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本編
46 そういうことはもっと早くに言えー!
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ザワッと周りが騒がしくなる。何故VIP席にいないのかと上で僕の姿を探す者だっていた。
宰相の眼鏡は半分ズリ落ちて「予定と違う!」と苦労してきたであろう額のシワから責められる。
ごめん…でもポチが品位を失うよりマシかなって。
剣をつき、跪いているポチに近づいて「いつも通りで良いんだよ。こいつらなんかゴミも同然だ。」なんてジョークをこっそり耳打ちしてやる。
真面目な彼は何度もゴミと繰り返した。
……緊張を取るために言ったんだけど流石に伝わってるよな………?
不満気な宰相を退場させ、少し本調子に戻った様子のポチを確認してから、僕は予め用意された言葉をつらつらと語りだす。そうこうしているうちにあっという間に式が終わった。
「おめでとうございます、ポっ、失礼、アルバート様。」
「おめでとうデス!」
流石にポチのままなんていかず、彼はアルバート・ポゼルと名を改めた。名前にちょっとだけポチの名残があるのがこそばゆい。
「は、はは。ありがとうございます。それとここらだけの時はポチと呼んでください。」
「えっ、いいんですか?」
どうやらアルバート…じゃなくてポチはその名に慣れないらしく照れくさそうにしている。でも僕達だってポチ呼びで慣れているので正直助かる話だ。
辺境の伯爵の地位を受け継いだのだから、もう僕の護衛なんて言ってられないくらい忙しくなるだろう。そしてもう会うことだってなかなかないのかもしれない。
「ポチ、遠くに行っても頑張ってね。」
「寂しくなりますね…たまに遊びに行ってもいいですか?」
「お!それいいな。」
退屈そうなヤンを省いてみんなしんみりした空気になった。しかし何故かポチだけは不思議そうな表情をしている。
「?私王城を離れず、ずっとここにいますよ?」
「「え!?」」
「……何言ってるんだポチ。領土はどうするんだよ。無法地帯にする気か?」
僕の問にポチは納得が言ったような表情をしてから一通の紙を取り出し、見せてくれた。
「伯爵の地位は私ですけど、領土を治めるのは弟です。」
へ?
その言葉に全員が目を見開いた。弟いたの!?てか弟さんが治めちゃうの?
「恥ずかしながら私、勉学に身を置いていなかったので爵位をどうするか悩んでいたんです。その時、座学に励んでいた弟から連絡が入りまして『領土を治めたい』と。もちろん王様からは許可を得ています。」
え、そんなことありなの?とクリスと顔を見合わせたが、彼も同じことを思っていたようで肩をひそめた。
「あっ……てことは…」
「…クリス?」
「ポチさん!つまり殿下と…………」
ゴニョゴニョ
ポチにしか聞こえない声で囁くと満足したかのようにクリスは微笑んだ。当の本人は突然熱でもあるのかというくらい顔を真っ赤にさせて震えている。
殿下が何?おーいクリスー?無いとは思うけどポチを怒らせてない?大丈夫だよね?
宰相の眼鏡は半分ズリ落ちて「予定と違う!」と苦労してきたであろう額のシワから責められる。
ごめん…でもポチが品位を失うよりマシかなって。
剣をつき、跪いているポチに近づいて「いつも通りで良いんだよ。こいつらなんかゴミも同然だ。」なんてジョークをこっそり耳打ちしてやる。
真面目な彼は何度もゴミと繰り返した。
……緊張を取るために言ったんだけど流石に伝わってるよな………?
不満気な宰相を退場させ、少し本調子に戻った様子のポチを確認してから、僕は予め用意された言葉をつらつらと語りだす。そうこうしているうちにあっという間に式が終わった。
「おめでとうございます、ポっ、失礼、アルバート様。」
「おめでとうデス!」
流石にポチのままなんていかず、彼はアルバート・ポゼルと名を改めた。名前にちょっとだけポチの名残があるのがこそばゆい。
「は、はは。ありがとうございます。それとここらだけの時はポチと呼んでください。」
「えっ、いいんですか?」
どうやらアルバート…じゃなくてポチはその名に慣れないらしく照れくさそうにしている。でも僕達だってポチ呼びで慣れているので正直助かる話だ。
辺境の伯爵の地位を受け継いだのだから、もう僕の護衛なんて言ってられないくらい忙しくなるだろう。そしてもう会うことだってなかなかないのかもしれない。
「ポチ、遠くに行っても頑張ってね。」
「寂しくなりますね…たまに遊びに行ってもいいですか?」
「お!それいいな。」
退屈そうなヤンを省いてみんなしんみりした空気になった。しかし何故かポチだけは不思議そうな表情をしている。
「?私王城を離れず、ずっとここにいますよ?」
「「え!?」」
「……何言ってるんだポチ。領土はどうするんだよ。無法地帯にする気か?」
僕の問にポチは納得が言ったような表情をしてから一通の紙を取り出し、見せてくれた。
「伯爵の地位は私ですけど、領土を治めるのは弟です。」
へ?
その言葉に全員が目を見開いた。弟いたの!?てか弟さんが治めちゃうの?
「恥ずかしながら私、勉学に身を置いていなかったので爵位をどうするか悩んでいたんです。その時、座学に励んでいた弟から連絡が入りまして『領土を治めたい』と。もちろん王様からは許可を得ています。」
え、そんなことありなの?とクリスと顔を見合わせたが、彼も同じことを思っていたようで肩をひそめた。
「あっ……てことは…」
「…クリス?」
「ポチさん!つまり殿下と…………」
ゴニョゴニョ
ポチにしか聞こえない声で囁くと満足したかのようにクリスは微笑んだ。当の本人は突然熱でもあるのかというくらい顔を真っ赤にさせて震えている。
殿下が何?おーいクリスー?無いとは思うけどポチを怒らせてない?大丈夫だよね?
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