69 / 73
堕落の都SODOM
SODOMに月が昇る夜
しおりを挟む
ソドムの街に、第二の月が昇る夜。
今日もたっぷりと主人の快楽の為に奉仕したシンジは、ザラキアの寝室のキングサイズのベッドの上で、隣にぴったりと寄り添うようにして、彼の抱き枕になっていた。
ザラキアが自ら切り整えた黒髪を指の間に潜らせ、柔らかに梳き流す。そうして琥珀色の指で髪に触れられるのも、ゾクゾクするほど堪らなく心地がいい。
この世界に来てからまだ半年もたっていないのに、ここは間違いなくシンジの本当の居場所であり、元の世界に帰りたいという気は微塵も起きなかった。
甘い快楽の余韻に浸りながら、ザラキアが口を開く。
「──もう少し経ったら、お前には魔族の寿命をやろうと思ってるんだ。」
「魔族の…寿命──?」
ことりと首を傾げて主人を見上げるシンジ。その目を見詰めながら、ザラキアは、あぁ、と頷く。
「死刑に処される魔族の心臓と、お前の心臓を取り換える手術だ。身体を流れる血も、全部その魔族のものに入れ替えちまう。──当然、金の掛かることだぜ?何せ、この街で死刑宣告を受ける魔種はそうそう多くないし、お前に適合する型の心臓の持ち主を探すだけでも一苦労だ。それでも、さ。」
終生奴隷にしたのだから、終生を共にしたいのだ、とザラキアは少しだけ照れながらはにかみ笑いで言う。
その言葉は、素直に、思わず表情が蕩けてしまう程に嬉しかった。
「──そういえば、ご主人様は…何歳なんですか?」
「あぁん?魔族の歳、か──。きちんと数えてる奴なんかいるのかね?とにかく、神ってヤツが人間界からこの世界を切り離し、アズラフィエルあたりの大貴族が街の原型を作った頃には、もうここに居たかなぁ…。」
それって、とんでもなく長生きなんじゃないのか?とシンジは思う。そして同時に、魔族の寿命を貰い受けたとしたら、永遠に近い、気の遠くなるほど途方もない時間をザラキアと共に、愛玩されながら過ごすのだということも。
「…まぁ、もっとも、それはもうちっとばかり後だな。人間に魔族の寿命を入れると、そこで成長は止まる。──つまり、調教があまり効かなくなってしまうってことでもある。だから、今はまだだ。もうちょっと俺様好みに快楽調教されとけ…?」
微笑んでシンジを抱き締めるザラキアの腕は、人間を奴隷として調教する恐ろしい魔物のそれだというのに、どこまでも温かく、そしてどこまでも優しい。尖った耳と山羊の角を持つ、とびっきりの美人の淫魔がシンジの唯一の主人だ。
シンジの額にチュ、と音を立ててキスをすると、ザラキアは間もなく眠り落ちるように穏やかに瞬きを繰り返し始めた。その口から、ふぁ、と大きな欠伸が漏れる。
「それに、手術の為には目一杯金を稼がなけりゃな。──覚悟しとけよ。明日も、子種をたっぷり絞るぞ…?」
「…はい。ザラキア様の言う通りに。」
「後、税金の計算もきっちりしとけよ──。お上に、無駄に払う金貨なんかビタ一文ねぇくらいに。」
「それも、はい。脱税にならないくらいに、僕がちゃんと調整しておきますよ…。」
「よしよし、お前は本当に出来のいい、可愛い奴だな…。他のどこを探しても代わりのいない、俺様の最高の性奴隷だ…。」
ザラキアに背中を撫でられながら、シンジの瞼の上にもとろりと濃い疲労の眠気が落ちてくるのを感じる。
人生、誰しもどこかで紆余曲折があるものだ。
でも、きっと、この摩訶不思議だけれど幸福な時間は、果てしなく長く続くのだろうと思える。七つの大罪に代わって七つの美徳が賞賛され、退廃と享楽が支配するこの街に黄昏が訪れるのは、多分まだまだ先のこと。
自分を拾った唯一の主人であるザラキアの腕に身を委ね、瞼を閉ざして寝息を立て始めた。そして目覚めれば、また次の一日が始まる。
神と対立した魔物の街、SODOM。永遠の夜に包まれたそんな地でも、必ず花開く幸福の種がある。
幸せな眠りに落ちる二人分の吐息が絡まり合い、背徳の都の中にある広い寝室の静けさを、そっと満たしていた。
─FIN─
饗宴を仕切る、金切り声の魔物が幕の合間からヒョイと顔を覗かせて曰く。
「さてさて、背徳の都SODOMの物語は、之にて閉幕となりまする!いずれいかなる形で再開はありやなしや?
とまれかくまれ、最高位性奴隷快楽調教師と、その愛奴隷たる最高級性奴隷の両名その他が織り成すショーがお気に召しました皆々様、なにとぞ盛大な拍手・ご感想・ご要望等等…さささ、お投げ込みくだされ!お投げ込みくだされ!」
今日もたっぷりと主人の快楽の為に奉仕したシンジは、ザラキアの寝室のキングサイズのベッドの上で、隣にぴったりと寄り添うようにして、彼の抱き枕になっていた。
ザラキアが自ら切り整えた黒髪を指の間に潜らせ、柔らかに梳き流す。そうして琥珀色の指で髪に触れられるのも、ゾクゾクするほど堪らなく心地がいい。
この世界に来てからまだ半年もたっていないのに、ここは間違いなくシンジの本当の居場所であり、元の世界に帰りたいという気は微塵も起きなかった。
甘い快楽の余韻に浸りながら、ザラキアが口を開く。
「──もう少し経ったら、お前には魔族の寿命をやろうと思ってるんだ。」
「魔族の…寿命──?」
ことりと首を傾げて主人を見上げるシンジ。その目を見詰めながら、ザラキアは、あぁ、と頷く。
「死刑に処される魔族の心臓と、お前の心臓を取り換える手術だ。身体を流れる血も、全部その魔族のものに入れ替えちまう。──当然、金の掛かることだぜ?何せ、この街で死刑宣告を受ける魔種はそうそう多くないし、お前に適合する型の心臓の持ち主を探すだけでも一苦労だ。それでも、さ。」
終生奴隷にしたのだから、終生を共にしたいのだ、とザラキアは少しだけ照れながらはにかみ笑いで言う。
その言葉は、素直に、思わず表情が蕩けてしまう程に嬉しかった。
「──そういえば、ご主人様は…何歳なんですか?」
「あぁん?魔族の歳、か──。きちんと数えてる奴なんかいるのかね?とにかく、神ってヤツが人間界からこの世界を切り離し、アズラフィエルあたりの大貴族が街の原型を作った頃には、もうここに居たかなぁ…。」
それって、とんでもなく長生きなんじゃないのか?とシンジは思う。そして同時に、魔族の寿命を貰い受けたとしたら、永遠に近い、気の遠くなるほど途方もない時間をザラキアと共に、愛玩されながら過ごすのだということも。
「…まぁ、もっとも、それはもうちっとばかり後だな。人間に魔族の寿命を入れると、そこで成長は止まる。──つまり、調教があまり効かなくなってしまうってことでもある。だから、今はまだだ。もうちょっと俺様好みに快楽調教されとけ…?」
微笑んでシンジを抱き締めるザラキアの腕は、人間を奴隷として調教する恐ろしい魔物のそれだというのに、どこまでも温かく、そしてどこまでも優しい。尖った耳と山羊の角を持つ、とびっきりの美人の淫魔がシンジの唯一の主人だ。
シンジの額にチュ、と音を立ててキスをすると、ザラキアは間もなく眠り落ちるように穏やかに瞬きを繰り返し始めた。その口から、ふぁ、と大きな欠伸が漏れる。
「それに、手術の為には目一杯金を稼がなけりゃな。──覚悟しとけよ。明日も、子種をたっぷり絞るぞ…?」
「…はい。ザラキア様の言う通りに。」
「後、税金の計算もきっちりしとけよ──。お上に、無駄に払う金貨なんかビタ一文ねぇくらいに。」
「それも、はい。脱税にならないくらいに、僕がちゃんと調整しておきますよ…。」
「よしよし、お前は本当に出来のいい、可愛い奴だな…。他のどこを探しても代わりのいない、俺様の最高の性奴隷だ…。」
ザラキアに背中を撫でられながら、シンジの瞼の上にもとろりと濃い疲労の眠気が落ちてくるのを感じる。
人生、誰しもどこかで紆余曲折があるものだ。
でも、きっと、この摩訶不思議だけれど幸福な時間は、果てしなく長く続くのだろうと思える。七つの大罪に代わって七つの美徳が賞賛され、退廃と享楽が支配するこの街に黄昏が訪れるのは、多分まだまだ先のこと。
自分を拾った唯一の主人であるザラキアの腕に身を委ね、瞼を閉ざして寝息を立て始めた。そして目覚めれば、また次の一日が始まる。
神と対立した魔物の街、SODOM。永遠の夜に包まれたそんな地でも、必ず花開く幸福の種がある。
幸せな眠りに落ちる二人分の吐息が絡まり合い、背徳の都の中にある広い寝室の静けさを、そっと満たしていた。
─FIN─
饗宴を仕切る、金切り声の魔物が幕の合間からヒョイと顔を覗かせて曰く。
「さてさて、背徳の都SODOMの物語は、之にて閉幕となりまする!いずれいかなる形で再開はありやなしや?
とまれかくまれ、最高位性奴隷快楽調教師と、その愛奴隷たる最高級性奴隷の両名その他が織り成すショーがお気に召しました皆々様、なにとぞ盛大な拍手・ご感想・ご要望等等…さささ、お投げ込みくだされ!お投げ込みくだされ!」
66
お気に入りに追加
1,058
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話
ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる