マルコシウスと滋ヶ崎

にっきょ

文字の大きさ
上 下
22 / 39

滋ヶ崎、苛立つ

しおりを挟む
 身体を繋げたはいいが、それきり滋ヶ崎の膝の上で動けなくなってしまったマルコシウスのシャツの中に手を入れる。手探りで小さな突起を摘まむと、「やっ」と小さい声が聞こえてきゅうと中が締まる。抱いた体が震えて、「あぁん」と甘い声が聞こえた。

「あっ、待っ、やす……んんっ」

 家に帰ってきてから初めて言葉らしいものを発したマルコシウスの唇をまた塞ぐ。硬く尖った先端を指先で押しつぶすように捏ね、指と指の間に挟んで捻り上げる。

「あ……ふ……んぁっ」

 刺激するたびに肩がわななき、中にいる滋ヶ崎に内壁が絡みつく。離れた唇の間から赤い舌がちらりと覗き、二人の唾液が口の端を伝うのが見えた。ねだるような動きに堪らず滋ヶ崎が膝の上に乗った身体を抱き寄せると、マルコシウスはゆっくりと腰を上下に動かし始めた。

「んっ……ああっ……」

 甘い声とともに、濡れた小さな音が響く。敏感な部分がこすれ合い、熱く包まれる感触に滋ヶ崎も官能の呻きを漏らした。きつく締める内壁に、マルコシウスの切羽詰まった様子が伝わってくるような気がしていじらしい。こんな素性もよく知らないような相手に、しかも優しくされたわけでもないのに、後先考えられなくなるほど必死になって媚びを売るなんて、完全にどうかしている。
 そしてそいつに首輪をつけ、性欲に流されて生で挿入する自分も、正気ではない。

「あ、あっ、あっ、やすひろっ、きもち、いいれす」
「う、んっ」

 滋ヶ崎の肩に回された手がシャツを掴み、お互いを抱きしめ合う。最初は控えめだったマルコシウスの腰の動きが、徐々に激しく、そしてリズミカルになっていく。動く度に張り付くように引っかかっていた内部はいつの間にか潤いに満ち、互いが滑らかに擦れあうようになっていた。腰を動かす度に、滋ヶ崎の腹にマルコシウスの屹立がぶつかり、シャツの端を押し上げた。二人の間を隔てるものは何もなく、ただ熱い一つの塊となって快楽を貪る。

「ふぁ、あっ」
「あ、馬鹿っ……」

 不意にマルコシウスがひときわ大きな声をあげて身体を反らした。全身を震わせ、滋ヶ崎との間に熱い粘液を迸らせる。息を詰めて強く屹立を締め付けたマルコシウスは、それから糸が切れたようにくたりと滋ヶ崎の右肩にもたれかかった。荒く、苦しそうな息が滋ヶ崎の耳に届いた。

「や、やすひろ、い、いっちゃい、ました……」
「オナホのくせに先にいくやつがあるか、出していいなんて言ってねえぞクソが」
「だって……」

 いつもいつもこいつは。息も絶え絶えに報告してくるマルコシウスに滋ヶ崎は苛立ちを感じた。快感を邪魔されたからなのか、それとも別の要因なのかは自分でも分からない。ただその破壊的な衝動に従って、自分の上に乗ったマルコシウスの足の下に手を入れる。そのまま腰を持ち上げると、「やめっ」と小さく悲鳴が聞こえた。

「ちょ、ちょっと待ってください、お願いっ」
「いった瞬間ペラペラ喋りやがってうるせえんだよ、俺はまだなんだから黙って喘いでろ」

 持ち上げた腰を落とすのに合わせ、奥に打ち付けるように腰を振る。先程よりも切なげな声をあげてマルコシウスは滋ヶ崎に縋りついた。

「嫌とか言いつつすげえ締めてくるな。気持ちいいくせに」
「や、らめ、らめれす……もう」
「中に欲しいんだろ? 出してやるから待ってろ」
「あ、あ、あ……」

 ぱちゅぱちゅといやらしい音を立て、奥を穿つ。マルコシウスの中を突く度に内壁が吸い付くようにまとわりつき、腰の奥で熱が渦巻く。

「そ、んな、奥、ひうっ」

 持ち上げた腰を下ろすたびに、膝の上のマルコシウス、その奥深くに滋ヶ崎が刺さる。こつこつと最奥に当たるたびに可愛らしい声をあげるマルコシウスは、もう滋ヶ崎に身を預けることしかできないようだ。
 腰の奥でくすぶっていた欲望が大きくなる。それに合わせ、下からも腰を突き上げた。

「ほら、出るぞっ……!」
「やっ……」

 ぞくぞくと背中を快感が這い上るのに合わせ、マルコシウスの最奥に子種をぶちまける。最後の一滴まで吐き出してから、深呼吸をして抱えていた異界人を自分の膝の上に下ろした。必死だったせいで気づいていなかった、尻の下の硬さや腕のだるさが途端に知覚されてくる。

「……どうだ、落ち着いたか?」

 ぺたりと自分に抱きついた金髪を撫でると、弱々しい声が聞こえた。邪魔なので降りてほしいと思ったが、どうもしばらくは動きそうにない。まあいいか、と滋ヶ崎は大きく上下する背中を抱きしめた。いつの間に陽が暮れたのか、あたりは紫色に染まってきている。
 冷えた汗が体温を奪っていく。ふるり、とまたマルコシウスが体を震わせ、滋ヶ崎の腕の中で体を丸めた。

「康弘……」
「なに」
「…………私、のこと……す、捨てないで……ください……」

 弱々しく震える声に、滋ヶ崎は軽く笑った。

「別に捨てようとはしてねえだろ。譲渡しようとしただけだ」
「……」
「何だお前、そんなに俺に飼われたいのか?」
「……ん」

 肩口に顔を埋めたまま肯定とも否定ともつかぬ声を上げたマルコシウスは、納得していない雰囲気を纏わせながら滋ヶ崎のシャツの裾を握り込んだ。

「アイツの所の方がいい暮らしさせてもらえると思うんだけどなあ」
「……どうして、それが分かるんですか」
「話したから」
「…………」
「信じてねえな? まあいいけど」

 はは、と滋ヶ崎は声を上げ、マルコシウスの首輪を軽く引いた。

「ほら、そろそろ立てるか? 風呂入ろうぜ、このままじゃ風邪引く」
「んっ……」

 異論はないのか、滋ヶ崎の肩に手をかけたマルコシウスがよろよろと立ち上がる。入ったままだった滋ヶ崎のものがずるりと抜け、それを追うようにマルコシウスの脚を液体が伝う。あ、と内股になったマルコシウスが股間を押さえた。滋ヶ崎の視線に気づいたのか、情念のこもった、泣きそうな顔で睨みつけてくる。

「んだよ、お前から乗ってきたんだろが。文句あんなら言ってみろ」
「んぬぅ」

 柔らかい頬を軽くつまむと、むくれた顔をしたマルコシウスは滋ヶ崎に背を向けた。小股でふらふらと廊下を歩くマルコシウスはまだ下しか脱いでおらず、長い裾から尻が見え隠れしている。
 それを見た滋ヶ崎は、風呂をためているあいだにもう一発やるのも悪くないな、などと思い始めていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...