は無事です。その上これは実験のようなものなので参加者には豪華な特典をご用意しています。〉

あいつ…豪華特典に釣られたな……この前だって限定盤を手に入れることができなくて泣いてたしな。

「意識をコピー?」
〈簡単に言えば分裂状態ということでしょうか。裕也様も現実で通常通り生きていらっしゃいますし、この世界でも生きていらっしゃいます。〉
「元の世界に戻れないってそういうことだったのか……。」

身体ごと転生したのではなく、あくまで俺はコピーなので偽物…ということだろう。非現実的なことが起こりすぎているせいでそれも案外すんなり受け入れた。

〈我々はよりリアルな人間関係を乙女ゲームに混ぜていく方針なので実験データが常に必要なのです。〉
「じゃあ、その実験とやらが終わったらこの世界はどうなるんだ?消されるのか?」
〈詳細は省きますが、世界が消されるようなことは絶対にないと保証します。……それにしても貴方は悪運の持ち主ですね。よりによって悪役に転生してしまうなんて。〉
「故意じゃないのかこれ!?」
〈完全にランダム制です。〉

その辺のモブにでもなっていれれば、今頃楽しいファンタジーライフを送るはずだったのに……!普段運は良い方なのだが大事な時に限って神が嘲笑うかのように悪運を発揮したらしい。

「……とにかく俺の帰る家はここになっちまったわけだ。そしてこの先の命も危ないと。」
〈そつなりますね^_^〉
「他にチエができるサポートはないのか?一応この世界ゲームなんだろ?」
〈ゲームの範囲内のサポートならできますよ。例えば図鑑とか。ご覧になられます?〉
「ああ、頼む。」




ーーーーーーーーーーーー


『ユース・クロレビア』
クロレビア家当主

莫大な力を持つ大公爵の分家にあたるが、大公に対してかなりの発言権を持っている。

今は亡き父母が養子として連れてきた、血の繋がっていない聖女のことをひどく嫌っている。




『ティア・クロレビア』
ユースの義理の妹でありこの国の聖女

ーー詳細不明
まだ出会っておりません。




『ハンス・ヴェデト』
完璧主義の執事


ーー不明


ーー不明


ーー不明


ユースは高頻度でご奉仕させてる。顔が好み。





『レイク』
元宮廷庭師&???


ーー詳細不明
まだ出会っておりません。


ユースの気にいる庭園を創り上げる天才。




『アルレア・コンゼット』
???

ーー詳細不明
まだ出会っておりません。





『トーア・セヴィレス』
???

ーー詳細不明
まだ出会っておりません。



ーーーーーーーー


「全然分からないが。」
〈当然でしょう。ノベルゲームにネタバレは厳禁ですよ。〉
「それもそうか。名前がわかるだけでもありがたいしな。」

あまり期待はしていなかったので落胆はそこまで大きくはなかった。図鑑を埋めるにもとりあえず「俺が」出会わなければいけないらしい。

この身体の持ち主、ユースについて書かれているのは大きかった。ヒロインとはまさかの血が繋がっておらず、義理の兄妹だということと、公爵家の分家というめちゃくちゃ大きい位置にもいるということ。

ヒロインが聖女という主人公補正の設定がついているので、悪役であるユースにも何か設定が盛り込まれているかと思っていたが、「妹が嫌い。」という少し考えれば分かることくらいしか書かれていなかった。それに比べてハンスは……と思うといかに引き立て役らしい作り込みだ。

「あとこの『ユースは高頻度でご奉仕させてる。顔が好み。』ってなんだよ。あくまでユースのことだろ?俺じゃない。訂正なりなんなりしてくれないのか?」
〈今までの行動も含めて記録として残りますので難しいです。〉
「まあ…期待はしてなかったけど。」

実感はないが居場所がここしかない今、平穏な暮らしを望むなら攻略キャラの好感度をそれなりに上げる必要があるらしい。

図鑑とも呼べない情報量を眺めつつ、庭師と書かれた「レイク」に目が止まった。正直情報がなさすぎて他の2人にバッタリ会える気がしない。

宮廷庭師………何か訳があるのだろうか。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結!】すきおし↪だぶる↩とりっぷ

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:26

二度目の人生ゆったりと⁇

BL / 連載中 24h.ポイント:376pt お気に入り:3,621

悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

BL / 連載中 24h.ポイント:965pt お気に入り:2,550

影の薄い悪役に転生してしまった僕と大食らい竜公爵様

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:106

死んだ娼婦が愛した男は。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:7

ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

BL / 連載中 24h.ポイント:1,754pt お気に入り:436

乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:290

処理中です...