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第三章 Duae Sankt(ドゥアエ・サンクト)

Duae Sankt.4

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 原初、夜空の月は『無かった』のだと聖典の創世記にはある。
 大いなる神は、人の子が闇を恐れるのを憐れみ、太陽の写し身として月を御創りになられた。しかし、月はあくまでも太陽の一部に過ぎず、満ち欠けを繰り返し、一月に一度は暗天に戻ってしまう。欠けてゆく月、満ちてゆく月にも異名があるが、殊更に忌み嫌われるのが新月の夜マルベニカ・ノクト、逆に、闇の眷属の動きが少ない、安息を許された光満ちる晩が満月の夜サンクタ・ノクトと称されているのだ。
 
 ゲオルギウスの、全き安息であるはずの満月の夜を乱したのは、不死の辺境伯ことラ・ルゴシュだった。
 僻地の村であるグレンツドルフの教会は小さいが、聖堂の近くに建てられた司祭の住居である司祭館は、敬虔な村人の手によって定期的に手入れが施されていたために、比較的小綺麗に保たれていて住むのには困らない。窓や扉に少々の隙間があり、雨や風の日は鎧戸を閉めなければならないということ以外は快適に過ごせていた。森に近いこの村の夏は、海辺の街や、人が集まる大都市に比べればそれほど暑くはないが、それでも、村の男は、就寝時には亜麻布で出来た丈の短い下着のみを身に着け、上半身には何も纏わずに眠るのが普通だった。

 寝台に入る前の祈りを捧げ終えると、ゲオルギウスはいつものように、首から下げている念珠ロザリオを枕元にあるベッドの支柱に掛け、神服キャソックを脱いで壁の衣装掛けに吊るす。膝下までの柔らかい亜麻布の下着を着ければ、後は明日の一番鶏の声を聴くまで安息の眠りに沈んでいられる筈だった。寝台に上がって薄い夏の肌掛けを手繰り寄せた瞬間、ふと、とある『異変』に気付く。
 この村では、穢れの新月マルベニカ・ノクト以外に玄関の扉を施錠する必要はない。盗賊も盗人も近寄らない小さな村の、それも司祭館に押し入って狼藉を働こうという者など存在する筈もないからだ。ゲオルギウスの耳が、玄関の扉の蝶番が軋む音を拾い上げた。次いで、寝室へ続く扉の隙間から流れるように入り込んでくる、濃密な黒い霧のような存在。ふわりと鼻孔を擽るその香りだけで何が起きたのかを悟り、ゲオルギウスはうんざりと溜息を吐いた。

 「──ルゴシュ。お前は知らないかもしれないから言うが、司祭館は、一応聖域だぞ。」
 「そんなの知ってるよ。聖堂よりかは断然マシだが、私にしてみれば十分に居心地は悪い。まるで古井戸の底みたいだ。」

 黒い霧は、見る間に集約して、銀色の髪をした男の姿を目の前に結んだ。闇を見通す翡翠色の睛、そして、目に掛かるほどの長さの前髪を額の中央で分けた短い銀髪の壮齢の男は、ゲオルギウスの食傷の表情など気にも留めずに寝室の床に佇み、平然と肩を竦めている。

 「新月の夜マルベニカ・ノクトまで、あと半月あるが?」
 「それも知ってる。見りゃ分かる。だが、外に出ちゃいけないなんて契約も、決まりもない。私の足は自由だよ?」
 「…明日は、朝から赤ん坊に洗礼を受けさせる準備をする必要があるんだがな──。」

 キシ、と寝台を軋ませながら、自分勝手にゲオルギウスの足を跨いで上がり込むルゴシュの魂胆が知れて、ゲオルギウスの心には次第に苛立ちが募っていった。寝台に横たわり、上半身だけを起こして眉根を寄せるゲオルギウスの脛の上に座り込むようにして、人間の築いた聖域をものともしない強大な力を持つ吸血真祖アルケのルゴシュは、程近くから若い神父の不快も露わな面持ちをしげしげと見つめている。

 「用事が終わったら、すぐ帰るさ。満月の夜は、どうも気が騒ぐんだ。──食欲ではない、別の欲求が私を突き動かす。…ま、もっとも、低俗な屍人ゾンビ食人鬼グールは解らないがね。逆に、何故オマエ達がこんな美しい晩に、この胸のざわめきを感じないのかが不思議なくらいまである。」
 「何故、俺がそれに付き合う必要がある。」
 「つれないこと言うなよ、ギィ──。」

 出会った時よりも余程短いゲオルギウスの愛称を口にして、年嵩の不死者ノスフェラトゥは闇に映える翠の双眸をつっと眇めた。両腕を伸ばし、小麦色の金髪に指を潜らせるようにして頭を引き寄せる。すかさず、黒い長靴を履いた脚が、手の届くところに置いてあった聖具である長棍スタッフを蹴り飛ばして遠ざけてしまった。これで武装司祭に打つ手はないと言わんばかりに勝ち誇ったような笑みを浮かべるルゴシュの美しい翡翠色の視線の中で、ゲオルギウスは露骨に眉を寄せて顔を顰めた。

 「今夜は、たまたまそういう気分になっただけだ。ここが古井戸の底みたいな陰気で薄気味の悪い場所だったとしても、キミの顔を見たくなった。」

 そういえば、この男が村外れで銀色の見事な旋律を歌い上げていた開闢祭の日レヴェノ・フェスティオの空にも見事な満月が輝いていたことを、ゲオルギウスはふと思い出す。彼の言うことをそのまま信じるとしたら、人間にとって安息の晩である満月の夜サンクタ・ノクトは、彼らにとってはまた別の心の衝動をもたらす晩になるのだろう。気紛れに人里を覗いたり、遥か遠くの町まで翔んではうろついている人間にちょっかいを出したり、狼の姿で森を駆け回ったりして衝動を散らしていたというルゴシュは今、新たな発散の矛先を見つけたと言わんばかりに楽しげに笑いながら、視線を逸らそうとするゲオルギウスの頭を捕まえて顔を覗き込んでくるのだ。
 視線を合わせれば、誘引に囚われたゲオルギウスに勝ち目はない。そう知っているかのようなルゴシュの振る舞いが、酷く癪に障った。しかし、居丈高で執念深いこの不死者が己の考えをそうそう曲げるとは思えず、このまま押し問答を繰り返しているうちに無駄に過ぎていく時間の方が惜しく思われる。
 不死伯の気紛れを心底忌々しく思いながら、ゲオルギウスは深い溜息と共に顎を揺らして指図をした。

 「なら、初めから靴くらい脱いでおけ。ついでに服も、全部だ。」

 ゲオルギウスの諦観に反して、ルゴシュの双眸が嬉しげに細む。それが尚も苛立ちを煽ったが、せめて意趣返しくらいはしてやるつもりだった。右の口角を歪んだ笑みの形に持ち上げて、手を伸ばしてルゴシュの朱色の唇を指先で幾度もなぞる。

 「それで、いコトをヤりたいんだったら、まずは俺をその気にさせろよ。──出来るだろ?お前のここを使え。」

 軽い驚きを孕んで見開かれるルゴシュの二つの眼差しを見下ろし、少しは胸のすくような思いがした。若い神父に、下卑た言葉で淫らで低俗な行為を命じられた男は、それでも、言いつけに従って靴を、服を、順繰りに自ら解き始める。その様子を見詰めながら、ゲオルギウスは闇に耀かがよう彼の見事な銀髪に指を絡めてさらりと撫でた。

 「満月の夜になると欲情するのか。──淫乱。」

 ゲオルギウスが投げつけた笑み交じりの揶揄に、彼は返事をしなかった。代わりに、淡い欲を宿した表情で、自らの唇をゆっくりと舐めて湿す。

 「前から思ってはいたが、品行方正な神父さまは、一体何処でそんなにお行儀のいいことばっかり覚えてきたんだい──?」

 そんなことか、とゲオルギウスは軽く鼻を鳴らす。

 「まだ司祭の地位にない神学生の中に、聖課奉仕で得た賃金を娼婦に施す者がいるということは、街では暗黙の了解だからな。…まぁ、見ての通り、俺もそちら側の品行方正な部類だったってだけだ。」

 平然と言ってのけるゲオルギウスを前に、旧い闇であるルゴシュは瞳を細め、さもおかしいと言わんばかりにクックッと喉を鳴らして鳩のようにくぐもった笑声を響かせた。

 「──道理で。くちづけばかりがヘタクソな訳だ。ヒトの娼婦は、客にそれを許さないだろうから。」

 そして、暗がりの中に白皙の裸体を曝け出し、ゲオルギウスの亜麻布の下穿きにそろそろと手を掛けていく。そんなルゴシュの様子を眺めているうちに、自然と興を煽られるようになった自分自身の心身の変化を、ゲオルギウスは未だに上手く消化しきれずにいた。



*****



 同じ空の下には、異なる幸福、はたまた苦悩を抱える者が、それこそ星の数ほど存在するものだ。
 アウエンブルフの空の下、質素な司祭館で、武装司祭のミディアンと聖堂番のユージィンはいつも通りに晩の食事前の祈りを捧げ、その日に得た糧を有り難く口に運ぶ。今日は、雑務の合間にユージィンが沼地で撃ち落としてきた鴨の肉が食卓に上った。本来、堂番を雇うための費用は、寒村に転任する武装司祭の俸給には含まれていない。ミディアンの俸給だけでは大の男二人分の口を養うには少々不足するので、その分は、ミディアンが持ち前の知識で薬の調合をしたり、傷病人を治療したり、或いはユージィンが村の雑用の手助けや狩りや釣りをすることで補っている。
 幸いなことに、アウエンブルフの村人たちは、困窮する司祭への手助けを惜しまない敬虔な聖霊教徒セレスティオばかりだった。先の穢れの新月マルベニカ・ノクトで二人が立てた功績のお陰で、村人たちの信頼と敬意はミディアンに、そして聖堂番であるユージィンにも弛まず向けられている。長く、別の教区の司祭がわざわざ訪れて司式し続けてきたという安息日の聖奉礼や洗礼や葬儀など、必要な儀礼を執り行う司祭の存在は、村人にとって心の安らぎだった。そして、少々日焼けには弱いが陽気で人好きのするユージィンを話し相手にしたり、仕事の手伝いを任せる代わりに、金銭や、野菜やパンや葡萄酒などの食料の寄進をしてくれる人々も随分と増えてきている。
 生きていく上での雑用は何でもこなすが、唯一、料理だけは壊滅的な腕前を誇るユージィンに代わり、調理はミディアンが分担するのが常だった。羽根を毟って下処理をし、綺麗に捌いてローストした鴨肉とパン、そして葡萄酒が今日の二人の晩餐だ。

 「──うん、我ながら、よく焼けたよ。残りは吊るして燻煙してあるから、明日も有難く頂こう。」
 「──あぁ…。」

 新鮮な鴨の肉と葡萄酒は、二人にしてみれば豪勢な晩餐だ。ランプの明かりが揺らめく食卓で、肉を切り分けて口に運び、舌鼓を打つミディアンに対し、いつもは騒がしいほど半ば一方的に喋り立てる筈のユージィンの口数は、妙に少ない。瓶から盃へ、葡萄酒を注ぐ回数が多いように感じるのも気のせいではないだろう。共に連れ立って過ごすようになってから、ユージィンのそんな姿を、ミディアンはもう幾度も目にしていた。不安、陰鬱、そして激しい自己嫌悪。普段、この男の何処からも窺い知ることのできない負の感情を伏せた瞳に宿し、彼は、ただ一人で懊悩している。
 ミディアンには、その理由が歴然と解っていた。漠然と知識で理解しても、しかし、共感することは叶わない。代わりに、腕を伸ばして彼の凛々しい頬をペチペチと軽く叩いてやる。

