蟲人の森 -蝶の王-

槇木 五泉(Maki Izumi)

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埋葬蟲.3 ※

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「少し口の中を舐めてやっただけで、こんなに濡れるのか。──お前、もうすっかり俺の雌だな。」
「ん…ッ、──そんな…っ…。…ぁ、あぁ──ッ…!」

 初めは服さえ脱がず、ただ下穿きだけを緩めて己の快楽を満足させるためにムラサキの身体を貫いていたシノノメは、毒蜘蛛の持つ高い体温でくるむと蝶の血潮がより速く熱く流れるということを知ってから、気紛れに上着を脱いで素肌を重ね合わせるようになってきた。
 空を飛ぶ、痩せて軽い肉体からだを大柄な逞しい上体で包み込むように抱かれてしまえば、鼓膜の奥で鼓動が煩いほどにどくどくと響き、羞恥と、それを凌駕する発熱が全身を焼き焦がす。仔のような世代の凛々しい雄に、花の盛りを過ぎたこの身体を、浅ましく蕩けるこの顔を、つぶさに見せるのはどうにも気遅れがした。
 恥じらいながら顔を伏せるムラサキの溢れさせた雫をたっぷりと指先に掬い上げ、蜘蛛の腕がするりと腰に巻き付いて、後ろから最も奥深くに秘め隠された場所をひたりと捉える。

 つぷ、とふたつの指が内側に食い込んできて、ムラサキは言葉にならない甘い悲鳴を上げる。シノノメの腰に巻き付けた膝頭にぎゅっと力が籠もり、そこを交接の為の器官に塗り替えようと準備を施す指を肉襞で喰い締めた。最早、どこにどう触れればどのように鳴くかなど暴き尽くされていて、濡らされた内壁は露骨な程に早く馴染んで、雄を受け止める器になろうとしている。くちゅ、じゅく、とわざと卑猥な音を立ててムラサキの泣き処を掠め、焦らすことさえ覚えたシノノメは、相対して上に座らせたムラサキの肩に顎を載せ、罌粟煙草けしたばこの煙のように陶酔に誘う鱗粉香を、存分に楽しんでいた。

「──っふ、…う、あぁ…ッ…。」

 息を喘がせるあまり口角から溢れそうになった雫を、銀の珠が穿うがたれた舌先がぺろりと掬い上げていく。シノノメに身を任せていると、次第に頭の中がぼんやりとして、とあるひとつのところに辿り着くことしか考えられなくなっていった。
 今となってはさほど恐ろしいとも感じなくなった若い雄の蜘蛛に、強引にそれを強請ねだられてしまえば、恥も矜持もかなぐり捨てて与え、そして求めることに抵抗がなくなっていく。
 ほんの気紛れとは言え、シノノメは寒く厳しい冬の森で生涯を閉ざそうとしていたムラサキを生かしたのだから、命より軽い何かを差し出すことを躊躇ためらってはならない、それが道理なのだと考えるようになっていた。

 奥処で暴れ、もどかしいところで弱点から逸れる二本の意地悪な指に、ムラサキは酷く焦れた。激しく首を振って長い髪を乱し、シノノメの頬を両掌で挟み包んで、目許を潤ませながら懇願する。

「…後生だから、生殺しにしないでくれ──、…欲しい…。──あぁ、お願いだから、もっと…奥に…!」
「何だよ、交尾されたくて仕方がなくなったのか…?」

 異種の、年上の雄のみだらがましい哀願を、どう受け止めたのか。彼は翳りある青い眸をニヤリと笑ませて、一度指先で熟れた内奥を大きく突き荒らしてから、ムラサキの身体から出ていった。黒革の下穿きの前を緩めると、隆々とそそり勃つ長大な交尾器を引きずり出し、ムラサキの腰を捕まえて巧みに誘導する。

 綻びて口を開いた淵に、熱く滾った槍の穂先がひたりと降れ、ムラサキは咽喉を鳴らして覚悟と共にシノノメの首筋に強く縋った。

「じゃあ、自分でれてみろ。そんで、奥までくわえ込んで好きなように動けばいい。出来るだろ?ムラサキ。」
「…ッ、は──あ、ぁ、ッ…!──あつ…ッ…!」
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