上 下
47 / 117
本編

46 そういうことはもっと早くに言えー!

しおりを挟む
ザワッと周りが騒がしくなる。何故VIP席にいないのかと上で僕の姿を探す者だっていた。

宰相の眼鏡は半分ズリ落ちて「予定と違う!」と苦労してきたであろう額のシワから責められる。

ごめん…でもポチが品位を失うよりマシかなって。

剣をつき、跪いているポチに近づいて「いつも通りで良いんだよ。こいつらなんかゴミも同然だ。」なんてジョークをこっそり耳打ちしてやる。

真面目な彼は何度もゴミと繰り返した。

……緊張を取るために言ったんだけど流石に伝わってるよな………?

不満気な宰相を退場させ、少し本調子に戻った様子のポチを確認してから、僕は予め用意された言葉をつらつらと語りだす。そうこうしているうちにあっという間に式が終わった。








「おめでとうございます、ポっ、失礼、アルバート様。」
「おめでとうデス!」

流石にポチのままなんていかず、彼はアルバート・ポゼルと名を改めた。名前にちょっとだけポチの名残があるのがこそばゆい。

「は、はは。ありがとうございます。それとここらだけの時はポチと呼んでください。」
「えっ、いいんですか?」

どうやらアルバート…じゃなくてポチはその名に慣れないらしく照れくさそうにしている。でも僕達だってポチ呼びで慣れているので正直助かる話だ。

辺境の伯爵の地位を受け継いだのだから、もう僕の護衛なんて言ってられないくらい忙しくなるだろう。そしてもう会うことだってなかなかないのかもしれない。

「ポチ、遠くに行っても頑張ってね。」
「寂しくなりますね…たまに遊びに行ってもいいですか?」
「お!それいいな。」

退屈そうなヤンを省いてみんなしんみりした空気になった。しかし何故かポチだけは不思議そうな表情をしている。

「?私王城を離れず、ずっとここにいますよ?」
「「え!?」」

「……何言ってるんだポチ。領土はどうするんだよ。無法地帯にする気か?」

僕の問にポチは納得が言ったような表情をしてから一通の紙を取り出し、見せてくれた。

「伯爵の地位は私ですけど、領土を治めるのは弟です。」

へ?

その言葉に全員が目を見開いた。弟いたの!?てか弟さんが治めちゃうの?

「恥ずかしながら私、勉学に身を置いていなかったので爵位をどうするか悩んでいたんです。その時、座学に励んでいた弟から連絡が入りまして『領土を治めたい』と。もちろん王様からは許可を得ています。」

え、そんなことありなの?とクリスと顔を見合わせたが、彼も同じことを思っていたようで肩をひそめた。

「あっ……てことは…」
「…クリス?」
「ポチさん!つまり殿下と…………」

ゴニョゴニョ

ポチにしか聞こえない声で囁くと満足したかのようにクリスは微笑んだ。当の本人は突然熱でもあるのかというくらい顔を真っ赤にさせて震えている。

殿下が何?おーいクリスー?無いとは思うけどポチを怒らせてない?大丈夫だよね?
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...