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本編

56 作戦に穴がありすぎる

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「うわっ!?」

レーナの宣言通り偶然1人になって、偶然ヒロインと鉢合わせて、惚れ薬をかけられそうになった。ゲームの強制力ってやつか?怖い。

瞬時に察したレーナが身体を乗っ取ったのか、僕は今白い空間にいる。作戦は功をなし見事僕は洗脳されていない。というかレーナってこんなところにいたのか。

映画のスクリーンみたいなものから今の状況を確認すると同時に「ヒィッ」と変な声が出た。

だってあのエユの凶悪な顔を見ろ。こんなの純粋なヒロインがする表情じゃない。完全に極悪人の顔だった。

さて、今薬のかかったレーナはヒロインに夢中かもしれない。早く僕が出て冷静に対処しなくては………………はて、どうやって入れ替わるんだ?

「もしもしレーナ、僕代わり方わからないからそっちで代わってくれない?おーい!………レーナ?」
『……ああ、待ってね。さっきから何かに引っかかって意識がうまく……』

そうもたついてる間にエユがレオナルドの腕を痛いくらいに強く掴んでヒステリックな形相でこう叫んだ。

「よくも!!目の前で悪役とイチャついて恥をかかせたな!!ボクがヒロインなのにこんなのゲームと全然違うじゃん!ボクのレオなのに!!!!………ああ、でもこれで。」

突然静かになったかと思えば追い討ちでさらに惚れ薬をぶっかけてきた。

とんでも人間すぎるぞこいつ……惚れ薬なんかで思い通りに出来たとしても本当の愛がないなら僕はそんな醜いこと出来やしないね。それにこれって、2瓶も使っていいものなのか?

っておい!!!レーナがヒロイン抱きしめてるぞ!!!!何してんだよ?なんとか僕が主導権を握ろうとするがどうにもならない。恐ろしい状況に全身から鳥肌が立つ。

「レーナ!!返事をしてくれ!!!何してんだよ!!!」
『………』

ありえない行動を起こしている彼に返答があるはずもなく、僕は完全に焦っていた。今は2人っきりだから大丈夫なものの誰かが来たらまずい、誤解されたらトントン拍子でレオナルドルートに、と前世の記憶が蘇る。

それにエユなんかの思い通りになるなんて………

「ふふ、これでボクのものですね?ふふふ」

気持ち悪いくらいにくしゃりとした不敵な笑みを浮かべる。あー、洗脳されてない僕の意思はどうなるんでしょうか。意識がハッキリしてる方が辛いかもしれない。誰か!僕を気絶させてくれ!

その時だった!

「何してるんですか殿下?!」

聞き慣れた声と共に慌てて駆けつけてきたのはポチだった。さっそく浮気現場を発見されたのだが「クリス様のことが大好きな殿下が血迷うはずがない」とヒロインから僕の身体を引き剥がし、エユを睨みつける。

流石ポチ!!と白い空間から褒め称えた。持つべきものは自分をよく理解してくれる人間である。

「……殿下?」

ぐったりと力の入らないレオナルド身体にポチは怪訝な顔をする。どうやら彼は抱きしめているのではなく、惚れ薬を2回も被り口から血を流して気絶しているるようだった。

「あれ?何の騒ぎですカ~?レオナルドサ、マ………エ?」
「出てこい!早くこの者を捕らえよ!!!」
「!?きゃぁぁ!何するの!離して!」

場違いに登場したヤンなんか空気の扱いで、ポチは大きな声を出すと連れていた従者が現れエユの腕を掴んだ。

「触るないで!!ボクは未来の聖女になるんだぞ!!!」

と大きな声で喚きながら消えていった。僕はというと意識はハッキリしているが、レーナの意識がないせいで教会に運ばれて行ってしまった。

あの、ついでに僕も心の中で気絶してていいですか。
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