蟲人の森 -蝶の王-

槇木 五泉(Maki Izumi)

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越冬.3 ※

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「──血色も悪けりゃ、痩せて骨張って抱き心地も悪い。まあ、これだけ餌と水があれば、そのうち肉付きも良くなるか…。雄の蝶って生き物は、老いぼれても浮ついた淫乱だ。…はははッ!から俺が出したやつが溢れてくるぞ。雌みたいに濡らしやがって──。」
「…ッ、そんなこと…──っ。」

 聴きたくない、と、指先をきつく握り締めて首を振った。
 薄い尻朶を乱雑に掴み、大きく割り開いてくる掌。その合わいで、決して露わにしたことのない秘部に思わず力が籠もり、こぽりと溢れ出して痩せた腿を伝う生温い精液の感触が確かにある。膝下しっかの枯葉が沈み、蜘蛛が膝立ちで寝床に乗り上がってきたのが解った。

 ひりひりとした痛痒を覚え始めた、無理矢理に開花を強いられた蕾の縁に、ひたりと宛がわれる熱。
 雷に撃たれて燃え尽きた木の、燻る炭の一片より尚も熱く感じられるそれ・・が何であるのかを悟った瞬間、ムラサキの全身を駆け抜けたのは、真新しい蹂躙の記憶、おぞましい屈辱と苦痛への畏怖に他ならなかった。
 咄嗟に顔を上げ、驚愕に見開いた焦茶の睛で、今再びムラサキを発情の贄に据えようとしている雄蜘蛛を肩越しに精一杯顧みる。

「や…っ、嫌だ…!頼むから、もう少し待っ…──!」
うるせぇよ、俺がこうやって使ってやってるだけの雌の分際で、ごちゃごちゃ抜かすんじゃねえ…!」

 懇願が終わらぬうちに、有無を言わさずガツ、と楔が打ち込まれ、ムラサキは音にならない悲鳴を張り上げて凍り付いた。
 本来は雄と交わるための器官ではないそこ・・で受け止めるには無理のある熱感と質量が、凌辱を受けたばかりで小刻みにひくつく肉壁を情け容赦もなくえぐり付けていく。

 枯れた木の葉を掴み締め、細い咽喉を目一杯に反らして侵入の苦痛に耐えることだけが、雄蜘蛛の雌代わりになることを承諾した今のムラサキに唯一出来る辛抱だった。唾液と共に塗り付けられた麻痺毒の効力が薄れた今、きつく狭窄した入口は疼痛を訴え、無理矢理押し入ってくる雄のおおきさを思い知らされる。

 それでも、一度吐精を受けて濡れそぼった隧道ずいどうは、沈み込んでくる雄の交尾器を先程より容易く受け容れることができた。腰だけを突き出す形で軽々と持ち上げられ、慾に浮かされた雄の荒々しい腰遣いに撃たれて、強張る四肢にびくびくと不規則な震えが走る。

「ヒ…ぁ、──痛…、いた…い──ッ、…っく、ううぅ──ッ…!」
「…ッは、さっきよりよく濡れて、イイ具合じゃねえか。本物の雌よりよっぽど雌らしいな、お前。蜘蛛の雄を相手にしたって、本気になれるんだからなぁ…?」
「ッ、や、ぁ──!…そこ──は…、ぁッ…!」
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