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17.スペシャルリフレ ※
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「──え…?」
一体、何が起こったのか全く解らなかった。気が付けば、マットレスの隅に身を横たえた曽根川に後ろ抱きにされ、上げた右脚をしっかりと押さえられている。それでも、マッサージですっかりと力の抜けた身体と心は、咄嗟の反応ができずにいた。綿の生成りのシャツ越しに感じる、曽根川の温かな体温と動悸で、かえって安堵感のようなものが生まれてしまう。
する、と、片手が半分捲り上げられたままのガウンの裾から忍び込んできた。無防備な両脚の間の、誰にも触らせたことのない部分にひたりと指が宛がわれたその時、瞬時にして、加賀の頭に冷えた理性というものが戻ってきた。
「……な…、そんなところ…ッ…」
「だめ、加賀さん。動かないで。…恥ずかしくない。はい、力抜いて…ゆっくり息を吐いて…」
曽根川の、触れられただけでそれと意識してしまう熱い指先が、男性器の僅かに下、いわゆる会陰部に触れている。下から上へ、上から下へ、緩やかに動く指は、しかし決して最もデリケートな部分まで踏み込んでくることはない。
耳許に、甘い命令のようなかたちをした言葉を吹き込まれて、反射的に、驚きのあまり籠もっていた力が抜け落ちる。指を動かすことで、くすぐったいような、むずむずするような、微妙な感覚だけを生み出しながら、曽根川は落ち着き払った穏やかな声で囁き掛けてきた。
「ここ、ね。…ここには、男性の精力に繋がる神経がたくさん通ってます。この下の血行が悪いと、色々な障害が起きるんです。…今から、ちょっとだけあったかくなる、血行改善の効果があるオイルで、この下の凝りを解していきます。…安心して下さい?痛くないですし、僕は、お客様の身体に触れるセラピストですからね…ゆっくり息して、意識をここだけに集めて下さい…」
「──ん…ッ…」
腰を逃がそうにも、片脚は曽根川の腕にしっかりと掴まえられ、その上全身で包み込むように押さえ付けられて、身動きを取ることもできない。頬にさあっと血の気が集まるのを感じたが、会陰部以外には決して触れてこない曽根川の指は、言い聞かせられた通り、その下を治療するつもりであるらしい。
加賀を安心させるようにか、淡い力で、くるくると円を描くように、治療部位だけを撫でてくる曽根川の指。若く綺麗な顔立ちをした男性にそんなところを触らせるのは気が引けたが、今までの施術で身も心もすっかりと解されていた加賀は、その時、確かに正常な判断ができていなかった。
くったりと身体の力を抜いて、一回り以上も若いセラピストの為すがままになる。そこに意識を集中させるように目を瞑ると、背後から、曽根川の柔らかな笑み交じりの声が聞こえてきた。
「そう、お上手です、加賀さん。その調子…道教のタオ・ヒーリングでは、ここを『下丹田』って呼びます。生命力の根源、エネルギーの源なんです。下丹田に適度な刺激を与えることが大事なんですが、場所が場所だけに、下手な素人は触れません…。じゃあ、温感オイルを塗っていきますから、ここを意識して深呼吸すること…忘れないでくださいね?」
一度するりと離れていった曽根川の手は、すぐに、ぬるぬるとしたマッサージオイルの感触を伴って戻ってきた。カプサイシンか、ショウガか、何らかの温感成分が入っているのであろうオイルは、塗り広げられると、肌の下にじわりと奇妙な疼きを広げてくれる。確かに、毛細血管が拡張されているような感覚だった。すっかり観念して力を抜いた加賀の両脚の間で、熱く繊細な指先が滑るように上下に動く。
一体、何が起こったのか全く解らなかった。気が付けば、マットレスの隅に身を横たえた曽根川に後ろ抱きにされ、上げた右脚をしっかりと押さえられている。それでも、マッサージですっかりと力の抜けた身体と心は、咄嗟の反応ができずにいた。綿の生成りのシャツ越しに感じる、曽根川の温かな体温と動悸で、かえって安堵感のようなものが生まれてしまう。
する、と、片手が半分捲り上げられたままのガウンの裾から忍び込んできた。無防備な両脚の間の、誰にも触らせたことのない部分にひたりと指が宛がわれたその時、瞬時にして、加賀の頭に冷えた理性というものが戻ってきた。
「……な…、そんなところ…ッ…」
「だめ、加賀さん。動かないで。…恥ずかしくない。はい、力抜いて…ゆっくり息を吐いて…」
曽根川の、触れられただけでそれと意識してしまう熱い指先が、男性器の僅かに下、いわゆる会陰部に触れている。下から上へ、上から下へ、緩やかに動く指は、しかし決して最もデリケートな部分まで踏み込んでくることはない。
耳許に、甘い命令のようなかたちをした言葉を吹き込まれて、反射的に、驚きのあまり籠もっていた力が抜け落ちる。指を動かすことで、くすぐったいような、むずむずするような、微妙な感覚だけを生み出しながら、曽根川は落ち着き払った穏やかな声で囁き掛けてきた。
「ここ、ね。…ここには、男性の精力に繋がる神経がたくさん通ってます。この下の血行が悪いと、色々な障害が起きるんです。…今から、ちょっとだけあったかくなる、血行改善の効果があるオイルで、この下の凝りを解していきます。…安心して下さい?痛くないですし、僕は、お客様の身体に触れるセラピストですからね…ゆっくり息して、意識をここだけに集めて下さい…」
「──ん…ッ…」
腰を逃がそうにも、片脚は曽根川の腕にしっかりと掴まえられ、その上全身で包み込むように押さえ付けられて、身動きを取ることもできない。頬にさあっと血の気が集まるのを感じたが、会陰部以外には決して触れてこない曽根川の指は、言い聞かせられた通り、その下を治療するつもりであるらしい。
加賀を安心させるようにか、淡い力で、くるくると円を描くように、治療部位だけを撫でてくる曽根川の指。若く綺麗な顔立ちをした男性にそんなところを触らせるのは気が引けたが、今までの施術で身も心もすっかりと解されていた加賀は、その時、確かに正常な判断ができていなかった。
くったりと身体の力を抜いて、一回り以上も若いセラピストの為すがままになる。そこに意識を集中させるように目を瞑ると、背後から、曽根川の柔らかな笑み交じりの声が聞こえてきた。
「そう、お上手です、加賀さん。その調子…道教のタオ・ヒーリングでは、ここを『下丹田』って呼びます。生命力の根源、エネルギーの源なんです。下丹田に適度な刺激を与えることが大事なんですが、場所が場所だけに、下手な素人は触れません…。じゃあ、温感オイルを塗っていきますから、ここを意識して深呼吸すること…忘れないでくださいね?」
一度するりと離れていった曽根川の手は、すぐに、ぬるぬるとしたマッサージオイルの感触を伴って戻ってきた。カプサイシンか、ショウガか、何らかの温感成分が入っているのであろうオイルは、塗り広げられると、肌の下にじわりと奇妙な疼きを広げてくれる。確かに、毛細血管が拡張されているような感覚だった。すっかり観念して力を抜いた加賀の両脚の間で、熱く繊細な指先が滑るように上下に動く。
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