38 / 61
埋葬蟲.4 ※
しおりを挟む
耳許で囁かれ、ムラサキは胸の奥深くから息を吐き出しながら、そろそろと腰を落としていく。自らの秘め所を雄の交尾器に貫かせるという、浅ましい痴態を晒してでも、茹だるような歯痒く重く蟠る随喜からこの身を逃したかった。
腰を引き下ろす手に従ってゆっくりと落とせば、受容の際にほんの一瞬ばかり覚える、引き裂けるような、致し方のない苦しみがムラサキを襲った。それでも眉根を寄せ、浅く息を吐きながら慣れた楔をじわじわと呑み込む。
内壁の一点に息衝く痼りを押し上げられた瞬間、目の前に白い花弁の幻がふわりと散った。
「──ぁ…あッ…!」
ぺたりと腰を落として、向かい合わせに座した若い雄の上に座り込む。喘鳴のように咽喉を鳴らして全身を小刻みに震わせながら、ひとつになった身体を微塵も動かせずに俯くムラサキを前に、すっかり昂った雄蜘蛛は咽喉で笑いながら、煽るように腰を突き上げてきた。
枝垂れ柳の枝で打ち据えられたかのようにムラサキの背筋がびくりと撓み、力が抜けそうになる腕をどうにか叱咤して、重過ぎる快楽をやり過ごそうとする。
「…ほら、自分で動いてみろよ──。出来るだろ?」
「っく、──ンッ、ぅ……シノノメ……っ!」
熱した掌が腰の両側を掴み、今度は小刻みに浅い突き上げの振動を与えてくる。
そればかりではとても昇華されず、どうにももどかしく蟠るだけの快楽を逃そうとして、若者の首筋に縋って促されるままに腰を使い始めた。
ゆっくりと身体を浮かせ、悦い処を探りながら身体を落とすと、脊柱から脳髄に向けて細波のように押し寄せる何かが生じて、それが雄蝶として有るべきムラサキの理性を徐々に麻痺させていった。今となっては、この身は目の前の若い雄蜘蛛の巨きな交尾器を受け止める交接器以外の何物でもない。
頭の中が甘ったるく濃縮された蜜で満たされたように重たくなり、ただ受け身の快楽だけを求めて大きく身体を揺さぶる。シノノメの腕の力に全てを委ねてしまえば、僅かばかりの矜持も吹き飛ばされる、夢のような心地になった。
霞む目の前で、シノノメが自らの白い牙に銀の珠飾りを打ち付ける音がかちりと響く。威嚇めいたその音も、融かされゆく耳には誘いの音色にしか聞こえない。顔を上げ、首を傾いで熱い唇を求め、自ら重ね合わせていく。鼓膜を犯す濡れた音は、口づけの音か、情交の粘つく水音なのか、もう区別はつかなかった。
大きな振幅で雄に内壁を貫かせながら、嬌声を殺すようにシノノメの咥内に舌先を忍び込ませて絡み付けていく。身体を重ねている最中、ここまで我を忘れて口付けを捕りに行ったことはない。この快楽を初めて刻み、知らしめた熱い身体に必死でしがみ付き、鳴き喘ぎながら、目の前が極彩色に煌めく最後の瞬間を強請る。
「──ァ…ぁ、…シノノメ、…もう…っ──!」
「……ッ…!」
ふわり、と甘い雲の上に投げ出されたような心地が頭の中を満たした。溜息を吐いて悦に浸る身体の中を激しく突き荒らす灼熱の楔がある。
熱く迸る体液を奥に浴びせ掛けられ、尚もムラサキは深く感じ入った。ただ精を吐き出すだけでは得られない深い絶頂の境地に引き摺り上げられてしまえば、暫くは帰ってくることが出来ない。
腰を引き寄せられるまま、強く掻き抱いた彼の肌は汗ばんで熱かった。身体の奥に残響を感じながら、ぐったりと重みを預けるこの時間がこれほどまでに甘いと思うなど、自分自身がとても信じられなかった。
腰を引き下ろす手に従ってゆっくりと落とせば、受容の際にほんの一瞬ばかり覚える、引き裂けるような、致し方のない苦しみがムラサキを襲った。それでも眉根を寄せ、浅く息を吐きながら慣れた楔をじわじわと呑み込む。
内壁の一点に息衝く痼りを押し上げられた瞬間、目の前に白い花弁の幻がふわりと散った。
「──ぁ…あッ…!」
ぺたりと腰を落として、向かい合わせに座した若い雄の上に座り込む。喘鳴のように咽喉を鳴らして全身を小刻みに震わせながら、ひとつになった身体を微塵も動かせずに俯くムラサキを前に、すっかり昂った雄蜘蛛は咽喉で笑いながら、煽るように腰を突き上げてきた。
枝垂れ柳の枝で打ち据えられたかのようにムラサキの背筋がびくりと撓み、力が抜けそうになる腕をどうにか叱咤して、重過ぎる快楽をやり過ごそうとする。
「…ほら、自分で動いてみろよ──。出来るだろ?」
「っく、──ンッ、ぅ……シノノメ……っ!」
熱した掌が腰の両側を掴み、今度は小刻みに浅い突き上げの振動を与えてくる。
そればかりではとても昇華されず、どうにももどかしく蟠るだけの快楽を逃そうとして、若者の首筋に縋って促されるままに腰を使い始めた。
ゆっくりと身体を浮かせ、悦い処を探りながら身体を落とすと、脊柱から脳髄に向けて細波のように押し寄せる何かが生じて、それが雄蝶として有るべきムラサキの理性を徐々に麻痺させていった。今となっては、この身は目の前の若い雄蜘蛛の巨きな交尾器を受け止める交接器以外の何物でもない。
頭の中が甘ったるく濃縮された蜜で満たされたように重たくなり、ただ受け身の快楽だけを求めて大きく身体を揺さぶる。シノノメの腕の力に全てを委ねてしまえば、僅かばかりの矜持も吹き飛ばされる、夢のような心地になった。
霞む目の前で、シノノメが自らの白い牙に銀の珠飾りを打ち付ける音がかちりと響く。威嚇めいたその音も、融かされゆく耳には誘いの音色にしか聞こえない。顔を上げ、首を傾いで熱い唇を求め、自ら重ね合わせていく。鼓膜を犯す濡れた音は、口づけの音か、情交の粘つく水音なのか、もう区別はつかなかった。
大きな振幅で雄に内壁を貫かせながら、嬌声を殺すようにシノノメの咥内に舌先を忍び込ませて絡み付けていく。身体を重ねている最中、ここまで我を忘れて口付けを捕りに行ったことはない。この快楽を初めて刻み、知らしめた熱い身体に必死でしがみ付き、鳴き喘ぎながら、目の前が極彩色に煌めく最後の瞬間を強請る。
「──ァ…ぁ、…シノノメ、…もう…っ──!」
「……ッ…!」
ふわり、と甘い雲の上に投げ出されたような心地が頭の中を満たした。溜息を吐いて悦に浸る身体の中を激しく突き荒らす灼熱の楔がある。
熱く迸る体液を奥に浴びせ掛けられ、尚もムラサキは深く感じ入った。ただ精を吐き出すだけでは得られない深い絶頂の境地に引き摺り上げられてしまえば、暫くは帰ってくることが出来ない。
腰を引き寄せられるまま、強く掻き抱いた彼の肌は汗ばんで熱かった。身体の奥に残響を感じながら、ぐったりと重みを預けるこの時間がこれほどまでに甘いと思うなど、自分自身がとても信じられなかった。
32
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる