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埋葬蟲.2 ※
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「──ふ…っ…。」
あえかな溜息と共にムラサキが身を竦ませると、柔らかく震える二対の翅から発情を誘う香気がふわりと立ち昇る。身体を繋げる前に蝶の身体を昂らせておくと、外来の蜘蛛を酩酊させる馨りがより一層濃くなることを知っているシノノメの手で、長い時間を掛けて弄ばれるのが常だった。
口と口を重ね合わせ、舌を絡み付ける前戯に、当初、若い雄の蜘蛛は実に不慣れであった。押し伏せるように強引に侵入し、咥内を出鱈目に荒らしてくる雑な口づけを舌先で宥め、説き伏せ、淡く撫で擽る濡れた快楽を教え込んだのはムラサキだ。
初めは捕食の延長線上にあり、吐息を奪うように食いついてくるだけだった手管は、回数を重ねるうちに随分と物慣れて、大人びたものになった。咥内で混ぜられ、どちらのものともつかなくなった雫を咽喉を鳴らして飲み干すと、全身の温度がまたざわりと上がり、身体が発情の境地に向けて緩やかに追い上げられていくのが解った。
金属の珠の飾りが穿たれた舌の腹で、舌裏の付け根を撫でられると、味わったことのない、言いようのない心地良さが生じる。まだ若い蝶の王であった時、番いになった雌の蝶との間で交わした接吻とはまるで異なるシノノメとの口づけは、ムラサキの肉体をじわじわと侵食し、雄を受け容れるための器になるように促してくる。
「…は、ぁ──、それ…はっ──!」
ムラサキの着物を脱がせたシノノメは、上半身に纏っていた上着とシャツを脱ぎ捨てて、胡坐を掻いた腰の上にムラサキの腰を引き寄せるようにして、向かい合わせに腰を降ろす格好を取らせる。首筋に縋らせた蝶の手が桃色の髪の生え際や首筋をなぞるのを、彼は好んでいる様子だった。
そしてムラサキは、若く横柄な毒蜘蛛が指先の愛撫を求めて身を摺り寄せてくるのを無碍にはできない。毒も牙も持たない胡蝶の愛撫は、どうやら毒蜘蛛の粗暴な衝動を宥めているようでもあり、そして蝶という生き物は、交歓の中で触れ合った相手に対して情が湧くように出来ているらしい。
これから身体の奥処に交尾器を挿し込まれ、快楽の捌け口として使われようとしているというのに、四十五令の破れ蝶のこの身を熱心に求めてくる雄蜘蛛に対して、以前ほど嫌悪感を抱かなくなってきているのが、ムラサキは自分でも不思議であった。
指の先が、胸の頂で硬く尖った薄紅の痼りを摘まみ上げて押し転がしてくる。それだけでじんと腰が疼いて、思わず重ねた唇の合わいから濡れた嬌声を漏らしてしまった。
シノノメの片手がするりと下腹に降り、口を吸い合うだけで芯が通って濡れたムラサキの雄の証を緩やかに撫でる。はしたない程に溢れ出した露を絡めるように幹をなぞり上げられ、そこから突き抜ける直接的な快感に、背筋を大きく弓形に反らせる。
あえかな溜息と共にムラサキが身を竦ませると、柔らかく震える二対の翅から発情を誘う香気がふわりと立ち昇る。身体を繋げる前に蝶の身体を昂らせておくと、外来の蜘蛛を酩酊させる馨りがより一層濃くなることを知っているシノノメの手で、長い時間を掛けて弄ばれるのが常だった。
口と口を重ね合わせ、舌を絡み付ける前戯に、当初、若い雄の蜘蛛は実に不慣れであった。押し伏せるように強引に侵入し、咥内を出鱈目に荒らしてくる雑な口づけを舌先で宥め、説き伏せ、淡く撫で擽る濡れた快楽を教え込んだのはムラサキだ。
初めは捕食の延長線上にあり、吐息を奪うように食いついてくるだけだった手管は、回数を重ねるうちに随分と物慣れて、大人びたものになった。咥内で混ぜられ、どちらのものともつかなくなった雫を咽喉を鳴らして飲み干すと、全身の温度がまたざわりと上がり、身体が発情の境地に向けて緩やかに追い上げられていくのが解った。
金属の珠の飾りが穿たれた舌の腹で、舌裏の付け根を撫でられると、味わったことのない、言いようのない心地良さが生じる。まだ若い蝶の王であった時、番いになった雌の蝶との間で交わした接吻とはまるで異なるシノノメとの口づけは、ムラサキの肉体をじわじわと侵食し、雄を受け容れるための器になるように促してくる。
「…は、ぁ──、それ…はっ──!」
ムラサキの着物を脱がせたシノノメは、上半身に纏っていた上着とシャツを脱ぎ捨てて、胡坐を掻いた腰の上にムラサキの腰を引き寄せるようにして、向かい合わせに腰を降ろす格好を取らせる。首筋に縋らせた蝶の手が桃色の髪の生え際や首筋をなぞるのを、彼は好んでいる様子だった。
そしてムラサキは、若く横柄な毒蜘蛛が指先の愛撫を求めて身を摺り寄せてくるのを無碍にはできない。毒も牙も持たない胡蝶の愛撫は、どうやら毒蜘蛛の粗暴な衝動を宥めているようでもあり、そして蝶という生き物は、交歓の中で触れ合った相手に対して情が湧くように出来ているらしい。
これから身体の奥処に交尾器を挿し込まれ、快楽の捌け口として使われようとしているというのに、四十五令の破れ蝶のこの身を熱心に求めてくる雄蜘蛛に対して、以前ほど嫌悪感を抱かなくなってきているのが、ムラサキは自分でも不思議であった。
指の先が、胸の頂で硬く尖った薄紅の痼りを摘まみ上げて押し転がしてくる。それだけでじんと腰が疼いて、思わず重ねた唇の合わいから濡れた嬌声を漏らしてしまった。
シノノメの片手がするりと下腹に降り、口を吸い合うだけで芯が通って濡れたムラサキの雄の証を緩やかに撫でる。はしたない程に溢れ出した露を絡めるように幹をなぞり上げられ、そこから突き抜ける直接的な快感に、背筋を大きく弓形に反らせる。
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