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エピローグ

終生奴隷

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 「──よし、傷口は完全に塞がった。俺は、奴隷の身体に傷を付けることはしないが、一生に一度の瞬間だけは仕方ねえ。」
 
 饗宴サバトの中で処女を散らされ、そのままイキ狂わされて意識を失ったシンジは、気が付けば、ザラキアの屋敷の中にある檻に戻されていた。気絶している間に、汗や精液でドロドロに汚れた身体はきれいに洗い清められていて、目を覚ました時には清潔なシーツの中で温かな毛布に包まれていたのだ。
 奥深くまで完璧に暴かれ尽くした肉穴には、まだジンジンと甘く疼き続ける余韻が残っている。それは、ザラキアに初めての体験を捧げたという証拠であり、気絶する前の乱痴気騒らんちきさわぎが夢ではなく現実だったということを確かに物語っていた。

 肉体に常に負担がかかる性奴隷セクシズの体力を素早く回復させるという入浴の効果だろうか、翌日には、ザラキアの大きなモノで軽く裂かれた傷口はすっかり治っている。檻の中の寝台の上でシンジを四つん這いにさせ、よく見えるように上げさせた尻朶を割り開いて、狭く小さな穴をくぱっと親指で押し広げながら、ザラキアは目を細めて注意深く中を観察していた。それが終わると、シンジを寝台の上に座らせて、自分もその横に腰を下ろしてくる。
 長い耳と象牙色の角を生やしたザラキアは、いつものようにへらりと軽い笑顔で笑っていた。彼は腕を伸ばし、きちんとセットされたシンジの黒髪を柔らかく撫でてくれる。それがくすぐったくて、気持ちよくて、ほうっと深い息を吐き出してうっとりと微笑んだ。
 
 「──いや、やっぱり俺様の見込んだ通りだ。お前はよくやったよ、ショーは大成功して、俺はまた『最高位性奴隷快楽調教師マスター・オブ・ザ・パペット』のタイトルホルダーになった…。それだけじゃねぇ、あれだけ派手に見せれば、愛玩種の体形で毛色の違う淫乱性奴隷の血統が欲しいっていう貴族や金持ちたちも出るだろ。ステージのチップもたんまり稼いだし、当分は、食うことにもちょいと贅沢することにも困らねぇ。…さて、だ。」
 と、ザラキアは急に、らしくもなく少々真剣な面持ちになる。
 藍色の、切れの長い瞳でシンジの顔をまっすぐに見据え、そしてゆっくりと口を開いた。

 「シンジ。──お前、元の世界に帰りたいと思うか?人間が人間を支配する、魔族のいない世界に。」
 「はい──?」
 急な問いに、思わず言葉に詰まって問い返してしまう。ぱちぱちとまばたきをしながらザラキアを見詰め返すシンジの前に、彼は一掴ひとつかみの布を無造作に放り投げた。あ、と目を見開く。それは確かに見覚えのある、この世界に来る前に身に着けていた、個性のない、たいして高くもない量販店の灰色のスーツなのだ。
 「…ま、もっとも、返す手段は解らねぇし、迷い人ワンダラーが元の世界に帰ったっていう記録もねぇんだな、これが。ただ、お前がシケたツラで元の世界を恋しがってるかどうかで、俺様の今後のモチベーションが変わってくる訳よ。」
 つまりは、重い気持ちで沈み込んでいる異世界産性奴隷セクシズを手元に置いて調教することは、あまり気が進まないのだという。
 
 そんなザラキアの問いを受け、シンジは決意と共に胸の前でぎゅっと拳を握り締めた。自分がいなくても回る世界、誰にも必要とされていない世界より、このソドムで愛玩されて飼われている方がずっといい。それに、ザラキアの手で余すところなく快楽を叩き込まれてしまった肉体は、今更どうやってもそれを忘れることはできないだろう。

 黒い瞳で藍色の瞳を真剣に見詰め返し、はっきりとした口調で言い切った。常におどおどして自分の意見を言えなかったシンジにとって、それはとても珍しいことだったが、性奴隷としての自負を持った今であればすんなりと言える。
 「──僕は、もう元の世界に帰りたいとは思いません。ご主人様マスターの手で調教されて…自分が、本物の淫乱性奴隷セクシズだって気付いてしまったんです。こんなにエッチなことばっかり教えられて、もう、ご主人様マスターのいない世界には戻れません。戻りたくない。…そばに置いてください、僕、どんなことでもやりますから──!」
 「…そうか、その言葉、嘘じゃねえな。何度も言うが、淫魔インキュバスには他人の気分が多少は解る。今のお前から、我慢や無理は感じねぇよ。」
 
 ふっと、ザラキアの目が優しく微笑んだ。
 そして、シンジの前に一本の白い革のベルトを見せてくる。それは、今身に着けている黒革の首輪の色違いのように見えたが、金色の模様が刻み込まれ、細部まで丁寧に作り込まれた芸術品のようだ。
 「これはな、終生奴隷の首輪だ。これを着けた人間は、一生ひとりのご主人様マスターに仕えることになる。…もちろん、持ち主にも制約があるぞ。終生奴隷にした人間はもう売り飛ばせない。死ぬまで一生手元に置いておかなけりゃいけない、そういう契約だ。俺様は調教師だし、今まで、そんな重いモノを持ったことがなかったんだが。」
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