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堕落の都SODOM
処刑台にて
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解るのは、ザラキアが無礼を承知でアズラフィエルの手からシンジを守り抜いたということだけである。『花嫁』という言葉で幾度も呼ばれ、恐ろしさで震えていた胸の中がじわりと温かくなる。
『さっきのザラキア様…カッコ良かったな…。』
高位の堕天使を前にして決して怯まず、楯突くことも厭わなかったザラキアの想いが、終生奴隷として何よりも尊く、嬉しいものであるとシンジには思えた。
帰りの辻馬車に乗り込むや否や、ザラキアがはぁっと深い息を零して両腕で頭を抱え込んだ。
「──いっや…。ヤベェくらいに緊張したぜ、さすがの俺様でも、大悪魔アズラフィエル公爵閣下の手を掴んだ時は、死んだかと思った…。」
心境をそのままに、長く尖った両耳をくたりと垂らし、彼らしくもない弱々しい声で呟き、更に深々と溜息を吐く。
「…ザラキア様。そんなことをしてまで、僕を…?」
「あぁ、当たり前だろ。」
傍らで見上げるシンジの耳許に唇を寄せ、魔龍馬を操る御者の小鬼には決して聞こえないほどの声量で囁きながらゆっくりと髪を撫でる。
「お前は、俺の終生奴隷だ。…堕天使だろうが大悪魔だろうが、指一本たりとも他の野郎の好きにされるのは俺様のプライドが許さねぇ。──そういうことだ。」
「…ご主人様っ!」
毅然としたザラキアの言葉があまりにも嬉しくて、思わずその首筋にぎゅっと抱きついてしまう。そんなシンジの頬に、鼻に、幾つもチュッとキスを落としてザラキアはへらっと陽気な笑顔を浮かべた。
「まぁ、そういう訳で、お前からは子種をたっぷり絞る必要がある。オスイキ調教もしっかり入れてやるから、頑張って期待に応えろよ?」
「はいっ…!──ん、でも、あの…。」
元気に答えてから、ふと真顔になる。
シンジの血を引く性奴隷が誕生し、その調教をザラキアが請け負うということになれば、親子二代でザラキアの快楽調教を受けるということになるのではないだろうか。しかも、ザラキアはさっき、『もしアズラフィエルが最下級性奴隷に堕ちたら、それを調教することは最高の名誉』とも言っていた。
「──うぅ…。」
何となく複雑で、不穏な頭の中。人間の親子関係という概念はこの街にはないらしいのでそれは置いておくとしても、ザラキアが他の誰かを性奴隷調教する、という事実について考えたことはなかった。
『何だろう、この胸がざわつく変な気持ち──。』
自分でも自分自身がよくわからず、眉尻を下げて俯いてしまうシンジ。ん、どした?と陽気に問い掛けてくるザラキアの声に何と答えていいのか考えあぐねていると、馬車の外から波のような喧騒が響いてきて、考え事を中断させてしまった。どうやら、行きにも通った広場の処刑台に差し掛かった辺りであるらしい。ザラキアも気が付いて、ピクリと耳を震わせる。
「おや──。早速、処刑のショーが始まるみたいだ。どれ、シンジにも見せてやるか。この街の『掟』ってヤツをな…。おい、馬車を広場につけてくれ。」
「へい。承知しました。」
「えぇ──ッ?それは…。」
「ん?何だよ。ビビってんのか?」
「──、いえ…。」
シンジの弱気も知らず、ザラキアは恐ろしいことを平然と言う。御者は二つ返事で馬車の向きを変え、処刑場が窓からよく見えるように馬を止めた。どんな残酷なことを見せられるのかとハラハラしたところで、主人であるザラキアの考えは絶対である。
群衆に囲まれた処刑台の上には、見事な金の巻き毛を持つ一人の人間の青年が繋がれていた。三つの穴がくり抜かれた木の板に手首と首を繋がれ、裸の腰をいやらしく突き出す形で立ったままギロチン拘束された青年の首には、黒い性奴隷の首輪が嵌まっている。その美貌を恐怖と屈辱に歪める金髪碧眼の青年奴隷の前には、主人であると思われる上等の服を着た黒い翼の魔族の男が。そして背後には、全身緑の鱗で覆われ、長い尻尾を持つ逞しいリザードマンの処刑人が、腰布一枚を纏っただけの姿で悠然と立っていた。
「──皆の者、よく聞いてくれ。この性奴隷は、メス穴奴隷としての調教を受け容れず、主人に逆らった。よって今から、『公開穴叩き五十回』の刑に処す。」
高らかに宣告する主人の声を耳に、処刑場を取り囲む魔族の群衆からは大きな歓声が上がった。
「穴叩き──?」
「ああ、そうだ。処刑って言っても、調教コスパの掛かる大事な性奴隷をそうそう傷モノにしたり、使用不能にはしねぇさ。ただ、そのプライドとか意地をバッキバキにしてやればいい。ここでするのは、そういう意味での『処刑』だ。…見たところ、アレは元々種牡奴隷だった奴だな。腕に管理番号の刺青が入ってる。それをメス穴奴隷に転換したいっていう性癖は解らんでもないが、奴隷の心の方がまだついて来てねぇ。」
「──…。」
「ま、あの刑を受ければ、あいつも綺麗さっぱり生まれ変わると思うぜ…。メス堕ちの快感を味わったら、二度と種牡奴隷に戻りたいとは思わねぇだろ。」
シンジの問い掛けに答えながら、処刑が始まるのを今か今かと待ち侘びる大衆と同じく、ザラキアは楽しげな面持ちで刑の執行を待っている様子だった。
『さっきのザラキア様…カッコ良かったな…。』
高位の堕天使を前にして決して怯まず、楯突くことも厭わなかったザラキアの想いが、終生奴隷として何よりも尊く、嬉しいものであるとシンジには思えた。
帰りの辻馬車に乗り込むや否や、ザラキアがはぁっと深い息を零して両腕で頭を抱え込んだ。
「──いっや…。ヤベェくらいに緊張したぜ、さすがの俺様でも、大悪魔アズラフィエル公爵閣下の手を掴んだ時は、死んだかと思った…。」
心境をそのままに、長く尖った両耳をくたりと垂らし、彼らしくもない弱々しい声で呟き、更に深々と溜息を吐く。
「…ザラキア様。そんなことをしてまで、僕を…?」
「あぁ、当たり前だろ。」
傍らで見上げるシンジの耳許に唇を寄せ、魔龍馬を操る御者の小鬼には決して聞こえないほどの声量で囁きながらゆっくりと髪を撫でる。
「お前は、俺の終生奴隷だ。…堕天使だろうが大悪魔だろうが、指一本たりとも他の野郎の好きにされるのは俺様のプライドが許さねぇ。──そういうことだ。」
「…ご主人様っ!」
毅然としたザラキアの言葉があまりにも嬉しくて、思わずその首筋にぎゅっと抱きついてしまう。そんなシンジの頬に、鼻に、幾つもチュッとキスを落としてザラキアはへらっと陽気な笑顔を浮かべた。
「まぁ、そういう訳で、お前からは子種をたっぷり絞る必要がある。オスイキ調教もしっかり入れてやるから、頑張って期待に応えろよ?」
「はいっ…!──ん、でも、あの…。」
元気に答えてから、ふと真顔になる。
シンジの血を引く性奴隷が誕生し、その調教をザラキアが請け負うということになれば、親子二代でザラキアの快楽調教を受けるということになるのではないだろうか。しかも、ザラキアはさっき、『もしアズラフィエルが最下級性奴隷に堕ちたら、それを調教することは最高の名誉』とも言っていた。
「──うぅ…。」
何となく複雑で、不穏な頭の中。人間の親子関係という概念はこの街にはないらしいのでそれは置いておくとしても、ザラキアが他の誰かを性奴隷調教する、という事実について考えたことはなかった。
『何だろう、この胸がざわつく変な気持ち──。』
自分でも自分自身がよくわからず、眉尻を下げて俯いてしまうシンジ。ん、どした?と陽気に問い掛けてくるザラキアの声に何と答えていいのか考えあぐねていると、馬車の外から波のような喧騒が響いてきて、考え事を中断させてしまった。どうやら、行きにも通った広場の処刑台に差し掛かった辺りであるらしい。ザラキアも気が付いて、ピクリと耳を震わせる。
「おや──。早速、処刑のショーが始まるみたいだ。どれ、シンジにも見せてやるか。この街の『掟』ってヤツをな…。おい、馬車を広場につけてくれ。」
「へい。承知しました。」
「えぇ──ッ?それは…。」
「ん?何だよ。ビビってんのか?」
「──、いえ…。」
シンジの弱気も知らず、ザラキアは恐ろしいことを平然と言う。御者は二つ返事で馬車の向きを変え、処刑場が窓からよく見えるように馬を止めた。どんな残酷なことを見せられるのかとハラハラしたところで、主人であるザラキアの考えは絶対である。
群衆に囲まれた処刑台の上には、見事な金の巻き毛を持つ一人の人間の青年が繋がれていた。三つの穴がくり抜かれた木の板に手首と首を繋がれ、裸の腰をいやらしく突き出す形で立ったままギロチン拘束された青年の首には、黒い性奴隷の首輪が嵌まっている。その美貌を恐怖と屈辱に歪める金髪碧眼の青年奴隷の前には、主人であると思われる上等の服を着た黒い翼の魔族の男が。そして背後には、全身緑の鱗で覆われ、長い尻尾を持つ逞しいリザードマンの処刑人が、腰布一枚を纏っただけの姿で悠然と立っていた。
「──皆の者、よく聞いてくれ。この性奴隷は、メス穴奴隷としての調教を受け容れず、主人に逆らった。よって今から、『公開穴叩き五十回』の刑に処す。」
高らかに宣告する主人の声を耳に、処刑場を取り囲む魔族の群衆からは大きな歓声が上がった。
「穴叩き──?」
「ああ、そうだ。処刑って言っても、調教コスパの掛かる大事な性奴隷をそうそう傷モノにしたり、使用不能にはしねぇさ。ただ、そのプライドとか意地をバッキバキにしてやればいい。ここでするのは、そういう意味での『処刑』だ。…見たところ、アレは元々種牡奴隷だった奴だな。腕に管理番号の刺青が入ってる。それをメス穴奴隷に転換したいっていう性癖は解らんでもないが、奴隷の心の方がまだついて来てねぇ。」
「──…。」
「ま、あの刑を受ければ、あいつも綺麗さっぱり生まれ変わると思うぜ…。メス堕ちの快感を味わったら、二度と種牡奴隷に戻りたいとは思わねぇだろ。」
シンジの問い掛けに答えながら、処刑が始まるのを今か今かと待ち侘びる大衆と同じく、ザラキアは楽しげな面持ちで刑の執行を待っている様子だった。
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