59 / 117
本編
58 眠れる教会の王子様
しおりを挟む
「んっ………ぁ、れ」
目が覚めるとそこは教会内だった。気配を感じて隣を見るとクリスが椅子に座りながら上体はベッドに伏せて眠っている。
「クリス、クリス、身体を痛めてしまうよ。」
「ぅ…ん?」
焦点が全く合わないと思っていたら、カッと目を見開き抱きしめてきた。あまりの勢いにちょっとビクついたのは内緒だ。
「殿下、殿下ぁ………ひっ、ぐす」
「ああ泣かないでクリス。ごめんねまさかこうなるとは思ってなかったんだ。倒れるだなんて……。」
ぎゅっと抱きしめ返すとクリスは一瞬で涙なんか引っ込み、首を傾げた。
「………レーナさんですか?」
「え?」
澄んだブルーハワイの青い瞳に見つめられると、なんだか全てを見透かされるみたいで直視できなかった。
「………そうだよ。どうして分かったの?」
「だって泣いていてもレオナルド様は抱きしめたりしないので。」
「そんな酷いことをしてるのかい彼!?」
「あ、いえそういう意味ではなく!もちろん抱きしめてくれることはありますが……」
「カンと言いますか、何かが違うと思ってしまいました。」と言った彼に完敗した。僕が愛したクリスはどうやらあのレオナルドの方が好きらしい。
僕が本物なのに、なんて言えなかった。そんな資格など魔族と契約をした時点でない。ただ彼が生きて幸せになってくれればいいと思っていた過去の己の覚悟を踏み躙るかのような行為だ。人間とはなんと欲深い生き物だろう。
「レオナルド殿下は先程から『暇だ!』と怒ってらっしゃる。ごめんね邪魔しちゃって。」
「くす、殿下らしいです。」
少し笑い合った後「じゃあ僕はしばらく眠るから。」と言って意識を手放した。クリスは何も言ってくれなかった。
やっ~~~~と僕が主導権を握るかのように、指先が動いた。やった!!帰ってきたぞ!!!
最初はこのままレーナが乗っ取ってしまうのかと思ったし(それはそれで許せるけど、あんな何もない空間暇すぎる)それに加えてクリスとレーナが何か話していたので、優しい僕は一応耳を塞いでおかなければならなかった。僕は優しいからな!!
「戻って来れた、!」
「レオナルド殿下!!!」
いつもよりほんのりダルい身体にガバッとクリスが抱きつき、僕はそれを「大袈裟だな」なんて言って頭を撫でる。
「大袈裟なんかじゃありませんよ!一週間も目覚めなかったのに…」
「?……一週間?」
体感1日ですが、何か?
「本当は今すぐ人に知らせなければならないところですが……しばらくこのままでいてもいいですか?」
そんな可愛いおねだり、むしろ僕がご褒美っていうか、へへ。断れるはずもなく抱きしめ返してやった。しかしその身体のあまりにも細いこと…。
「…クリス?まさかずっとここにいたなんてことはないよね?」
「………。」
あーもしもし、クリスさん?
目が覚めるとそこは教会内だった。気配を感じて隣を見るとクリスが椅子に座りながら上体はベッドに伏せて眠っている。
「クリス、クリス、身体を痛めてしまうよ。」
「ぅ…ん?」
焦点が全く合わないと思っていたら、カッと目を見開き抱きしめてきた。あまりの勢いにちょっとビクついたのは内緒だ。
「殿下、殿下ぁ………ひっ、ぐす」
「ああ泣かないでクリス。ごめんねまさかこうなるとは思ってなかったんだ。倒れるだなんて……。」
ぎゅっと抱きしめ返すとクリスは一瞬で涙なんか引っ込み、首を傾げた。
「………レーナさんですか?」
「え?」
澄んだブルーハワイの青い瞳に見つめられると、なんだか全てを見透かされるみたいで直視できなかった。
「………そうだよ。どうして分かったの?」
「だって泣いていてもレオナルド様は抱きしめたりしないので。」
「そんな酷いことをしてるのかい彼!?」
「あ、いえそういう意味ではなく!もちろん抱きしめてくれることはありますが……」
「カンと言いますか、何かが違うと思ってしまいました。」と言った彼に完敗した。僕が愛したクリスはどうやらあのレオナルドの方が好きらしい。
僕が本物なのに、なんて言えなかった。そんな資格など魔族と契約をした時点でない。ただ彼が生きて幸せになってくれればいいと思っていた過去の己の覚悟を踏み躙るかのような行為だ。人間とはなんと欲深い生き物だろう。
「レオナルド殿下は先程から『暇だ!』と怒ってらっしゃる。ごめんね邪魔しちゃって。」
「くす、殿下らしいです。」
少し笑い合った後「じゃあ僕はしばらく眠るから。」と言って意識を手放した。クリスは何も言ってくれなかった。
やっ~~~~と僕が主導権を握るかのように、指先が動いた。やった!!帰ってきたぞ!!!
最初はこのままレーナが乗っ取ってしまうのかと思ったし(それはそれで許せるけど、あんな何もない空間暇すぎる)それに加えてクリスとレーナが何か話していたので、優しい僕は一応耳を塞いでおかなければならなかった。僕は優しいからな!!
「戻って来れた、!」
「レオナルド殿下!!!」
いつもよりほんのりダルい身体にガバッとクリスが抱きつき、僕はそれを「大袈裟だな」なんて言って頭を撫でる。
「大袈裟なんかじゃありませんよ!一週間も目覚めなかったのに…」
「?……一週間?」
体感1日ですが、何か?
「本当は今すぐ人に知らせなければならないところですが……しばらくこのままでいてもいいですか?」
そんな可愛いおねだり、むしろ僕がご褒美っていうか、へへ。断れるはずもなく抱きしめ返してやった。しかしその身体のあまりにも細いこと…。
「…クリス?まさかずっとここにいたなんてことはないよね?」
「………。」
あーもしもし、クリスさん?
23
お気に入りに追加
1,010
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる