マルコシウスと滋ヶ崎

にっきょ

文字の大きさ
上 下
12 / 39

マルコシウス、目が覚める

しおりを挟む
 なんだか寒いな、と思った滋ヶ崎が目を覚ますと、横に寝ていたはずのマルコシウスが掛け布団を一人で被り、部屋の隅から滋ヶ崎を睨みつけていた。ここ1週間ほどの熱に浮かされていたような表情と明らかに違うその様子を見て、発情期が終わったことを滋ヶ崎は直感的に理解した。

「……おい、なにしてんだ? 返せよ」
「ぶ、っ……無礼者っ!」

 全裸のままのそのそと起き上がって掛け布団を引っ張ると、中から手が伸びてきた。ぺちんと威力のない平手をかまされる。

「ひ、人がヒートになっているのをいいことに、す、好き勝手して……! この野蛮人が! 恥を知りなさい!」
「はあ~? 『入れて』って言ってきたのそっちじゃんかよー。ちゃんとゴムも付けてやっただろうが」

 目が覚めたら勝手にマルコシウスに跨られていた時もあるので、あまり自信はないが。

「仕方ないでしょう!? そういう時期なんですから! そこにつけこんで来るなんて最低です!」
「そんなん知らねえよ。最初に説明しとけや」
「……っ、し、知らなくても、そんなっ……普通に考えたら……しないものでしょう!? 色欲に支配された汚らわしい動物め!」
「お前の世界じゃどうか知らねえけどな、この世界じゃ穴に『入れて』って言われたら男は普通ぶっこむもんなの、覚えとけよ。大体色欲に支配されてたのそっちだろ、何回いかせても満足しねえしセックスばっかでご飯すらロクに食べようとしないし最終的に『おねがい、康弘の赤ちゃんが欲しいですぅ』って」
「う、うるさい! だからそれは仕方ないって言ってんでしょう!?」

 また滋ヶ崎の頬を叩こうとした手が振り下ろされる前に、滋ヶ崎はその細い手首をつかんだ。びく、と布団の中でブルーグレーの目が揺れるのが見えた。

「うるせーのはてめえだ、クソ穴。『抱いて』っていうから抱いてやったのにさっきっからぎゃんぎゃんと……」

 滋ヶ崎が額をつけて凄むと、マルコシウスは瞳を潤ませながら気丈にも睨み返してきた。だが、羞恥に頬を赤らめた状態ではかえって逆効果にしかならない。掛け布団をはいだ滋ヶ崎は、その上にやはり全裸のマルコシウスを押し倒した。

「ほら、すぐそうやって……」
「俺、このまま入れてもいいんだけど」

 華奢な肩を押さえ、治まらなくなってきた朝立ちで滑らかな太ももの皮膚をこする。自分の下で強張る表情が、何とも愉快だ。

「Ωとやらが本当に妊娠するか試してみようか」

 や、と小さな吐息が聞こえたが、無視して滋ヶ崎は自分の屹立をマルコシウスの股間にこすりつける。そこに生えていた控えめな男根が存在を誇示するように膨らみ、頭をもたげた。硬くなったもの同士をこすり合わせると、あっという間にマルコシウスの体から力が抜けていく。

「や、だぁ……お願いっ……」

 唇から漏れる拒絶の声は、その先を誘う甘く濡れたものに変わっていた。

「ホントちょろいなお前」

 薄く笑った滋ヶ崎は一度立ち上がり、枕元に置いてあった小箱から四角く包装されたコンドームを取り出した。掛け布団の上に転がり、頬を紅潮させた異世界人に見せつけるようにしながら装着する。

「ほら、ケツ出せや」

 滋ヶ崎の先走りがついた太ももを軽く叩くと、マルコシウスはおとなしく白い尻を突き出してうつ伏せになった。足の間に入った滋ヶ崎は柔らかく肉付きの良い尻に両手をかけて割り開き、穴に自分の先端を当てた。
 容赦なく、一気に奥までぶち込んだ。この1週間の経験上、多少乱暴に扱った方がマルコシウスが喜ぶことは分かっていたし、「入れっぱなし」に近い状態だったのでもうぐずぐずなのだ。

「あっ、あ、ああっ……」

 濡れた音を立てて滋ヶ崎が腰を振るたび、マルコシウスが下で啼く。

「ほら、もっと締めろよ。一人で気持ちよくなってんじゃねえぞ」

 酷使された穴はすっかり緩くなってしまっており、挿入はしやすいが気持ちよさとしてはいまいちだ。覆いかぶさるようにして体の下に手を入れた滋ヶ崎は、硬く張った乳首をつまみ、細い首筋に唇を当てた。

「ひゃん!」

 のけぞるように頭をもたげたマルコシウスの首を吸ってやると、途端にきゅっと中が強く締まる。どうやらこれが「正解」のようだな、と滋ヶ崎は判断し、何回か場所を変えて首を吸いながら腰を振った。
 やがてマルコシウスの声がさらに上ずった。滋ヶ崎を探して布団の上を彷徨う細い手を握ってやると、滋ヶ崎を受け入れていた男は全身を震わせた。

「あっ、待てこらっ、馬鹿、勝手に行くなって!」

 叫んだ滋ヶ崎も、一拍遅れてやってきた強烈な締め付けに呻き、精を薄いゴムの中に吐き出したのだった。



 祝がやってきたのは、ちょうど滋ヶ崎が溜まっている仕事を片付けに行こうとしたときだった。

「どう~? そろそろ赤ちゃんできた~?」
「だから、カブトムシじゃねえんだっつーの」

 まずは近所の婆さんの家の草むしりからだ。長袖長ズボンに麦わら帽子という出で立ちの滋ヶ崎の後ろを覗き、「あれ、マルコちゃんは?」と祝は首を傾げた。

「キレて2階の部屋に立てこもってる」
「なんで?」
「知らねえよ」

 祝に説明する気はない。ちょうどよかった、と滋ヶ崎はそのまま1階の奥を指し示した。

「どうせ『帰れ』つっても帰らないんだろ? コンロにスープ置いてあるからあいつに出してやってくれ。あと洗濯機も回してるから終わったら干しといて」
「おけおけ」

 ぴょろ、と尻尾を振って廊下の奥へ消えていく袴姿を見送る。あれだけ怖い目に合ったのだからもう勝手に家を出ていくとは思えなかったが、それでも見張りがいたほうが安心だ。
 靴箱の中から長靴を引っ張り出していると、ばたばたと冷蔵庫を勝手に開ける音が聞こえた。

「ねえねえ滋ヶ崎、アイス食べていい? 抹茶味! あ、マルコちゃんにもあげていい?」
「好きにしろ!」

 滋ヶ崎は後ろを振り向かず、そう叫んで玄関の外に出た。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...