 「そんな顔するんじゃないよ、折角の晩餐が台無しだ。…それに。」

 伏せられた苦悩の面差しを見詰め、眦を細めて柔らかな微笑を浮かべて見せた。ミディアンが唯一心許した親友にのみ見せる、心の底からの信頼の笑顔だ。

 「──君は、君だろ。たとえどんなことがあろうと、君は僕の親友だ。いつもそう言ってるじゃないか。」
 「…あはは、そだね。ゴメンゴメン。」

 気を取り直したように、ユージィンが笑う。否、彼が無理をして笑っているのは傍目にも明らかだった。それでも、どうにかいつもの調子を取り繕って戻し、ナイフを使って器用に肉を切り分けている。

 「ミディアンの料理が上手くて、ホント助かってます。オレだったら速攻で消し炭にしちゃうだろうからさ。鴨の血のソースも、オレ、こういうの好みだわ。」
 「だろ?遠慮なく僕の腕前を褒め称えたまえ。」

 軽口と共に軽く片目を閉ざして、一杯だけの葡萄酒の盃を手の中で揺らがせるミディアン。されど、ユージィンの如何ともしようもない内心の不調の原因は痛い程分かり切っているだけに、ありのままを受け容れ、受け止めることしかできない自分自身の無力感をひしひしと味わう。
 闇の眷属が跋扈しない満月の夜サンクタ・ノクトは、少なくともユージィンと、そしてミディアンにとっては、或いは穢れの新月マルベニカ・ノクトより重い苦難に満ちた夜であることは間違いがなかった。




 「──父なる神よ、精霊よ。私は、御身の手の中に我が眠れる魂を委ねます。今日の罪を悔い改め、明日は自身の愛すべき隣人に寄り添いて正しき行いを為すために。…聖なるかなサンクティガ。」

 この司祭館には使用人のための部屋が備わっており、聖堂番の部屋は一階に、司祭の寝室は二階にある。
 寝台の傍らにひざまずき、念珠ロザリオを手に就寝の祈りを捧げる。ミディアンは、亜麻布で出来た袖と裾の長いチュニックを寝間着として身に纏っていた。最後の聖句を唱え終わると、ふうっと深い息を吐いて膝を上げ、手にした念珠ロザリオをのろのろとベッドサイドの支柱に掛ける。
 特徴的な大きく厚い耳朶を持つこの耳に、木造の階段を軋ませながら上階に上がってくる音が聞こえた。程なく扉が軋みながら開き、そこには、無二の親友であるユージィンの姿がある。昼間と同じ、黒く丈の長い聖堂番の上着に黒い下穿きトラウザーズを身に着けたユージィンは、口許に微笑を浮かべていた。実に苦しげで、何かを堪えているような微笑。後ろ手に扉を閉ざすと、彼は溜息と共に肩を竦めながら、短く自嘲気味に口を開いた。

 「──ごめんね、ミディアン。オレ、やっぱダメみたい。」

 どうにか平静を保とうとしている彼の鳶色の睛の中に、彼自身でもどうすることもできない獣の衝動が宿っている。人間が空腹や渇きを覚えるように、ユージィンにとって、それは抑えようのない本能的な枯渇なのだ。それを初めて知らされた日、どれほど驚き、また、友に与えられた試練の過酷さを嘆いたことか。
 それでも、ミディアンは茶色い瞳を薄く細め、慈愛に満ちた笑みを浮かべて首を横に振る。俯き、拳を握り締め、野獣の如き情動を必死で押し殺すユージィンに抱擁のための両腕を伸ばした。

 「謝るなって、いつも言ってるじゃないか。──君と一緒に居たいっていうのは、僕の我儘だ。その君のためなら、僕は何だってする。…どうなってもいい。それは、僕が自分で決めたことだよ。だから、ユージィンは謝らなくていい。」
 「──クソッ…!」

 一瞬、天を仰いでユージィンが叫んだ。やり場のない感情を吐露するように。そして、伸ばされた抱擁の腕の中に飛び込むようにして小柄な体を抱え上げると、寝台の上にドサリと横たえた。大きな手がミディアンの眼鏡のブリッジを摘まんで外し、サイドテーブルの上に置く。覆い被さってくるユージィンの長身は熱く、小刻みに震えていた。鼻先が触れ合う程に顔の距離が縮まり、ユージィンの長い黒髪がさらりと零れてミディアンの頬を擽る。自嘲めいた笑みを漏らしながら、性急に靴を脱ぎ捨てた男が重みと熱を預けるように圧し掛かってきた。

 「…笑っちゃうよ。こんなの、娼館の女にすることじゃない?──それを、オレは、ミディアンに。」
 「もういい、何も言うな。」

 自ら黒衣を脱ぎ捨て、荒れ狂う情念に任せてミディアンの寝間着のボタンを外しに掛かるユージィンの頬を両掌で捕まえて、塞ぐように唇を重ねた。まるで飢えた狼のように熱く、荒い親友の呼吸。くちづけるという行為が彼の理性のたがを吹き飛ばすことを知っていて、敢えてしっとりと濡れた唇を合わせ、緩やかに舌を吸い上げる。
 ピチャ、と密やかに響く唇の交接の音。剥がれ落ちていく互いの衣。それは、聖霊教会の教義の中では間違いなく禁忌にあたる背教的な行いだった。それと知って、男として男と身体を重ねる。ミディアンが初めてユージィンの衝動的な秘密を知ったその日から、誰にも知られずに身体を許すことを躊躇ためらわずに選んだ。それでも、唇を交わし、身体を開かれることに対して抵抗がない訳ではない。触れ合う素肌が焼けた鉄のように熱いのは、いつものことだった。深くつながるくちづけの喜悦に身を震わせ、互いを結ぶ銀色の濡れた糸を舐め取りながら、ユージィンが茫洋と呟く。

 「ガキの頃から、ミディアンだけなんだ。──オレがこんな中途半端な混血鬼ダンピールだったとしても、何もかも許してくれるのは。」




 流行り病で家族を全て亡くしたミディアンが孤児になったのは、僅か五歳の頃。激しい人見知りを抱えたミディアンは、時を同じくして同じ教会孤児院に引き取られてきたひとつ年下のユージィンとは、初めて出会った時からどういう訳か奇妙に馬が合った。

 『──ねぇ、ミディアン。満月の夜サンクタ・ノクトだよ。月がきれいだ。夜の小川に、蛍を見に行こう…。』

 今も、満月の晩が来る度に、目を輝かせて共に寝台を抜け出そうと誘い掛けるユージィンの興奮した笑顔と声が、記憶の中に確りと焼き付いている。たとえユージィンが何者であったとしても、唯一無二の親友であることに変わりはない。
 ならば、苦しむ隣人の為にこの身を捧げよう。神の子としてこの世に在りながら、一人では到底抱えきれない苦悩を抱えた愛する者の為ならば、喜んで犠牲者の席に立ち、生贄になる。
 この行いは、果たして神によって裁かれるべき罪なのか。
 ミディアンは、事あるごとに姿の見えない天なる神に問い掛ける。聖堂を守り、神に仕える哀れな子羊であるユージィンに魔性の衝動を植え付けたのが神の御業ならば、その苦悩を和らげるために司祭であるこの身を差し出すことは、堕落しきった者の所業で、大罪だと言い切れるのだろうか。
 幾夜考えても、答えは出ない。故に、何も考えず、ただユージィンの鼓動を、吐息を、存在を、全身で感じ取ることに徹する。
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