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番外編

番外編1-3

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 ザラキア以外に許したことのない狭い穴の中をずぷずぷと犯されるのと、シンジの喉から絶望的な嬌声がほとばしるのとは、全く同時だった。
 ひとたび入り込まれてしまえば、腹の中を深々と抉る魔物の舌を止める手立ては、もはやシンジにはない。呆然と肉穴を犯されながら、見開いた眦から一筋の涙がつうっと頬を伝わって流れた。
 
 『ご主人様マスター以外に…セックスされちゃったんだ──。僕は、ザラキア様だけの性奴隷セクシズなのに…。なのに、こんな生き物に負けて、セックスされちゃったんだ…。』
 
 だが、シンジのそんな感傷的な嘆きも、長くは続かなかった。
 肉穴の奥まで入り込んだ舌が、内壁を舐め回しながらぐぢゅっ、ずちゅっ!と長いストロークで中を突き上げ始める。前から挟み撃ちにされた前立腺が押し潰され、バチッと目の前が爆ぜる。
 脳天まで突き抜ける刺激で、頭の中をぐちゃぐちゃにされそうだった。乳首も、前も、後ろも、性感帯の全てを余すところなく刺激して、この気味の悪い触手生物はハッ、ハッ、と生温かい獣の吐息を部屋に響かせている。
 
 頭の中が、だんだんぼんやりとしてきた。
 人外の、歯止めのない快楽をシンジに与え続ける魔物の目的は解らない。ただ、シンジをぐちゃぐちゃに犯して、鳴き喚かせて、それだけでいいというのだろうか。
 
 「ひ──ああぁ…ぁゔぅッ──!嫌、犯さないで…!う、動かさないでっ、頼むからぁ…ッ──!」
 
 魔物の太く長い舌が、触手が、触腕が、シンジの性感帯の全てを捉えてぐちゅ、どちゅ!と責め立ててくる。そうされれば、腹の奥からせり上がってくる絶頂感を阻むことは出来ない。この時ばかりは、ザラキアの手で調教されきったいやらしい性奴隷セクシズの身体が憎らしいとしか思えなかった。宙に浮いた背筋をガクンガクンと震わせて、前の穴にも後ろの穴にも好き勝手に出入りする濡れそぼった魔物の一部が与える性感から逃れようと、拘束されて不自由な全身をばたつかせる。
 
 「やだ…嫌ぁ、ッ──ザラキア様…以外に…エッチなことされて、イくのなんて──そんなの嫌だぁ…っ…!」
 
 頭の中がぼんやりして、身体は勝手に熱感を帯びる。嫌だ、と思っても勝手に感じてしまう身体を持て余し、首を激しく左右に振りながら、迫りつつある限界と戦ってシンジはボロボロと涙を零した。心臓が弾けんばかりに弾むのに、ぐずぐずに溶かされた身体の中が気持ちよくて仕方ないのに、それがザラキアではないことだけがシンジを絶望の淵に駆り立てていく。
 
 ズッ!ズッ!と、後ろの肉穴を擦りながら出入りする舌の動きが早くなった。同時に、精液の通り道をグリグリ捏ね回す触手も、乳首に巻き付いて先端をこしょこしょと舐め回す細い触手の動きも激しさを増す。
 一番奥にだけは挿れさせない、と下腹に力を込めれば、ぷっくりと膨れ上がった前立腺を激しく叩くように捏ね回され、目の前が白黒に点滅した。込み上げてくる絶頂感を冷まそうとするシンジと、無理矢理に快感を与える魔物の間のせめぎ合いの中、じりじりと窮地に追いやられていくシンジの目許から、大粒の涙がほろりと零れる。
 ビクビクと背筋を反らせ、せめてその時の訪れを遅めようと足掻きながら、食い縛った歯の間から一際大きな絶叫を響かせた。
 
 「イキたくないッ──!ザラキア様ぁ…っ、──助けて──!」
 
 
 「ミケ!ハウス!」
 
 その時だった。聞き慣れた、鋭い声が耳朶を打ったのは。
 壁に掛かった長い鞭を取り、バシィンッ!と激しく石の床を打ち据えるザラキアの腕。
 途端に、シンジを絡め取り、絶頂の縁に追い詰めようとしていた触手や触腕から、嘘のようにぐったりと力が抜ける。散々体をなぶっていた触手や舌はずるんっと引き抜かれ、切れそうになる絶頂のせきと戦っていたシンジの汗びっしょりの身体は床の上に降ろされた。
 そしてそのまま、全身に粘液を纏った奇妙な生き物は、軽い足音を立てて部屋の隅に走って行ってしまう。
 
 「…ザ…ラキア──さま…?」
 
 未だ、信じられないものを見る目で、床の上からかなり高い所にある藍色の瞳をじっと見上げた。片手で長い黒い鞭をしならせ、一声だけであの妙な生き物を追い払ったザラキアは、軽く眉を寄せながらシンジのそばに屈み込んでくる。
 
 「お前、大丈夫か?」
 「──大丈夫、です…。──いえ、僕は…僕は、大丈夫なんかじゃない…。」
 
 ザラキアの、褐色の肌を持つ手でさらりと頬を撫で上げられ、ようやくシンジに安堵が戻ってきた。しかし、割れそうに早鐘を打つ心臓や、全速力で走った後のように速い吐息の中で、決して思い出したくないことを思い出してしまう。
 絶望と後悔にさいなまれ、シンジの目許からは、ほろほろと涙が溢れて止まらなかった。床にうずくまって、肩を震わせてすすり泣くシンジを、ザラキアが不思議そうに見つめて首を傾げている。
 
 「おいおい、何なんだよ。シケたツラしやがってさぁ…。」
 「…だって、だって、僕、──あんな生き物に…セ、セックス、されちゃったんです…。ご主人様マスターだけにしか許さないって決めてたのに、それなのに──ッ…。」
 「ハァ?」
 
 ヒックヒックとしゃくり上げるシンジの言葉に、ザラキアが、素っ頓狂な声を上げて長い耳の先をピクピクと動かした。

 「…えっ?」
 
 あまりにも予想外のザラキアの反応に、シンジはぴたりと泣き止んで、糸のように細められたザラキアの、何とも言えない目つきをした顔をじっと見詰める。
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