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Prana Lokaへようこそ
3.プラナ・ローカ
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「──ううん。流石にお疲れですねぇ。デスクワークばっかりですか…?」
「…えぇ、経理の仕事でね…。今は決算期だから、立ち上がる暇もないくらいで──、ん…ッ…」
身長相応に大きい、しかし繊細な指先が、肩の後ろのツボをぐっと押し込んでくる。そんなつもりはなかったのに、加賀の唇から溢れたのは、完全に無防備な喘ぎ声だった。まさか自分の口からそんな声が迸るとは思わず、あまりのみっともなさにはっと息を飲んで赤面しながら唇を嚙む。しかし、そんな加賀の上から、微笑しながら諭すような声が降ってきて、項の生え際から首筋にかけてを擽るようになぞり始めるのだ。
「──ッ、ぁ…っ…!」
「加賀さん、声を我慢したら駄目です。今、身体が硬くなったの解ります?凝りがほぐれないので、声は素直に出してください。…それに、お客様にたくさん気持ちよくなって頂けると、僕、やる気が出るんですよね…」
「…ッ、そ…ういう、──もの…ですか…っ…?」
ぞわり、と。
産毛が逆立つ程に気持ちのいい触れ方をされて、全身の力がくたっと抜けてしまう。まるで、四肢に通っている芯を引き抜かれたかのような気分だった。熱く、それでいて繊細な指が、確かめるように触れてくる動き、その動きのどれもが加賀を完全に骨抜きにしてくる。
この段階でまだ触診だとは、全く信じられなかった。今までに体験してきた整体やマッサージとは確実に違う技術を曽根川は持っていて、他人に触れられるというただそれだけでこれほど気持ちがいいとは、とても信じられない。自然に溢れてしまう声を我慢しようとすれば、それはすぐに曽根川に悟られて、お仕置きのようにより心地いい場所に指先を突き立てられるので、どんなに恥ずかしくとも声を殺せず、浅く喘いでしまう羽目になる。
温かな指が、腰の両脇をぎゅっと押し込んできた。
「…ッ、あ!──そこ…ぉ…っ…!」
ビクン、と背筋を浮かせる加賀の反応に、曽根川は一瞬だけ考え込むように手を放した。それだけで物足りなさを覚え、本当は体温の高い掌にずっと触れられていたいのだということに気付かされて、心底驚愕する。これが、クチコミのみで広がるリフレクソロジストのテクニックなのだと思えば、リピーターが引きも切らずに通い詰めるというのも大いに納得できる、想像の遥か上を行く技術だった。
「うん…?これ、痛い──?」
「…いや、痛い…というか、──痛いけれど気持ちがいい…かな…」
「あー、なるほど…。加賀さん、眼精疲労もひどいけど、この下半身の固さ、このままじゃ坐骨神経痛一直線です…。首肩と、腰とお尻の辺りを重点的にやりましょうね…。オイルより、タイ式のストレッチを使った方がいいかな。大丈夫ですよ、痛くはしないから、安心して下さいね」
次は、仰向けになるように求められると、曽根川はあれほどにこやかで人好きのする笑みを浮かべていた涼しげな眉間に薄く皺を寄せ、真剣に考え込んでいる風である。
そのまま腕を、脚を揺らしながら大きく揉み解され、足の裏に拳の関節を入れるようにツボを押されるだけで、全身の力がとろりと抜けてゆくのが解る。むしろ、力を入れて声を殺さない方が余程気持ちが良いのだと気付いてから、加賀は腹をくくって、意地を張ることを完全に諦めた。
呻き、喘ぎ、蕩けた息を深く吐き出す加賀を見詰める曽根川の表情は、心なしか妙に嬉しそうに見える。
「…えぇ、経理の仕事でね…。今は決算期だから、立ち上がる暇もないくらいで──、ん…ッ…」
身長相応に大きい、しかし繊細な指先が、肩の後ろのツボをぐっと押し込んでくる。そんなつもりはなかったのに、加賀の唇から溢れたのは、完全に無防備な喘ぎ声だった。まさか自分の口からそんな声が迸るとは思わず、あまりのみっともなさにはっと息を飲んで赤面しながら唇を嚙む。しかし、そんな加賀の上から、微笑しながら諭すような声が降ってきて、項の生え際から首筋にかけてを擽るようになぞり始めるのだ。
「──ッ、ぁ…っ…!」
「加賀さん、声を我慢したら駄目です。今、身体が硬くなったの解ります?凝りがほぐれないので、声は素直に出してください。…それに、お客様にたくさん気持ちよくなって頂けると、僕、やる気が出るんですよね…」
「…ッ、そ…ういう、──もの…ですか…っ…?」
ぞわり、と。
産毛が逆立つ程に気持ちのいい触れ方をされて、全身の力がくたっと抜けてしまう。まるで、四肢に通っている芯を引き抜かれたかのような気分だった。熱く、それでいて繊細な指が、確かめるように触れてくる動き、その動きのどれもが加賀を完全に骨抜きにしてくる。
この段階でまだ触診だとは、全く信じられなかった。今までに体験してきた整体やマッサージとは確実に違う技術を曽根川は持っていて、他人に触れられるというただそれだけでこれほど気持ちがいいとは、とても信じられない。自然に溢れてしまう声を我慢しようとすれば、それはすぐに曽根川に悟られて、お仕置きのようにより心地いい場所に指先を突き立てられるので、どんなに恥ずかしくとも声を殺せず、浅く喘いでしまう羽目になる。
温かな指が、腰の両脇をぎゅっと押し込んできた。
「…ッ、あ!──そこ…ぉ…っ…!」
ビクン、と背筋を浮かせる加賀の反応に、曽根川は一瞬だけ考え込むように手を放した。それだけで物足りなさを覚え、本当は体温の高い掌にずっと触れられていたいのだということに気付かされて、心底驚愕する。これが、クチコミのみで広がるリフレクソロジストのテクニックなのだと思えば、リピーターが引きも切らずに通い詰めるというのも大いに納得できる、想像の遥か上を行く技術だった。
「うん…?これ、痛い──?」
「…いや、痛い…というか、──痛いけれど気持ちがいい…かな…」
「あー、なるほど…。加賀さん、眼精疲労もひどいけど、この下半身の固さ、このままじゃ坐骨神経痛一直線です…。首肩と、腰とお尻の辺りを重点的にやりましょうね…。オイルより、タイ式のストレッチを使った方がいいかな。大丈夫ですよ、痛くはしないから、安心して下さいね」
次は、仰向けになるように求められると、曽根川はあれほどにこやかで人好きのする笑みを浮かべていた涼しげな眉間に薄く皺を寄せ、真剣に考え込んでいる風である。
そのまま腕を、脚を揺らしながら大きく揉み解され、足の裏に拳の関節を入れるようにツボを押されるだけで、全身の力がとろりと抜けてゆくのが解る。むしろ、力を入れて声を殺さない方が余程気持ちが良いのだと気付いてから、加賀は腹をくくって、意地を張ることを完全に諦めた。
呻き、喘ぎ、蕩けた息を深く吐き出す加賀を見詰める曽根川の表情は、心なしか妙に嬉しそうに見える。
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