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本編

39 僕だけ弱者な件。ムッカーーー!

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「ポチサン、クリスサン、名前は忘れたケド王子サン。3人同時捕獲完了デス。イヤーこうも上手くいくとハ。王子様は愛されてますネ。」
「くッ、殿下ッッ!」「うっ、…申し訳ありません……。」

目が覚めるとそこにはニヤニヤしているヤンの姿と、魔力封じやらで厳重に拘束された二人の姿、最後に名前を忘れられたかつ、拘束すらされていない僕。

「あれ、こういうのって僕も拘束するもんじゃないの?」
「ンー、だって王子サン弱いしネ。特別♡」

カッチーン

だからって縛らないやつがいるかー!!!別にドMじゃないがな!!!!!舐められるにもほどがあるだろう!!!!

しかしヤンを刺激するわけにはいかないので我慢する。僕には油断をしているってことだから、逃げ出す勝算はあるかもしれない。

誘拐を2度経験したあたりからは流石に手ぶらで日常を過ごしてなどいない。もちろん対策済みだ。

一つは、一人用の転移魔道具。しかし今回二人を置いていくわけにはいかないのでこれは使わない。

二つ目は押した瞬間僕の位置情報も分かるし、優秀な騎士団が動いてくれるスーパーボタンだ。こんなときのために用意していて正解だった。

……でも先ほどのポチの話だと、ヤンが身分を偽っている可能性がある。訛りから『軍事が強い隣国』出身なのは間違いないが、商人でなくもっと高い地位だとして騎士を動かし、大事にした場合……

「………戦争になるかも。」
「オー!剣の腕は駄目でもやっぱり賢いデスネー!オレの国は貴方たちと戦争にしたいらしいんデス。だからホラ、早くその突起を押したらどーデスカ?」
「!?」

なんでボタンの存在に気がついてるんだ!?

「アハハ~!オレ、のデスヨ!人間と違ってネ!」

見えるって何が?それに「人間と違って」なんてまるで彼は人間じゃないみたいな言い方だ。

「……?ヤンは人間じゃないのか?」

僕の問いに「だからそう言ってるじゃないデスカ!読み取り能力身につけた方がいいデスヨ」と、ひとしきりケラケラ笑いこけてから僕に近づき、

「ほら、人間さんの大嫌いな魔族デスヨー!」

バアっと小さい子供が可愛らしく脅かすようなノリで、顔がグロテスクにぐにゃりと曲がったのを見せつけられた。メキメキとツノが生え、目の瞳孔は開ききり、歯がひと噛みで食いちぎれてしまうくらい鋭くなっていく。

…………すまない場違いながら……昔やってた推しカプがいるゲームのキャラにすっっっごい似てる!!!はわわわわ。興奮してしまってごめん。

厨二病を拗らせすぎた中学生時代、そのゲームをプレイした記憶がある。若干違いはあれど、そのキャラとあまりにもそっくりだったので、意識がそこに飛んでしまい、恐怖は二の次だった。

「……エー、度胸ありますネ。つまんないデス。」

僕が予想通りの反応を示さなかったのがお気に召さなかったようで、ヤンは大きなため息をつくともっとリアクションしろよという視線を送ってきた。

「もう一回言うケド、我が国は戦争になること望んでるんデス!それにクリスの膨大な魔力取れるしで一石二鳥ってやつデスネ!」

でも今から少し時間があるんデス。と言いながら僕から離れ、クリスに近づいてギリギリと首を締め付ける。

「ぐぅっ、、っ」
「っは、彼に何をする気だ!!!!!!!!」
「クリスサンは王子様から溺愛されてると耳にしまシタ。ちょっとイタズラしたらは貴方は本気を見せてくれるんデス?それとも本当に無能なんデスカ?」

はあっはっと、自分の呼吸が乱れる。この感覚はなんだろう………初めて第二性が発現した時と少し似たような感覚に溺れそうになるし、先ほどから「クリスは僕の物だ。」と心の底から声がする。本能に呑まれてもいいのか?いや、待っ勝手に呑まれ…………

「ざっ、アガッ、さ、触るなぁぁぁぁあ!!!!!!」

何かの線が切れる音がした。
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