上 下
78 / 117
番外編ストーリー要素強めなR-18

12 本能だとは分かってるよ?分かってるけど………

しおりを挟む
あの後僕は一睡もできず朝が来てしまった。クリスが犯人だというのか、、?動機は?もし犯人じゃないとしてもどうして知らないふりをしたのだろう。わかりやすい所に落ちていたので気が付かないはずがない……。

「…巣作りでもしている、とか?」

発情期前のオメガの習性をと考えたら合点はいく。しかし彼から一切誘うようなフェロモンが漏れてはいない上、何故黙って物を持っていってしまうのか。

現行犯逮捕をして問い詰めたい所だ。クリスが楽になるならいくらでもあげる所存だが、僕の知らない間に取られては実際困るので一言欲しいものだ。









朝食を一緒にホールで食べている間、作戦を実行することにした。

「クリス。」
「はい、何でしょうか?」
「今日は用事で外出しなくてはいけなくてね。夜には帰ってくるよ。」
「…!そうなんですか。どうかお気をつけてください。」

祖父にあたる人物に挨拶に行くので、出かけるのは事実だが帰ってくるのは昼頃だと見込んでいる。最近は僕の部屋から物がなくなることが多いのでそこで待ち伏せし、その場で問いただそうという魂胆だ。








「ふう。」

祖母は穏やかで好ましいが、祖父はいつまで経っても厳しくて息を吸うのも楽じゃなかった。

さて今は城まで戻ってきており、従者たちも下がらせてるので使い捨ての転移用魔道具を使う。これは元々特定の場所にしか移動できないが、事前に座標を設置していたので簡単に自室に戻ってくることができた。

中は特に誰もおらず、まず一息つく。

僕が帰ってくる前までクリスは色んな人間に引っ張りだこなもので、回収し終わってる可能性はないとは言い切れないが大きいこともない。

待つこと数十分。

知ってる気配が入ってきたので、さらに奥の部屋で待機する。あくまで偶然を装うつもりだ。

カツカツと靴を鳴らしながらとあるところで止まる。それをしっかり耳で聞いてから10秒くらい待つ。

次に扉を開け………

「………クリス、何してるの?」
「!!!」

そこには僕の下着を漁る妻の姿があった。

「い、いつお帰りになられたのですか?」
「魔道具使ったら予定より早く着いちゃってね。」
「………。」

気まずそうに彼は目線を逸らすので、僕はしゃがんで視線を合わせ「理由を教えてくれる?」と請えば、彼はおずおず「すみませんでした。色々困ってらっしゃるのは存じてたのですが…。」と始めに入れてから語り出した。



最初は無意識だったのです。執務室で机の上に転がっていた殿下が愛用していた羽ペンを気がついたら私の部屋まで持ってきてしまって。……謝って返そうと思ったのに、また別の日はペンを手に取ったまま違うものを持ってきてしまい……そのままお話しする勇気もなくダラダラと…………

「でもないと落ち着かないのです、返したくもありません……本当に己が悪人とは理解してます。私どうしてしまったのでしょうか……」

項垂れるクリスをそっと抱きしめる。聞いてる限りは巣作りで間違いないだろう。ただ本人が自覚してないのが驚きだが。

「巣作りなんだろう。ほら、下着は恥ずかしいから困るけどそれ以外ならいくらでも持っていってくれていいよ。」

パッ!と目を輝かせたかと思ったら、

「最初はそうだと思ってたのですけど、発情期に入る気配がなくて、、、」

また顔を下げてしまった。それで余計に言いづらかったとも付け足して。

この世界のオメガバースの発情期は番成立してから発情期が来るという設定になっている。学園モノBLからしたら発情期が第二性発現と共に出たら色々都合が悪かったのだろう。

「うーん、一応医者に見てもらおうか。……それとはい。」

正装とのこともあり重ね着していたので、それをカッターシャツのようなもの以外脱ぎ全て渡す。正装は使い捨てなのでシワシワになっても特に問題ないだろう。

「いいんですか!?」

まるで宝物かのように抱きしめ顔をうずめている彼に「本人ここにいるのに衣類の方がいいのか」と苦笑いをした。

「とにかく何も言わずに取るのはなし。欲しいものはあげるから遠慮なく言ってね。」
「………なら、どうしてもあれが欲しいです!!」

ビシッと指さしたのはやはり僕の下着で。さっきから釘付けになっていたのは気がついていた。結局僕が折れてしぶしぶ渡せばそれはもう嬉しそうに抱えて、さっそくクリスは己の部屋へ向かっていった。……正直複雑だ。




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...