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臨時のチーム交流会
しおりを挟む翌日は、明日出発する皆さんと一緒に特訓という名の交流会が行われました。
訓練に参加したカミーユ、エリック、レオ、グレン、エディ、ギー、ダリウス(以上、敬称略)と、一年先輩で指導員のような立場にあるフォーレさん、アレグレさん、バイルさんの三人が加わります。このうちグレンくんとギーくん、フォーレさんとアレグレさん以外は術師ギルドになります。そして女の子は私とフォーレさんだけです。
レオくんは戦闘ギルドに向いていそうでしたが、術師ギルドでは前にレオくんが使っていた魔法を発動させる丸薬などの研究をしているので、そちらに力を入れたいのだそうです。
「もしかして、このメンバーで臨時チームを組むの?」
グレンくんが、多分皆さんが思っていた疑問を代表して訊ねました。
「一応そうなる。術師多いけどみんな戦えるって聞いた。バランスは大丈夫の筈」
フォーレさんが答えます。それにアレグレさんとバイルさんが頷きました。
「いなくてもいいんだけど、マルクは一緒じゃないのか?」
「マルク? あたしは知らない」
「ギルドをやめたか、講習会組の方にいるんじゃないかな」
講習会というのは、あの訓練最終日に出て行った子たちや、一昨日からギルドに登録した子たちが受ける、それぞれのギルドについての説明や体験したりするもので、本来はみんなそこからスタートするものらしいです。今は戦闘ギルドも術師ギルドも大変なので、その二つについては説明と遠くからの見学だけで、あとは酪農ギルドと労働ギルドの説明や体験を行うのだと聞きました。
今更ですが、そちらの方が良かったです。
「けど、あいつ術師ギルドの方に運ばれてなかった? また調子に乗って勝手に『外』に出て、魔物にやられたんじゃないかって聞いたけど……」
「あ、それ俺も聞いた。回復薬が効かないとかで、別のところに回されたんじゃなかったっけ?」
――――。
それは噂のようなものかもしれません。
けれど、私の内側がざわざわしました。とても嫌な感じです。
『お嬢ちゃんにやったことは「全てあいつに反射されるだろう」ってね。だからお嬢ちゃんの怪我が治ったってことは、そういうこと、なんだろうねえ』
ドラクロワさんが言っていたというダンディさんの言葉が頭を過りました。
私は顔を見ていません。いえ、見えませんでした。声を聞きましたがよく覚えておりません。だから「あいつ」というのがマルクくんであるという確証はないのです。ただ、その可能性がとても高いというだけで。
「そんなことより」
と、バイルさんが私に目を向けました。
バイルさんは一見すると日本人のように見える容姿をされているので、勝手に親近感を覚えていました。
「カナルは本当に戦えるのか?」
「っ……」
「その盾はスゴいという話だが、それにばかり頼ってもいられないだろう。軽く打ち込まれただけで押し負けるようじゃ、お荷物にしかならない」
「バイル、そんな言い方するな。あたしたちの時と違って、時間をかけて貰ってない」
「そりゃ分かってるさ。だから心配なんだよ。いくら訓練の時に盾でどうにかなったって、スキルを使うには魔力が必要なんだ。魔力の回復には時間がかかる。出来るだけ温存させるべきだろう? だったら基礎的な技術を身に付けなきゃ泣くことになる。出発するのは明日だ。それまでにどうにか出来る問題じゃないだろ。状況によっては、街の近辺に来た魔物を狩るだけじゃなくて、森の奥まで行くことになるかもしれないし、一日や二日で帰らせて貰える訳でもないんだぞ?」
「……」
私を庇ってくれたフォーレさんも、そこで黙ってしまいます。当然です。バイルさんが危惧していることは、きっと私だけの問題ではなくなり、皆さんに迷惑をかけることになるのですから。
「それでも、カナルさんは僕たちのチームメンバーです。どのような条件であれ、武器や防具に選ばれるには資質が必要な筈です。そんな彼女がお荷物にしかならないなんてことは有り得ません」
「――」
レオくんが、皆さんの中に生じた疑念を払うように、力強くそう言って下さいましたが、私にそれだけの価値があるかどうか、私自身が一番信じられません。
「お前の言い分も理解できるが、一人でも多く人手は欲しい。彼女にも頑張って貰うしかないんだ。先ずはやってみようじゃないか」
それまで寡黙だったアレグレさんが、そう言ってバイルさんの肩を叩きます。
「取敢えず、オグラさんは付け焼き刃ではあるけれど、体力作りの為に、素振り百本と敷地の周辺を五周しようか」
にっこりと穏やかな微笑みと共に加えられたその言葉に、私はちょっと引きつってしまうのでした。
ギルド周辺の一周が、軽く一キロ越えていたからです。
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