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6話 2人ともぶっ飛んでる

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「ここは僕の奢りだから気兼ねなく食べてくれ。」
「……まじで?」
「美味しいからたくさん食べてほしいんだ。」

どこまでお財布事情が素晴らしいものかと、1時間前の銀行ダッシュの自分を憐れむ。

つまりタダで高級料理を食えてしまうのだ。そんなの遠慮なくいただくにきまっている。

とりあえず、サラダでも注文しようとした俺に、ハヤトは「出来たものから持ってきてほしい」とメニューの3分の1くらいの量を一気に頼んだ。

「待て、俺はそんなに入らないぞ。」
「?……僕はたべれるよ。」

もう色々ぶっ飛んでるこいつにツッコむのはやめた。今後付き合いが続くのならまたこのような特例が増えるのかと思い大人しく正座する。どうやら何キロとあるような量は一人で食べれるらしい。

大食いのくせに……俺より細い彼。まあ魔術でいくらでも見た目は変えれるからそこまで羨んではいないが、「食べても別に太らない。」は全女人の敵と聞いたことがあるぞ。

「そうだ…これ、持ってきたよ。」
あれ超絶念願してたDVDか!!」
「うん……でもちょっとお願いがあって。」

ああ…やっぱりそう安安と貰えないよな。と心の片隅で分かっていたがどこか落胆する。……金か?いやボンボンと判明した今それはないとして……身体……とか?

俺は下級の淫魔でもないが見た目はそこそこいいと自覚している。だからこそしっかりプライドのある悪魔なんだが、簡単に『レドのプレミアDVD』と己の身体が天秤に乗ってしまうくらいに推し盲目だった。あと言うまでもなくブツの方に偏った。

「僕と友達になってほしい」
「……え?」

思いもよらない言葉に静かになったテーブルと瞬きを数回。理解するのに数秒を催した。

「オトモダチ?」
「どうだろうか、なかなか釣り合っていると思うのだけど。」

そんな簡単なことでいいのかと言いそうになった自分の口を慌てて紡いで、少し考える。はて、友人とはモノで釣るモノなのか?間違ってないかと知識を絞り出すが、この悪魔の人間付き合いは碌なものがないのでもちろん常識などは持ち合わせていない。

「……俺は安くないぜ?その願い友人は『これ』とかも必要になってくるかもなあ。」

下品に人差し指と親指を繋げて丸くすると、「お金」のマークを表示した。……一応お願いしている身はこちらなのでブラックよりのジョークだ。そのオトモダチとはどういうものなのか知識でしか知らないがまあそこはなんとかなるだろう。

これは一種の悪魔契約でもある。願いを叶える代わりに魂を戴く的なあれだ。まあ今はモノなんだけど。

「はは、なんてな。冗談……」
「そうか。これくらいでどうだろう。」

少し考えるそぶりをしていた彼は、懐から何かを取り出すとぼんっと机の上に分厚い財布を置いた。

「ご飯代を抜いたら手持ちがこれしかなくてね。一回会うごとに払えばいいかな。電子マネーの方ならまだもう少しあるよ。」
「待て、とりあえず落ち着いてくれ。違う、違うんだ。」

最初は揶揄われているのかと思った「願い」がハヤトは本気だったようで大金をいとも簡単に叩き落とす。これでは上級レベルのパ〇活ではないか。

彼には絶対に洒落にならない嘘はつかないと心に刻み、今更「ジョークのつもりだったんだ。」なんて言えるはずがなくとりあえず鞄にしまった。このお金をハヤトのために使えば受け取ったことにはならないだろう多分。

「もう金はこれで十分だ。……さてこれで俺たちは晴れてトモダチ?だ。」
「ありがとう。それと名前は……」
「ああ、そういや言ってなかったな。……ユウトって言うんだ。」
「ユウト君……素敵な名前だね。」

こうして2人の歪な関係は始まった。もちろんユウトなんて今作ったデタラメの名前だ。簡単に悪魔が真名を明かすはずがない。
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