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本編
57【クリス・イグリエ視点】ああ、
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「クリス様!」
殿下がエユによって倒れたと聞いたのは、私が殿下にお願いして席を外し、腕が鈍らないようにと鍛錬していた時だった。
どうやって向かったかは記憶にないが、教会に駆けつけるとそこには生気のないレオナルド殿下が横たわっていた。
話を聞くとエユにより毒性のある液体をかけられ、血を吐いて気絶してしまったのことだった。悔しかった。だって私は婚約者でありながら殿下のために鍛え上げ、彼の忠実な騎士となったのに、何もできていないのだと。
そう思えば私は殿下に守られてばかりだと振り返る。
魔族だから死にはしないと信じたいが、真っ青な血色で眠る彼を見るとやはり死んでしまうのではないかと気が気でなかった。
歯がガチガチのならし手は震え、周りの護衛は「見てられません。貴方様も休んでください。」と言われる始末だ。
きっと大丈夫、そう信じたいけど………
聞いていた話と違った。
彼の中にいるというレーナさんは『相手を好きになってしまう薬が学園内に出回っている。僕がそれを受けて、しばらくエユさんと仲良くしてしまうけど、クリスのことが大好きなレオナルドは生きてるから。我慢してくれる?』と仰っていたそうだ。それは殿下の口から聞いた。
「そもそも受けなければいいのでは?」と尋ねると
殿下は曖昧に笑った。何か事情があると察してこれ以上は追求しなかった。聞けばきっと答えてくれるだろうが、そこまで彼の何かある崇高な考えを図々しくも邪魔にしたくない気持ちが強かった。
つまり、私が殿下とエユさんが仲良くしているのを嫉妬したりしなければいいんですね。
理解してからは早かった。もし殿下が薬を受けたとしても、本人の意思をレーナさんが守ってくれるそうなので安心したい。
でも出来たらそんな状況が嫌で私が気をつけようとも思った。
なのに………
「どうして毒物だって伏せてたんですか、殿下……」
ポロポロと涙が出る。人生で初めてのことだ。物語で読んだことはあったが自分でもこんなことになれるなんて。殿下がどんな方と親しくなろうとも、私に見せてない一面がいくつあっても構わない。生きていさえすれば………
すー、っ、ぁ、すー
生命を感じる呼吸が早まったりと安定せず不安で仕方がない。
司祭に聞けば「体内の毒と闘っている。」とのことだ。
王子が亡くなれば司祭だって命はないだろう。治療魔法を施したあとは席を離れて神に祈りを捧げている。
「殿下、私は貴方のすべてです。早く目を……」
ほんのり冷たい手を握ったまま襲う睡魔に抗いきれず意識が途絶えた。
殿下がエユによって倒れたと聞いたのは、私が殿下にお願いして席を外し、腕が鈍らないようにと鍛錬していた時だった。
どうやって向かったかは記憶にないが、教会に駆けつけるとそこには生気のないレオナルド殿下が横たわっていた。
話を聞くとエユにより毒性のある液体をかけられ、血を吐いて気絶してしまったのことだった。悔しかった。だって私は婚約者でありながら殿下のために鍛え上げ、彼の忠実な騎士となったのに、何もできていないのだと。
そう思えば私は殿下に守られてばかりだと振り返る。
魔族だから死にはしないと信じたいが、真っ青な血色で眠る彼を見るとやはり死んでしまうのではないかと気が気でなかった。
歯がガチガチのならし手は震え、周りの護衛は「見てられません。貴方様も休んでください。」と言われる始末だ。
きっと大丈夫、そう信じたいけど………
聞いていた話と違った。
彼の中にいるというレーナさんは『相手を好きになってしまう薬が学園内に出回っている。僕がそれを受けて、しばらくエユさんと仲良くしてしまうけど、クリスのことが大好きなレオナルドは生きてるから。我慢してくれる?』と仰っていたそうだ。それは殿下の口から聞いた。
「そもそも受けなければいいのでは?」と尋ねると
殿下は曖昧に笑った。何か事情があると察してこれ以上は追求しなかった。聞けばきっと答えてくれるだろうが、そこまで彼の何かある崇高な考えを図々しくも邪魔にしたくない気持ちが強かった。
つまり、私が殿下とエユさんが仲良くしているのを嫉妬したりしなければいいんですね。
理解してからは早かった。もし殿下が薬を受けたとしても、本人の意思をレーナさんが守ってくれるそうなので安心したい。
でも出来たらそんな状況が嫌で私が気をつけようとも思った。
なのに………
「どうして毒物だって伏せてたんですか、殿下……」
ポロポロと涙が出る。人生で初めてのことだ。物語で読んだことはあったが自分でもこんなことになれるなんて。殿下がどんな方と親しくなろうとも、私に見せてない一面がいくつあっても構わない。生きていさえすれば………
すー、っ、ぁ、すー
生命を感じる呼吸が早まったりと安定せず不安で仕方がない。
司祭に聞けば「体内の毒と闘っている。」とのことだ。
王子が亡くなれば司祭だって命はないだろう。治療魔法を施したあとは席を離れて神に祈りを捧げている。
「殿下、私は貴方のすべてです。早く目を……」
ほんのり冷たい手を握ったまま襲う睡魔に抗いきれず意識が途絶えた。
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