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番外編ストーリー要素強めなR-18
39 5人で掴む真のエピローグ
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「ァっーー!ユン王子ーー!!お待ちくだサイ!!!!」
「いやだもんねー!ポチママを呼びに行くの!」
宰相の養子となった彼は一通り座学や作法を学び終わった後、お義父様から新たな王子の世話役を任されていた。
「ままー!準備できた?」
「!?……ノックはしなさいと何回………こほん、準備は完璧ですよ。」
「よし!お母様の所へレッツゴー!」
「!あっ、急に引っ張らないでください!」
王子の後ろを追いかけるように走る知った顔が2人と疲弊しきった顔の騎士が数名。もうこれは城では見慣れた光景になってしまった。
「お母様ー!」
「ユン、ご苦労様。…でもここで走ったらいけませんよ。転けてしまっては危ないですからね。それに付き人も疲れてしまっていますよ。」
「うう、でも、早くお父様をお祝いしたくて。」
「……それもそうですね。」
「あー!クリス様!!流されてはいけません!」
自分の子供に弱いクリスを正気に戻そうとするポチも名物になりつつある。実は彼もユンにかなりでろでろなのだが、ツッコんだら面倒になりそうなので、ヤンは遠い目をしながらその光景を眺めていた。
「お母様!ポチママ!準備はできた?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
「はい、一応は。…………それにしてもこの性格は一体全く誰に似たのでしょうか。」
「やんちゃさハ、ポチとかいう人に似たんじゃないんデスカ?」
「は!?」
ここで一喧嘩始まりそうなのをクリスが間に入って止めると、みんなでお父様………いやレオのところへ向かった。今日は全員フリーなので気分は上々である。
「お父様ーー!おめでとうございます!」
「ユン!それにみんなまで?」
「レオ……貴方の誕生日ですよ。お忘れですか?」
「?……っあ、ああ!ありがとう、もちろん覚えてるよ。嬉しいなあ!!!」
きっと多忙で生誕の記憶など吹っ飛んでいたであろう彼はクリスのそっと耳うちした言葉に合点がいったようだった。
「私からはこれを。」
「!これまた立派なお酒だな。」
「とっても美味しいと聞いたので私とポチさんで選びました。王様。」
「……その呼び方はやめてくれって……」
「ふふっ。」
レオはまさかの歴代最年少でこの国の頂点となった。人望や優秀さから現に隠居されたお義父様に認められたのだろう。しかし自己肯定感の低い彼は「父上ニート気質あるな…」とぼやいていたが、どういう意味までかは分からなかった。間違いないのは自分の凄さは一切褒めていない言葉という点だ。
トップとなってからも接し方は変わらず、さらに民や部下からは好感度は上がっているようで安泰そうである。もちろん私たちには今まで以上に優しく接してくださり不満などあるはずがない。
「……お父様、今日はお休みですか?僕寂しいです!」
「こら、困らせてはいけませんよ。」
「………はは、ごめんねいつも一緒に居てあげられなくて。今日くらいはここで切り上げてしまおう。」
「本当ですか!!!」
レオの言葉に従者たちは「やっとか、、」と安心したような口ぶりを見せ、ユンはというとそれはそれは一瞬で顔を綻ばせた。
「何かしたいことがあるかい?」
「!……お父様の誕生日なのに、僕がお願い事してもいいの?」
「ユンの幸せが僕の喜びだよ。」
本人はそこまで理解していないだろうが、まるで神からの贈り物である愛しむような微笑みに、一同は釘付けになった。元々容姿の優れている方だったが、息子が出来てから雰囲気がまた大きく変わったのである。
「僕、僕!お母様から教えてもらった下町に行ってみたいです!」
「………クリス?何を教えているんだい?」
「………、いや、それはその、、美味しかったもので…」
みんなでジャンクフードを食べに行ったあれを美化してしまったのだろう、ユンは期待をした眼差しをレオに向けていた。
「………やっぱりだめ、ですか?」
「ぐっ、、いや問題ない。」
「「「…王様!?!?」」」
同時に声を上げたあと疲れ切った護衛からは魂が抜けたかのように真顔になった。一体何をしでかしているのかとレオは思案するが、心当たりがありすぎてどれを咎めたらいいのか分からない。
「君たちは今日は休む方がいいだろう。また明日から頼む。」
「!いえ、それはなりません!!」
「変装もするし、まあ大丈夫だよ。……ねえ、クリス、ポチ、ヤン。」
「ええ。」「はい。」「そうデス!!」
多大な魔法を操る、国唯一の魔法師クリス、殺意の読み取りや気配を消すのに長けた元最強の暗殺者、現在は英雄であるポチ、レオと同じく2人よりも強い上、元第6王子である魔族のヤン。一体これらを誰が打破するというのか。
「ユン、さっそく着替えようか。」
「わーい!楽しみですーー!」
スキップするかのように飛び跳ねるユンをポチとクリスが手を繋ぎ歩き始める。その横をヤンとレオが並べば上位権力者たちの行進の完成だ。後にこの時の5人の後ろ姿は『最も愛された王様と溺愛された者たち』と深く名を残し、レオナルド王のドキュメンタリーは物語としても皆から愛されることになる。
しかし当の本人は「ヤンは別に溺愛してないよね?」「イヤッ!そんな酷いデスーーー!」というやりとりをしているのを今の君たちは知らないだろうから伝えておこうと思う。
「いやだもんねー!ポチママを呼びに行くの!」
宰相の養子となった彼は一通り座学や作法を学び終わった後、お義父様から新たな王子の世話役を任されていた。
「ままー!準備できた?」
「!?……ノックはしなさいと何回………こほん、準備は完璧ですよ。」
「よし!お母様の所へレッツゴー!」
「!あっ、急に引っ張らないでください!」
王子の後ろを追いかけるように走る知った顔が2人と疲弊しきった顔の騎士が数名。もうこれは城では見慣れた光景になってしまった。
「お母様ー!」
「ユン、ご苦労様。…でもここで走ったらいけませんよ。転けてしまっては危ないですからね。それに付き人も疲れてしまっていますよ。」
「うう、でも、早くお父様をお祝いしたくて。」
「……それもそうですね。」
「あー!クリス様!!流されてはいけません!」
自分の子供に弱いクリスを正気に戻そうとするポチも名物になりつつある。実は彼もユンにかなりでろでろなのだが、ツッコんだら面倒になりそうなので、ヤンは遠い目をしながらその光景を眺めていた。
「お母様!ポチママ!準備はできた?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
「はい、一応は。…………それにしてもこの性格は一体全く誰に似たのでしょうか。」
「やんちゃさハ、ポチとかいう人に似たんじゃないんデスカ?」
「は!?」
ここで一喧嘩始まりそうなのをクリスが間に入って止めると、みんなでお父様………いやレオのところへ向かった。今日は全員フリーなので気分は上々である。
「お父様ーー!おめでとうございます!」
「ユン!それにみんなまで?」
「レオ……貴方の誕生日ですよ。お忘れですか?」
「?……っあ、ああ!ありがとう、もちろん覚えてるよ。嬉しいなあ!!!」
きっと多忙で生誕の記憶など吹っ飛んでいたであろう彼はクリスのそっと耳うちした言葉に合点がいったようだった。
「私からはこれを。」
「!これまた立派なお酒だな。」
「とっても美味しいと聞いたので私とポチさんで選びました。王様。」
「……その呼び方はやめてくれって……」
「ふふっ。」
レオはまさかの歴代最年少でこの国の頂点となった。人望や優秀さから現に隠居されたお義父様に認められたのだろう。しかし自己肯定感の低い彼は「父上ニート気質あるな…」とぼやいていたが、どういう意味までかは分からなかった。間違いないのは自分の凄さは一切褒めていない言葉という点だ。
トップとなってからも接し方は変わらず、さらに民や部下からは好感度は上がっているようで安泰そうである。もちろん私たちには今まで以上に優しく接してくださり不満などあるはずがない。
「……お父様、今日はお休みですか?僕寂しいです!」
「こら、困らせてはいけませんよ。」
「………はは、ごめんねいつも一緒に居てあげられなくて。今日くらいはここで切り上げてしまおう。」
「本当ですか!!!」
レオの言葉に従者たちは「やっとか、、」と安心したような口ぶりを見せ、ユンはというとそれはそれは一瞬で顔を綻ばせた。
「何かしたいことがあるかい?」
「!……お父様の誕生日なのに、僕がお願い事してもいいの?」
「ユンの幸せが僕の喜びだよ。」
本人はそこまで理解していないだろうが、まるで神からの贈り物である愛しむような微笑みに、一同は釘付けになった。元々容姿の優れている方だったが、息子が出来てから雰囲気がまた大きく変わったのである。
「僕、僕!お母様から教えてもらった下町に行ってみたいです!」
「………クリス?何を教えているんだい?」
「………、いや、それはその、、美味しかったもので…」
みんなでジャンクフードを食べに行ったあれを美化してしまったのだろう、ユンは期待をした眼差しをレオに向けていた。
「………やっぱりだめ、ですか?」
「ぐっ、、いや問題ない。」
「「「…王様!?!?」」」
同時に声を上げたあと疲れ切った護衛からは魂が抜けたかのように真顔になった。一体何をしでかしているのかとレオは思案するが、心当たりがありすぎてどれを咎めたらいいのか分からない。
「君たちは今日は休む方がいいだろう。また明日から頼む。」
「!いえ、それはなりません!!」
「変装もするし、まあ大丈夫だよ。……ねえ、クリス、ポチ、ヤン。」
「ええ。」「はい。」「そうデス!!」
多大な魔法を操る、国唯一の魔法師クリス、殺意の読み取りや気配を消すのに長けた元最強の暗殺者、現在は英雄であるポチ、レオと同じく2人よりも強い上、元第6王子である魔族のヤン。一体これらを誰が打破するというのか。
「ユン、さっそく着替えようか。」
「わーい!楽しみですーー!」
スキップするかのように飛び跳ねるユンをポチとクリスが手を繋ぎ歩き始める。その横をヤンとレオが並べば上位権力者たちの行進の完成だ。後にこの時の5人の後ろ姿は『最も愛された王様と溺愛された者たち』と深く名を残し、レオナルド王のドキュメンタリーは物語としても皆から愛されることになる。
しかし当の本人は「ヤンは別に溺愛してないよね?」「イヤッ!そんな酷いデスーーー!」というやりとりをしているのを今の君たちは知らないだろうから伝えておこうと思う。
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