75 / 117
番外編ストーリー要素強めなR-18
9 あれ、もしかして僕は空気?
しおりを挟む
茶色やクリーム色に髪と瞳の色を全員変えて、こっそり部屋を抜け出した。明日の朝にならないと誰も入ってこないよう言いつけてあるので帰れば全く問題ない。
クリスにはこの日を狙ってか行きたい場所があるらしく、計画を楽しそうに語っていた。
「食べ歩きをやってみたいのです!!!」
「え?」
「じゃあ何食べる?」
「えっ、?クリス様?殿下?」
王子とその王子妃がまさかの下品と相当するようなことをしようとしていて一般常識人のポチはありえないものを見るかのように震えていた。
まあ僕は前世があるし抵抗はない。ただこの場ではクリスの好奇心がすごいだけだ。
「……あの黒いのはなんですか?」
「ん?あー、あれは焼き鳥かもね。」
「「ヤキトリ?」」
ジャンクフードを思い出し無性に食べたくなる。この世界はなんと呼ばれているのか知らないが、今後見ることもないだろうし名前なんて適当でいい。
いつもシェフたちが作ってくれるものはヘルシーで見目を重視しましたと言わんばかりの料理だから中々こういうものにありつけなかった。
もう何十年ぶりだろう。これを食べたらしばらく恋しくなってしまいそうだ。
「買ってきました。これで良いんですか?」
いつの間にか並んでいた彼は3本手に持っている。元々庶民の生活をしていた彼も食べるのは初めてのようで、緊張しているようだった。
「毒味しましょうか。」
「いや、いらない。耐性がついたからね。」
「私も大丈夫です。そこらじゃやられません。」
と言い2人で豪快にかぶりついた。
うっま!!!!!
塩辛いタレが肉をひきたてていて、舌を刺激する感覚に感動する。オフクロの味とかではないが前世の世界を思い出すような涙の一品だ。
クリスも口元を抑えながら「美味しい!」と目を輝かせており、なんですかこの黒いのは!と僕に問い詰めてくる。知ってるだけで別に専門家じゃないので曖昧に笑っておいた。
「ポチも食べなよ。」
「は、はい。」
恐る恐る黒い液体がかかったそれを目をきゅっと瞑りながら僕たちと同じように口に多く含む。
「!!」
「ッハハハ顔が!」
「ふふ、ゆっくり召し上がらないと火傷しますよ?」
面白いくらいにカッと目を見開き、後から食べ始めた彼が1番最初にそれを平らげていた。
髪色は違えど明らか美形なのに、誰も僕達の正体に気が付かない。あの髪色で認識されてるのではないかと思うくらいには。
しかしチラチラと顔を赤くして僕以外の2人を見ていることはわかった。僕だってそれなりにかっこいいはずなのだが何がダメなのだろう。
いろんな屋台を食べていると、元々城を出たのは昼の話だったのでもう日が暮れてきた。
「レオ、ポチ。」
「?」「どうされました?」
ニコニコと笑っている彼は人がいないところまで2人を手招きすると、視界が暗転した。もう慣れたが転移魔法を使ったようだ。
「お二人をここに連れてきたかったんです!」
「おお、」
「綺麗、ですね…。」
目の前には半分夕日で赤くなっており、そして反対側を見れば星が散らばっていた。月のような、だけど明らか違う惑星も見える。草木は光を大きく反射し、半分は黄金に、もう片方は青白く輝いており、なんとも幻想的で感嘆の息を溢してしまう。
「ここ、私が幼少期の頃誤って転移してしまった場所なんです。おかげで素晴らしい絶景を見つけることができたんですけど。」
クリスの言葉に「そんなことがあったんだ!?」と驚く。よく無事で帰れたものだ。
「クリス様がですか?なんだか意外です。」
「私はどちらかというと失敗の方が多いんですよ。」
「でも今、そうは見えません。努力の証ですね。」
「……褒めても何も出ませんからね?」
ポチの何気ない一言にクリスは大層嬉しかったようで、本気で喜んでいた。元々喜び上手というやつだが、本当に嬉しかった時は手をもじもじさせてしまう癖があるのだ。かわいい。
うん。そして今僕はものすごく空気だ。目の前でイチャイチャし始めるので気まずくて頑張って気配を消す。友人と恋人同士の3人でデートしたときの友人ポジの気持ちだ。まあそんなの前世でやったことないし、一応僕夫なんだけども。
「レオ!ポチ!見ていてくださいね!!!」
遠い所に魔法陣を展開し、クリスが手を引くと同時に発動させる。それはたくさんの流れ星のようで、願い事を言えば叶えてしまいそうだ。
「……あの笑顔がずっと続きますように…。」
思わずそう呟いていた。だってあまりにもクリスが無邪気に笑いかけるから。
「クリス様はいい奥様ですね。」
遠くを見るようにポチはつぶやく。
「なんだよ急に。ポチの良さを分かってるやつがいないだけで、君は言い夫になるんじゃないかな。……いや妻側?」
男しかいないこの世界は夫婦の役が曖昧だ。たまにどっちも夫ですと言い、子供を作らない家系もいるくらいには。
「そう、ですかね。」
「そうだよ!僕の世話全部できるくらいにはしっかりしてるもんね。」
冗談で言ったのだけど、あんまり伝わってなかったのか彼はクリスと真逆で曖昧に笑った。
クリスにはこの日を狙ってか行きたい場所があるらしく、計画を楽しそうに語っていた。
「食べ歩きをやってみたいのです!!!」
「え?」
「じゃあ何食べる?」
「えっ、?クリス様?殿下?」
王子とその王子妃がまさかの下品と相当するようなことをしようとしていて一般常識人のポチはありえないものを見るかのように震えていた。
まあ僕は前世があるし抵抗はない。ただこの場ではクリスの好奇心がすごいだけだ。
「……あの黒いのはなんですか?」
「ん?あー、あれは焼き鳥かもね。」
「「ヤキトリ?」」
ジャンクフードを思い出し無性に食べたくなる。この世界はなんと呼ばれているのか知らないが、今後見ることもないだろうし名前なんて適当でいい。
いつもシェフたちが作ってくれるものはヘルシーで見目を重視しましたと言わんばかりの料理だから中々こういうものにありつけなかった。
もう何十年ぶりだろう。これを食べたらしばらく恋しくなってしまいそうだ。
「買ってきました。これで良いんですか?」
いつの間にか並んでいた彼は3本手に持っている。元々庶民の生活をしていた彼も食べるのは初めてのようで、緊張しているようだった。
「毒味しましょうか。」
「いや、いらない。耐性がついたからね。」
「私も大丈夫です。そこらじゃやられません。」
と言い2人で豪快にかぶりついた。
うっま!!!!!
塩辛いタレが肉をひきたてていて、舌を刺激する感覚に感動する。オフクロの味とかではないが前世の世界を思い出すような涙の一品だ。
クリスも口元を抑えながら「美味しい!」と目を輝かせており、なんですかこの黒いのは!と僕に問い詰めてくる。知ってるだけで別に専門家じゃないので曖昧に笑っておいた。
「ポチも食べなよ。」
「は、はい。」
恐る恐る黒い液体がかかったそれを目をきゅっと瞑りながら僕たちと同じように口に多く含む。
「!!」
「ッハハハ顔が!」
「ふふ、ゆっくり召し上がらないと火傷しますよ?」
面白いくらいにカッと目を見開き、後から食べ始めた彼が1番最初にそれを平らげていた。
髪色は違えど明らか美形なのに、誰も僕達の正体に気が付かない。あの髪色で認識されてるのではないかと思うくらいには。
しかしチラチラと顔を赤くして僕以外の2人を見ていることはわかった。僕だってそれなりにかっこいいはずなのだが何がダメなのだろう。
いろんな屋台を食べていると、元々城を出たのは昼の話だったのでもう日が暮れてきた。
「レオ、ポチ。」
「?」「どうされました?」
ニコニコと笑っている彼は人がいないところまで2人を手招きすると、視界が暗転した。もう慣れたが転移魔法を使ったようだ。
「お二人をここに連れてきたかったんです!」
「おお、」
「綺麗、ですね…。」
目の前には半分夕日で赤くなっており、そして反対側を見れば星が散らばっていた。月のような、だけど明らか違う惑星も見える。草木は光を大きく反射し、半分は黄金に、もう片方は青白く輝いており、なんとも幻想的で感嘆の息を溢してしまう。
「ここ、私が幼少期の頃誤って転移してしまった場所なんです。おかげで素晴らしい絶景を見つけることができたんですけど。」
クリスの言葉に「そんなことがあったんだ!?」と驚く。よく無事で帰れたものだ。
「クリス様がですか?なんだか意外です。」
「私はどちらかというと失敗の方が多いんですよ。」
「でも今、そうは見えません。努力の証ですね。」
「……褒めても何も出ませんからね?」
ポチの何気ない一言にクリスは大層嬉しかったようで、本気で喜んでいた。元々喜び上手というやつだが、本当に嬉しかった時は手をもじもじさせてしまう癖があるのだ。かわいい。
うん。そして今僕はものすごく空気だ。目の前でイチャイチャし始めるので気まずくて頑張って気配を消す。友人と恋人同士の3人でデートしたときの友人ポジの気持ちだ。まあそんなの前世でやったことないし、一応僕夫なんだけども。
「レオ!ポチ!見ていてくださいね!!!」
遠い所に魔法陣を展開し、クリスが手を引くと同時に発動させる。それはたくさんの流れ星のようで、願い事を言えば叶えてしまいそうだ。
「……あの笑顔がずっと続きますように…。」
思わずそう呟いていた。だってあまりにもクリスが無邪気に笑いかけるから。
「クリス様はいい奥様ですね。」
遠くを見るようにポチはつぶやく。
「なんだよ急に。ポチの良さを分かってるやつがいないだけで、君は言い夫になるんじゃないかな。……いや妻側?」
男しかいないこの世界は夫婦の役が曖昧だ。たまにどっちも夫ですと言い、子供を作らない家系もいるくらいには。
「そう、ですかね。」
「そうだよ!僕の世話全部できるくらいにはしっかりしてるもんね。」
冗談で言ったのだけど、あんまり伝わってなかったのか彼はクリスと真逆で曖昧に笑った。
23
お気に入りに追加
1,000
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる