1 / 2
¿Quo Vadis ?─クォ・ヴァディス─ 外伝
神父として、吸血鬼との情欲に溺れる自分をどうすべきか、まだわからない。
しおりを挟む
「キミの髪は、実った小麦の色。重そうに穂を垂れる、一面の麦畑──。」
蝋燭の揺れる頼りない灯りの中、寝台の上で向かい合わせに座った年嵩の男は、彼よりもだいぶ上背の高い若い神父の短い髪に指を滑らせながら、歌うように呟く。
若い神父が一人で暮らす質素な司祭館の寝室で、互いに一糸纏わぬ裸身を曝け出し、神父は、自分より二回りは華奢で小柄な年上の男の為すがままになっていた。いや、正確には、仕方なしにそうさせている、と言った方が正しい。
「キミの目玉は、深い碧玉の色。鍾乳洞の奥底の湖だって、そんなに深い蒼じゃない──。」
「もう止せよ、ルゴシュ。こっちは、お前の気紛れに付き合っている時間はないんだ。」
「あ、そう?」
「お前な…。」
髪を撫でていた白い指が、若者の頬を包んで眦を指先でなぞる。前髪を額の中央で両側に分けた、耳を隠す程の短い銀髪に、眉尻と目尻が下がった翡翠のように煌めく美しい眼を持つ男は、たとえ至近距離から眺める若者の凛々しい眉間に深い皺が寄っていようが、一向にお構いなしだった。
それは、とても心地好い月の晩だった。空気は熱くも寒くもなく、夜空はどこまでも晴れ渡っている。
こんなに綺麗な晩だから、と、理由にもならない理由で、吸血鬼や食人鬼にとっては不可侵の聖域である小さな村の教会の中に黒い霧となって忍び込んできた男は、年の頃を見れば四十路後半から五十路の頭ほどであるように見える。額の中央で分けた、さらりと揺れる見事な短い銀髪。鮮やかな翠色をした双眸、そして、人間のそれとは明らかに異なる僅かに先の尖った耳朶。
弱冠二十三歳の『武装司祭』であるゲオルギウスとは圧倒的に相容れない筈の、強大な力で千年以上も人間を翻弄し続けてきた吸血真祖・不死鬼である辺境伯ラ・ルゴシュは、今、ゲオルギウスの目の前に白く華奢な裸体を惜しげもなく晒し、寝台に足を投げ出して座る若者の両腿を跨いで、その顔をまじまじと見つめながら悠然と歌のようなものを紡ぎ上げているのだ。
人間に害を為す人ならぬモノ共に対抗するため、神と精霊の聖名の許に武器を取る神職、武装司祭であるゲオルギウスと、その最大にして最強の仇敵である不死伯ルゴシュ。決して交わらぬはずの二つの運命が何故、奇妙な形で交差することになったのか、神の思し召しはわからぬものだ。ゲオルギウスはルゴシュを殺せず、ルゴシュはゲオルギウスを殺さない。まして、首筋に真珠色の牙を突き立てて血を啜ろうとも考えておらず、代償として、彼はゲオルギウスに人間の『精気』を求めた。
晩の祈りを終えて寝床に入ったばかりのゲオルギウスの臙脂色の武装神服は壁に掛けられていたし、銀のロザリオは寝台の支柱に下がっている。そして、ルゴシュが纏っていた古風な貴族の装束は、靴と共に脱ぎ散らかされて床の上に散らばっていた。
「風情がないな、キミは。こうやって目合う前には、少しの色気でも出しておくものだぞ?」
「知るか。司祭は妻帯できない。まして男が男と寝るのは大罪だし、寝たいとも思わない。馬に飼い葉をやる時に甘い言葉は必要か?そういうことだ。」
どこまでも素っ気なく顔を逸らすゲオルギウスを、ルゴシュは不満げに唇を曲げて見詰めている。この手で心臓に杭を打ち込んでやりたい宿疾であるというのに、それができないジレンマを抱えながら、重い溜息と共にルゴシュの小さく華奢で軽い白皙の体躯を寝台の上に組み敷き、ゆっくりと重みを預けていった。
数百年前、異教徒の騎馬隊をたった一人で砂漠の彼方に追いやったという功績が認められて爵位を得た不死者、ラ・ルゴシュ伯爵は、一体どこから人間を遥かに超えた力を絞り出すことができるのか不思議に思うほど小柄な男であった。それこそ、人間の男の中でも背の高い部類に入る、鍛え抜かれた武装司祭のゲオルギウスの肉体の下にすっぽり収まるほどに、組み伏せた身体は痩せて小さい。
五十前後の壮齢の男の見た目をしていながら、あらゆる負傷を瞬く間に完治させる彼の白い肌には傷ひとつなく、雪花石膏で作った彫像のように滑らかだった。よしんば、翡翠色の睛を持つ彼が、人間離れした麗しい風貌をしていなかったら、ゲオルギウスは罪悪感を押さえ込んで黒い肉欲の情念を燃やすことが叶わなかったかもしれない。
ツツ、と雀が鳴くように舌を鳴らせば、物慣れた唇がゲオルギウスの唇に重なってくる。ただ急いて貪るだけの若い手管とは違い、ルゴシュのくちづけは実に巧みで、両掌の間に若い男の頬を柔らかく捕らえながら、顎を傾けて幾度も啄むように唇を落としてきた。初めは抵抗を見せていた口付けを人間の男に許し、濡れた舌同士を絡めて甘噛みする。禁忌であり、生理的嫌悪を抱くはずの行いを好んで仕掛けようという気になったのは、不死者に対する歪んだ支配欲の為せることなのかもしれない。
「──ッ、ふ、…っ…。」
組み敷いたルゴシュの体温は低く、ひんやりとした涼しさを覚えるほど。そして、その肉体からは、人間の男が発する不快な汗の饐えた匂いは一切漂ってこない。彼の肌がほんのりと熱し、白皙が薄桃色に染まるほど高まると、その身体からは熟れ切って地に落ちる寸前の果物のような、或いは腐肉の甘さだけを凝縮したような、得も言われぬ誘引の薫香が漂うのだ。
「まるで淫魔だな…。息をしているだけで男を誘うのか、不死鬼というヤツは。」
ピチャリと音を立てて濡れた唾液の糸を舐め取り、喉の高みを揺らがせてゲオルギウスはクツクツと嗤う。寝台の上に広がる短く撓やかな銀色の髪の中に鼻先を埋めて彼の媚香を吸い込み、首筋に、胸元にと身体を浮かせながら順繰りに唇を落としていった。柔く白い肌の上をきつく吸い付けて、幾つも赤黒い痣のような痕跡を刻み込む。所詮はすぐに消える痕であっても、ルゴシュの身体に己の痕を刻むのは酷く心地が良かった。
「ひ──ぅ、…う…ぅん…っ…!」
そうして、鴇色をした胸の頂点のひとつを口に含むと、きつい程にちゅうっと吸い上げる。びくん、と竦み上がり、胸を反らせる彼の所作は、少々手荒な刺激を待ち焦がれているようにも思えた。咥内でどんどん張り詰めてぷつりと固くなってゆく柘榴粒のような痼りを吸い上げ、甘く歯を当て、ながらにもう片方の胸の頂点を摘まみ上げて半ば乱暴に捏ね回す。気付けば、震える右手の指がゲオルギウスの後頭部に掛かって金色の髪を緩やかに掴み締め、もう片腕は傷だらけの逞しい背肌を抱きながら小刻みに戦慄いていた。呼吸だけで高鳴る喉笛を反らしながら身悶えする様子は、ルゴシュがそれだけで感じ切っていることをありありと伝えてくれる。
時折、指と唇の位置を変えながら、固くしこった胸の先を責め続けてやった。冷ややかだった肌の温度が程良く熱し、しっとりと汗を帯びてくる。その汗すら、ゲオルギウスに不快をもたらさない。むしろ、この男を鳴き喘がせているのは自分自身なのだという昏い嗜虐が背筋をゾクゾクと伝い、雄としての粗暴な欲求を掻き立ててくれる。
どのくらいそうやってルゴシュを嬲り続けていただろう、ついに、彼が小刻みに腰を突き上げながら、ゲオルギウスの髪を軽く掴んで小さく叫んだ。
「──っ、いつまで…するんだよ、ギィ!乳飲み子じゃあるまいし──!」
ゲオルギウスの短い愛称を口にして、目頭を潤ませる男の下腹にどんな感覚が蟠っているのかは、身体を重ねている以上ゲオルギウスにも露骨に伝わってくる。胸先への刺激だけで存分に劣情を集めたのであろう、男の直接的な快楽を示す部分は、ゲオルギウスの下腹に擦れて固く昂っていた。
「まだここには触ってもいないぞ?淫らな奴。腰を振って、欲しがって──。」
「ヒ──ぁ、んッ、…それ…は──!」
嘲笑しながら体を起こし、ルゴシュの下腹部ですっかり屹立したものを大きな掌に包み込んで上下に扱いてやる。兵士よりも強靭な武装神父の分厚い掌の中でそれはビクリと脈動し、先端から、快楽の先触れの蜜をとろりと零していた。
もっとも、ルゴシュにそのまま果てを見せてやるつもりは毛頭ない。少し高めただけの屹立から手を離すと、ゲオルギウスは彼の細い身体に手を掛け、易々と位置を入れ替えてしまった。いかに常人とは比較にもならない膂力を持つ吸血真祖でも、こうなれば逆らえないことはよく知っている。ルゴシュの痩躯を抱え上げ、うつ伏せにして腰を高く引き上げる、そんな屈辱的な姿勢に、シーツに埋まったルゴシュの喉が高く引き攣れた音を響かせたのを、若い神父は決して聞き逃さなかった。
「お前は、俺の眠りの祈りの後に勝手に割り込んで、安眠を乱したな?」
肉付きの薄い臀の合間には、未だ慎ましく蕾んだままの快楽の淵が息づいている。寝台の脇の卓の上に置いてある、整髪に使う油を指先で掬い上げ、確かにその先の快楽を知っている窄まりの上にぬるりと塗り付けてやった。
「──そして、お前は司祭に対してどこまでもふしだらな、淫魔のような真似をした。今から俺は、その身に罰を与える。」
「う…ぁッ──、っくぅ、…、──罰…だって…?」
触れられただけでひくん、と疼きを見せる快楽の淵に、そのまま油の滑りを借りてツプリと指先だけを沈み込ませた。肌よりは余程熱いと感じる粘膜の中をくちくちと浅く荒らし、ゲオルギウスは、双眸を細めてニヤリと酷薄な笑みを浮かべる。
「悪さをした子供は、尻を鞭打たれると決まってるんだ。無暗に引き裂かれたくなければ力を抜いていろよ…?今から、お前に鞭をくれてやるから。」
神の定めぬ不自然な媾合を行う前には、隘路を開いて路を付けてやらなければ双方に苦痛をもたらすだけだ。音を上げるまで指で責め抜いてルゴシュを鳴き喚かせることもできたが、それでは身勝手に夜の安息を乱された腹の虫が収まらない。今から押し入る窪みの上と、ごく浅いところに潤滑のための油を塗し、残りは、最早言い訳も立たないほどに下腹で熱く怒張した自らの雄の器官の切っ先に丹念に塗り付ける。ルゴシュの腰を引き上げたまま、硬い肉槍の先で固い縁の真上を軽くつつくと、隘路にそのまま侵入しようとしているゲオルギウスの思惑に気付いたルゴシュの身体が小さく強張り、歪んだ翠の瞳が驚愕を湛えて肩越しに後ろを振り返ってくる。
怯える仕草も、快楽を貪ろうとひくつく窄みも、何もかもが蠱惑となってゲオルギウスの若く凶暴な衝動に拍車を掛ける。ルゴシュが許しを請う言葉を発する間もなく、ひたりと標的を捉えて宛がった肉の槍の先端を押し付け、狭いそこをずぷん、と無理矢理に開きに掛かる。
「イっ──、ぐ、ぅ──ァ、──アァ──あっ──!」
「…息を吐け、俺がキツい。──お前は、引き裂かれたとしてもすぐに治るだろうが。」
ミシミシと軋むような錯覚と共に、凶悪な質量となったゲオルギウスの杭が柔い隘路を掻き分けて穿ち込まれていく。当然、一思いに刺し貫くことは出来なかった。苦しげに張り上がる声も、白くなるほどシーツを握り締めた指先も、無理矢理に身体を繋ぐという行為が苦痛でしかないことをよく物語っている。それでも、ゲオルギウスはそこを侵す手を止めなかった。ぎゅうぎゅうと収縮して異物を排斥しようとする内壁に逆らい、額に汗を浮かべながらも、掴み上げた薄い臀を引き上げるようにして繋がりを深めていく。
やがて、うつ伏して身悶えていたルゴシュの喉から、ひゅう、という笛のような呼吸が響いた。狭窄した身体の深みに、灼熱のような雄の器官を全て飲み込まされ、彼の華奢な全身は玉のような汗を零してがたがたと震えていた。
無理のある挿入の圧迫に藻掻き苦しむルゴシュの様子は、若い神父の身体の芯に灯った粗暴な炎に、これでもかとばかりに油を注いでくれる。赤い血を流すことなく巨きな雄の器官を受け止めた深みの淵は、それでもひくつきながら先の快楽を待ち受けているようだった。
大きく腰を引き、乾いた肌音を立てながらズン、と強く肉槍を穿ち込む。びくびくと背筋を撓らせながら言葉にならない悲鳴を上げるルゴシュの腰を掴み上げ、深々と刺し穿つような律動を送り始めた。
「ひぁ──ッ、…ゲオル…ギィ、──っや、それ、──深──ッ──!」
「…く、…は、──鞭打ちが苦しくなければ、罰にならんだろう…。ほら、もっと賤しく突き出せ、力一杯打ち据えてやる──。」
ばつばつと肌の触れ合う音を響かせる深く激しい抽挿の中で、狭いばかりだった肉の隧道は次第に解れ、ゲオルギウス自身が零した先走りの体液を巻き込んで、次第に滑らかになっていく。切っ先の際まで引き抜いた怒張を、次の瞬間には残酷な一突きと共に最奥まで穿ち込んだ。
体内に息衝く快楽の拠点を情け容赦なく押し潰して抜き差しされる灼熱の杭は、今や、ルゴシュにとって狂おしいばかりの快美感をもたらすモノでしかなくなっている。突き入れる度にきゅうっと引き締まってヒクヒクと疼く肉洞は、遥かに体格の大きな男の一部を食い締めて離さなかった。
引き上げられた腰から、窪んだ脊柱に添って、透明な汗の玉がコロコロと転がり落ちていくのが見える。ゲオルギウス自身の吐息も熱く、全身に汗を纏いながら、痩せた尻に腰を叩き付ける勢いでずぷずぷとそこを犯し続けた。
「──ン…ぁ、はッ…、も──駄目──っ…ぁ、何か…来る…っ──!」
「…はははッ──!これは罰なのに、そんなに感じてるのか…?…いやらしい奴だな。なら、こっちだけで達って見せろよ──!」
突っ伏したルゴシュの四肢に、雷に撃たれたかのような痙攣が伝い始めた。最早快楽を享受するための器官でしかなくなったルゴシュの体内は、ざわざわとさざめきながら与えられる罰の楔を歓ぶ。そして、ガツ、と一際強い突き上げをくれてやった瞬間、柔く厚い肉の隘路はぎゅうっと収斂しながら末期の痙攣に戦慄いた。雄を飲み込み包み込む、波のような蠕動のあまりの甘美さに、ゲオルギウスは息を止めて顔を歪める。
「は…ぁ──アあぁ…ッ──!」
「──っ、ふ…。」
薄荷の青い茎を折り取ったような、不死者の吐精の匂いが鼻を擽った。淫らに杭に食らい付く肉壁の末期の痙攣に引き摺られながら、掻き分けて押し入った最も深い場所に、ドクドクと脈打ちながら若い精をたっぷりと注ぎ込んでやる。彼にとっては、鮮血と等しく食餌になり得るという人間の精気を、尚も身体を揺さぶって一滴残らず吐き出し、ゲオルギウスは暫し、体内で弾む心臓を抱えて肩で大きな息をしていた。
「夜中に人のシーツを台無しにして、余計な手間を掛けさせやがって…。」
「それは謝るけどさ…。そもそも、キミがやったことでもあるぞ──。」
夜更けに寝具を変える羽目になり、不機嫌も露わなゲオルギウスを尻目に、心地好い疲弊と共に満足を覚えたのであろうルゴシュは、未だ脱ぎ捨てた服に袖を通すこともなく背を向けて横たわるゲオルギウスの横に添うように寝台の縁に座っている。朝の聖課のため、一番鶏が鳴く頃には何をやっても目覚めなければならないというのに、ルゴシュには武装司祭であるゲオルギウスの都合なぞ一向に関係ないらしい。
激しい情交で汗を孕んだ金色の髪を、細い指先がふわりと撫でる。それを払い除けることさえ今は煩わしかった。ゆっくりと髪を梳る動きは、彼が神と精霊の敵であるというのに、どこか懐かしく心地よく感じられる。
「じゃあ、お詫びに子守唄を歌ってあげよう。知っての通り、私の歌は、高い。──キミが眠りに落ちたら、私はここを出ていくよ。」
「──そうかよ。」
「可愛いゲオルギィ。…おやすみ。」
止めることは出来ない。理由もない。そして、その喉が、ゆったりとした古代の旋律を歌い上げる。銀色の糸のような、耳の奥底に響く、不思議な魅惑を孕んだ歌声。ゲオルギウスには意味の解らない、異国の旧い言葉で歌い上げられる子守唄を、彼が最後に歌ったのはいつなのだろうか。
人の生き血を啜り、吸血鬼に変質させるという不死鬼は、確かに神と精霊の敵であり、人間にとっての脅威である。しかし、千年以上を生きるという彼は一体どこから来て、そしてどこへ行くというのだろう。
こんな想いをどうすべきか、いくら神に問うても、若い神父にはまだわからない。
不死者の魅了の歌の中で眠りに落ちて行きながら、ゲオルギウスは漠然と考える。
『己は、そして彼は、一体どこへ行くのだろうか。』
─ FIN ─
蝋燭の揺れる頼りない灯りの中、寝台の上で向かい合わせに座った年嵩の男は、彼よりもだいぶ上背の高い若い神父の短い髪に指を滑らせながら、歌うように呟く。
若い神父が一人で暮らす質素な司祭館の寝室で、互いに一糸纏わぬ裸身を曝け出し、神父は、自分より二回りは華奢で小柄な年上の男の為すがままになっていた。いや、正確には、仕方なしにそうさせている、と言った方が正しい。
「キミの目玉は、深い碧玉の色。鍾乳洞の奥底の湖だって、そんなに深い蒼じゃない──。」
「もう止せよ、ルゴシュ。こっちは、お前の気紛れに付き合っている時間はないんだ。」
「あ、そう?」
「お前な…。」
髪を撫でていた白い指が、若者の頬を包んで眦を指先でなぞる。前髪を額の中央で両側に分けた、耳を隠す程の短い銀髪に、眉尻と目尻が下がった翡翠のように煌めく美しい眼を持つ男は、たとえ至近距離から眺める若者の凛々しい眉間に深い皺が寄っていようが、一向にお構いなしだった。
それは、とても心地好い月の晩だった。空気は熱くも寒くもなく、夜空はどこまでも晴れ渡っている。
こんなに綺麗な晩だから、と、理由にもならない理由で、吸血鬼や食人鬼にとっては不可侵の聖域である小さな村の教会の中に黒い霧となって忍び込んできた男は、年の頃を見れば四十路後半から五十路の頭ほどであるように見える。額の中央で分けた、さらりと揺れる見事な短い銀髪。鮮やかな翠色をした双眸、そして、人間のそれとは明らかに異なる僅かに先の尖った耳朶。
弱冠二十三歳の『武装司祭』であるゲオルギウスとは圧倒的に相容れない筈の、強大な力で千年以上も人間を翻弄し続けてきた吸血真祖・不死鬼である辺境伯ラ・ルゴシュは、今、ゲオルギウスの目の前に白く華奢な裸体を惜しげもなく晒し、寝台に足を投げ出して座る若者の両腿を跨いで、その顔をまじまじと見つめながら悠然と歌のようなものを紡ぎ上げているのだ。
人間に害を為す人ならぬモノ共に対抗するため、神と精霊の聖名の許に武器を取る神職、武装司祭であるゲオルギウスと、その最大にして最強の仇敵である不死伯ルゴシュ。決して交わらぬはずの二つの運命が何故、奇妙な形で交差することになったのか、神の思し召しはわからぬものだ。ゲオルギウスはルゴシュを殺せず、ルゴシュはゲオルギウスを殺さない。まして、首筋に真珠色の牙を突き立てて血を啜ろうとも考えておらず、代償として、彼はゲオルギウスに人間の『精気』を求めた。
晩の祈りを終えて寝床に入ったばかりのゲオルギウスの臙脂色の武装神服は壁に掛けられていたし、銀のロザリオは寝台の支柱に下がっている。そして、ルゴシュが纏っていた古風な貴族の装束は、靴と共に脱ぎ散らかされて床の上に散らばっていた。
「風情がないな、キミは。こうやって目合う前には、少しの色気でも出しておくものだぞ?」
「知るか。司祭は妻帯できない。まして男が男と寝るのは大罪だし、寝たいとも思わない。馬に飼い葉をやる時に甘い言葉は必要か?そういうことだ。」
どこまでも素っ気なく顔を逸らすゲオルギウスを、ルゴシュは不満げに唇を曲げて見詰めている。この手で心臓に杭を打ち込んでやりたい宿疾であるというのに、それができないジレンマを抱えながら、重い溜息と共にルゴシュの小さく華奢で軽い白皙の体躯を寝台の上に組み敷き、ゆっくりと重みを預けていった。
数百年前、異教徒の騎馬隊をたった一人で砂漠の彼方に追いやったという功績が認められて爵位を得た不死者、ラ・ルゴシュ伯爵は、一体どこから人間を遥かに超えた力を絞り出すことができるのか不思議に思うほど小柄な男であった。それこそ、人間の男の中でも背の高い部類に入る、鍛え抜かれた武装司祭のゲオルギウスの肉体の下にすっぽり収まるほどに、組み伏せた身体は痩せて小さい。
五十前後の壮齢の男の見た目をしていながら、あらゆる負傷を瞬く間に完治させる彼の白い肌には傷ひとつなく、雪花石膏で作った彫像のように滑らかだった。よしんば、翡翠色の睛を持つ彼が、人間離れした麗しい風貌をしていなかったら、ゲオルギウスは罪悪感を押さえ込んで黒い肉欲の情念を燃やすことが叶わなかったかもしれない。
ツツ、と雀が鳴くように舌を鳴らせば、物慣れた唇がゲオルギウスの唇に重なってくる。ただ急いて貪るだけの若い手管とは違い、ルゴシュのくちづけは実に巧みで、両掌の間に若い男の頬を柔らかく捕らえながら、顎を傾けて幾度も啄むように唇を落としてきた。初めは抵抗を見せていた口付けを人間の男に許し、濡れた舌同士を絡めて甘噛みする。禁忌であり、生理的嫌悪を抱くはずの行いを好んで仕掛けようという気になったのは、不死者に対する歪んだ支配欲の為せることなのかもしれない。
「──ッ、ふ、…っ…。」
組み敷いたルゴシュの体温は低く、ひんやりとした涼しさを覚えるほど。そして、その肉体からは、人間の男が発する不快な汗の饐えた匂いは一切漂ってこない。彼の肌がほんのりと熱し、白皙が薄桃色に染まるほど高まると、その身体からは熟れ切って地に落ちる寸前の果物のような、或いは腐肉の甘さだけを凝縮したような、得も言われぬ誘引の薫香が漂うのだ。
「まるで淫魔だな…。息をしているだけで男を誘うのか、不死鬼というヤツは。」
ピチャリと音を立てて濡れた唾液の糸を舐め取り、喉の高みを揺らがせてゲオルギウスはクツクツと嗤う。寝台の上に広がる短く撓やかな銀色の髪の中に鼻先を埋めて彼の媚香を吸い込み、首筋に、胸元にと身体を浮かせながら順繰りに唇を落としていった。柔く白い肌の上をきつく吸い付けて、幾つも赤黒い痣のような痕跡を刻み込む。所詮はすぐに消える痕であっても、ルゴシュの身体に己の痕を刻むのは酷く心地が良かった。
「ひ──ぅ、…う…ぅん…っ…!」
そうして、鴇色をした胸の頂点のひとつを口に含むと、きつい程にちゅうっと吸い上げる。びくん、と竦み上がり、胸を反らせる彼の所作は、少々手荒な刺激を待ち焦がれているようにも思えた。咥内でどんどん張り詰めてぷつりと固くなってゆく柘榴粒のような痼りを吸い上げ、甘く歯を当て、ながらにもう片方の胸の頂点を摘まみ上げて半ば乱暴に捏ね回す。気付けば、震える右手の指がゲオルギウスの後頭部に掛かって金色の髪を緩やかに掴み締め、もう片腕は傷だらけの逞しい背肌を抱きながら小刻みに戦慄いていた。呼吸だけで高鳴る喉笛を反らしながら身悶えする様子は、ルゴシュがそれだけで感じ切っていることをありありと伝えてくれる。
時折、指と唇の位置を変えながら、固くしこった胸の先を責め続けてやった。冷ややかだった肌の温度が程良く熱し、しっとりと汗を帯びてくる。その汗すら、ゲオルギウスに不快をもたらさない。むしろ、この男を鳴き喘がせているのは自分自身なのだという昏い嗜虐が背筋をゾクゾクと伝い、雄としての粗暴な欲求を掻き立ててくれる。
どのくらいそうやってルゴシュを嬲り続けていただろう、ついに、彼が小刻みに腰を突き上げながら、ゲオルギウスの髪を軽く掴んで小さく叫んだ。
「──っ、いつまで…するんだよ、ギィ!乳飲み子じゃあるまいし──!」
ゲオルギウスの短い愛称を口にして、目頭を潤ませる男の下腹にどんな感覚が蟠っているのかは、身体を重ねている以上ゲオルギウスにも露骨に伝わってくる。胸先への刺激だけで存分に劣情を集めたのであろう、男の直接的な快楽を示す部分は、ゲオルギウスの下腹に擦れて固く昂っていた。
「まだここには触ってもいないぞ?淫らな奴。腰を振って、欲しがって──。」
「ヒ──ぁ、んッ、…それ…は──!」
嘲笑しながら体を起こし、ルゴシュの下腹部ですっかり屹立したものを大きな掌に包み込んで上下に扱いてやる。兵士よりも強靭な武装神父の分厚い掌の中でそれはビクリと脈動し、先端から、快楽の先触れの蜜をとろりと零していた。
もっとも、ルゴシュにそのまま果てを見せてやるつもりは毛頭ない。少し高めただけの屹立から手を離すと、ゲオルギウスは彼の細い身体に手を掛け、易々と位置を入れ替えてしまった。いかに常人とは比較にもならない膂力を持つ吸血真祖でも、こうなれば逆らえないことはよく知っている。ルゴシュの痩躯を抱え上げ、うつ伏せにして腰を高く引き上げる、そんな屈辱的な姿勢に、シーツに埋まったルゴシュの喉が高く引き攣れた音を響かせたのを、若い神父は決して聞き逃さなかった。
「お前は、俺の眠りの祈りの後に勝手に割り込んで、安眠を乱したな?」
肉付きの薄い臀の合間には、未だ慎ましく蕾んだままの快楽の淵が息づいている。寝台の脇の卓の上に置いてある、整髪に使う油を指先で掬い上げ、確かにその先の快楽を知っている窄まりの上にぬるりと塗り付けてやった。
「──そして、お前は司祭に対してどこまでもふしだらな、淫魔のような真似をした。今から俺は、その身に罰を与える。」
「う…ぁッ──、っくぅ、…、──罰…だって…?」
触れられただけでひくん、と疼きを見せる快楽の淵に、そのまま油の滑りを借りてツプリと指先だけを沈み込ませた。肌よりは余程熱いと感じる粘膜の中をくちくちと浅く荒らし、ゲオルギウスは、双眸を細めてニヤリと酷薄な笑みを浮かべる。
「悪さをした子供は、尻を鞭打たれると決まってるんだ。無暗に引き裂かれたくなければ力を抜いていろよ…?今から、お前に鞭をくれてやるから。」
神の定めぬ不自然な媾合を行う前には、隘路を開いて路を付けてやらなければ双方に苦痛をもたらすだけだ。音を上げるまで指で責め抜いてルゴシュを鳴き喚かせることもできたが、それでは身勝手に夜の安息を乱された腹の虫が収まらない。今から押し入る窪みの上と、ごく浅いところに潤滑のための油を塗し、残りは、最早言い訳も立たないほどに下腹で熱く怒張した自らの雄の器官の切っ先に丹念に塗り付ける。ルゴシュの腰を引き上げたまま、硬い肉槍の先で固い縁の真上を軽くつつくと、隘路にそのまま侵入しようとしているゲオルギウスの思惑に気付いたルゴシュの身体が小さく強張り、歪んだ翠の瞳が驚愕を湛えて肩越しに後ろを振り返ってくる。
怯える仕草も、快楽を貪ろうとひくつく窄みも、何もかもが蠱惑となってゲオルギウスの若く凶暴な衝動に拍車を掛ける。ルゴシュが許しを請う言葉を発する間もなく、ひたりと標的を捉えて宛がった肉の槍の先端を押し付け、狭いそこをずぷん、と無理矢理に開きに掛かる。
「イっ──、ぐ、ぅ──ァ、──アァ──あっ──!」
「…息を吐け、俺がキツい。──お前は、引き裂かれたとしてもすぐに治るだろうが。」
ミシミシと軋むような錯覚と共に、凶悪な質量となったゲオルギウスの杭が柔い隘路を掻き分けて穿ち込まれていく。当然、一思いに刺し貫くことは出来なかった。苦しげに張り上がる声も、白くなるほどシーツを握り締めた指先も、無理矢理に身体を繋ぐという行為が苦痛でしかないことをよく物語っている。それでも、ゲオルギウスはそこを侵す手を止めなかった。ぎゅうぎゅうと収縮して異物を排斥しようとする内壁に逆らい、額に汗を浮かべながらも、掴み上げた薄い臀を引き上げるようにして繋がりを深めていく。
やがて、うつ伏して身悶えていたルゴシュの喉から、ひゅう、という笛のような呼吸が響いた。狭窄した身体の深みに、灼熱のような雄の器官を全て飲み込まされ、彼の華奢な全身は玉のような汗を零してがたがたと震えていた。
無理のある挿入の圧迫に藻掻き苦しむルゴシュの様子は、若い神父の身体の芯に灯った粗暴な炎に、これでもかとばかりに油を注いでくれる。赤い血を流すことなく巨きな雄の器官を受け止めた深みの淵は、それでもひくつきながら先の快楽を待ち受けているようだった。
大きく腰を引き、乾いた肌音を立てながらズン、と強く肉槍を穿ち込む。びくびくと背筋を撓らせながら言葉にならない悲鳴を上げるルゴシュの腰を掴み上げ、深々と刺し穿つような律動を送り始めた。
「ひぁ──ッ、…ゲオル…ギィ、──っや、それ、──深──ッ──!」
「…く、…は、──鞭打ちが苦しくなければ、罰にならんだろう…。ほら、もっと賤しく突き出せ、力一杯打ち据えてやる──。」
ばつばつと肌の触れ合う音を響かせる深く激しい抽挿の中で、狭いばかりだった肉の隧道は次第に解れ、ゲオルギウス自身が零した先走りの体液を巻き込んで、次第に滑らかになっていく。切っ先の際まで引き抜いた怒張を、次の瞬間には残酷な一突きと共に最奥まで穿ち込んだ。
体内に息衝く快楽の拠点を情け容赦なく押し潰して抜き差しされる灼熱の杭は、今や、ルゴシュにとって狂おしいばかりの快美感をもたらすモノでしかなくなっている。突き入れる度にきゅうっと引き締まってヒクヒクと疼く肉洞は、遥かに体格の大きな男の一部を食い締めて離さなかった。
引き上げられた腰から、窪んだ脊柱に添って、透明な汗の玉がコロコロと転がり落ちていくのが見える。ゲオルギウス自身の吐息も熱く、全身に汗を纏いながら、痩せた尻に腰を叩き付ける勢いでずぷずぷとそこを犯し続けた。
「──ン…ぁ、はッ…、も──駄目──っ…ぁ、何か…来る…っ──!」
「…はははッ──!これは罰なのに、そんなに感じてるのか…?…いやらしい奴だな。なら、こっちだけで達って見せろよ──!」
突っ伏したルゴシュの四肢に、雷に撃たれたかのような痙攣が伝い始めた。最早快楽を享受するための器官でしかなくなったルゴシュの体内は、ざわざわとさざめきながら与えられる罰の楔を歓ぶ。そして、ガツ、と一際強い突き上げをくれてやった瞬間、柔く厚い肉の隘路はぎゅうっと収斂しながら末期の痙攣に戦慄いた。雄を飲み込み包み込む、波のような蠕動のあまりの甘美さに、ゲオルギウスは息を止めて顔を歪める。
「は…ぁ──アあぁ…ッ──!」
「──っ、ふ…。」
薄荷の青い茎を折り取ったような、不死者の吐精の匂いが鼻を擽った。淫らに杭に食らい付く肉壁の末期の痙攣に引き摺られながら、掻き分けて押し入った最も深い場所に、ドクドクと脈打ちながら若い精をたっぷりと注ぎ込んでやる。彼にとっては、鮮血と等しく食餌になり得るという人間の精気を、尚も身体を揺さぶって一滴残らず吐き出し、ゲオルギウスは暫し、体内で弾む心臓を抱えて肩で大きな息をしていた。
「夜中に人のシーツを台無しにして、余計な手間を掛けさせやがって…。」
「それは謝るけどさ…。そもそも、キミがやったことでもあるぞ──。」
夜更けに寝具を変える羽目になり、不機嫌も露わなゲオルギウスを尻目に、心地好い疲弊と共に満足を覚えたのであろうルゴシュは、未だ脱ぎ捨てた服に袖を通すこともなく背を向けて横たわるゲオルギウスの横に添うように寝台の縁に座っている。朝の聖課のため、一番鶏が鳴く頃には何をやっても目覚めなければならないというのに、ルゴシュには武装司祭であるゲオルギウスの都合なぞ一向に関係ないらしい。
激しい情交で汗を孕んだ金色の髪を、細い指先がふわりと撫でる。それを払い除けることさえ今は煩わしかった。ゆっくりと髪を梳る動きは、彼が神と精霊の敵であるというのに、どこか懐かしく心地よく感じられる。
「じゃあ、お詫びに子守唄を歌ってあげよう。知っての通り、私の歌は、高い。──キミが眠りに落ちたら、私はここを出ていくよ。」
「──そうかよ。」
「可愛いゲオルギィ。…おやすみ。」
止めることは出来ない。理由もない。そして、その喉が、ゆったりとした古代の旋律を歌い上げる。銀色の糸のような、耳の奥底に響く、不思議な魅惑を孕んだ歌声。ゲオルギウスには意味の解らない、異国の旧い言葉で歌い上げられる子守唄を、彼が最後に歌ったのはいつなのだろうか。
人の生き血を啜り、吸血鬼に変質させるという不死鬼は、確かに神と精霊の敵であり、人間にとっての脅威である。しかし、千年以上を生きるという彼は一体どこから来て、そしてどこへ行くというのだろう。
こんな想いをどうすべきか、いくら神に問うても、若い神父にはまだわからない。
不死者の魅了の歌の中で眠りに落ちて行きながら、ゲオルギウスは漠然と考える。
『己は、そして彼は、一体どこへ行くのだろうか。』
─ FIN ─
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる