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無理ゲー……?

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───リア充に、なってしまった。


この、俺が。




目の前の可憐な少女は、田中の返事を聞くと目を輝かせながら言った。



「……ほ、本当ですかっっ!!!」





……だめだ。今更断れん。

この純粋な眼差しを裏切るなんて、俺のメンタルが許さない。



「……あ、あなたの、名前……は……?」


  

おずおずと、声を絞り出す。






「あっ、!
そうですよね……!

緊張しすぎて名前を名乗るのも忘れてたなんて……。す、すみません……」








「───私、早乙女  陽葵と申します。
……あの、隣の2年6組で、えっと、、、

……あっ、太陽の陽に、葵って字です!
、、、よっ、読み方はヒマリです!!」



 


……俺って、はたからみたらこんな風に喋ってんのかな。

だとしたらかなりキツい……     



でも、この子は、










───可愛い。








おっちょこちょいコミュ障少女。







可愛い。









俺は、この日初めて恋を知った。



それは甘酸っぱくて、みずみずしくて、

……つつくと割れると分かってもいても止められない、果実の様だった。






今この瞬間、まさに高校生らしい恋愛を謳歌していたのだ。


今まで目の敵にしていたリア充に謝りたくなるほど。





         ・ ・ ・



「……それじゃ、6時限目が始まる前に教室に戻りましょうか!」



「ちょっと待った。」






「……え?」






「あの、ヒマリ……さん、

まさか、授業に戻るつもり……?」






「はい!授業は楽しいですし!


あ。あと、ヒマリでいいですよ!」









ヤバい。この子、本気だ。

おい俺、考えろ。

何とかして止める方法は……











「……いだだだだ!!!」





「えっ?!

ど、どうされたんですか?!」




「えと…………お、お腹!!!

えっと……お腹がイタイカモナァーーー!!」






ごめん。

俺の特別スキルは、仮病しかないんだ。





───お腹を押さえながらチラッと彼女の方を見やる。




目の前の美少女は、顔面蒼白で手を震わせていた。



「……えっ?えっ、、


ヒマリさ……ヒ、ヒマリ!!


大丈夫??」









「………………呼びましょう。」






「……?」




「今すぐ救急車を呼びましょう!!!!!」





…………。




「ごめんなさい。仮病です。」





         ・ ・ ・



何とか陽葵を言いくるめて、校門まで来ることに成功した。

今日という日に、色々な出来事が詰め込まれたせいで、田中はすっかり疲弊していた。

(もう6時限目と部活は休んで帰ろ…………)


……とはいえ、自分のせいで彼女にこれ以上授業をサボらせる訳にもいかない。





「あ、あの……

学校はまだ帰る時間じゃないですよ??」



不思議そうに見つめる陽葵を横目に途方に暮れた。





その時。






ダダダダダ………………………………



騒がしい足音。





(嫌な予感がする。)





「───あッ?!

田中先輩じゃないっスか!!!!



おはようございやーーーーーす!!!!」





頭によぎったのはダンジョン攻略ゲーム。



─────クリア目前でダンジョンボスに遭遇した。




BOSS 1 ───────リア充撲滅委員会書記
           
            遠藤   タケル





(あ、、、。

終わった───……)
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