そばにいる人、いたい人

にっきょ

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 本当は、閉園まで遊びつくすつもりだった。
 だが、それよりももう一度淳哉と、今度こそちゃんとキスをしたくて、そしてもっと触れ合いたかった。
 だから、淳哉から「二人になりたい」と低く言われたときには、同じ気持ちだということが嬉しくて、一も二もなく頷いた。そのまま遊園地を出て、迷いなく進む淳哉の後をついて行くと、じきにホテルに行き当たった。部屋に入った瞬間、ぶわりと以前の記憶が蘇ってくる。

「ねえジュン、これ絶対調べて……」
「う、うるさい」

 緊張のあまり思わず茶化しそうになり、淳哉の指に唇をつままれた。ごめん、ともごもごと告げると、唇から離れた手が樹の背中に回された。強く抱きしめられる。

「……ずっと、こうしたかった」
「うん」

 樹も答えて、淳哉の背中に手を回した。ジャケット越しに、興奮を押さえようとしている息遣いを感じる。他でもない自分に反応していることを感じて、樹は淳哉の首筋に鼻先を埋め、頭をもたせかけた。樹のすべてを淳哉のものにしてほしい――そして、同時に樹で淳哉を満たしたい、その欲求で頭に余裕がなくなっていく。

「イツキ」

 低く押し殺したような声で名前を呼ばれ、それだけで心が震えた。少し頭を上げ、今度こそしっかりと淳也と唇を重ねる。ぬるりと入ってきたものと柔らかく絡まりあい、甘く吸われるはじめての感触に頭がぼうっとなっていく。

「んんっ……」

 ちゅくちゅくと濡れた音が唇の間から漏れる。樹の口内をこれでもかとばかりに蹂躙してから口を離した淳哉は、樹の尻に手を回して互いの腰を密着させてきた。

「あっ」

 互いの膨らんだ部分が押し付けられ、樹は小さな声を上げた。熱い吐息を漏らした淳哉が我慢出来ないとばかりに軽く腰を振り、抱き合ったままベッドに押し倒される。

「あの、えと、多分今日いっぱい汗かいたからその」
「いい……このままがいい」

 樹の襟元に顔を寄せた淳哉が大きく息を吸う。汗と、春になりかけの少し冷たい空気が混ざっている。その奥に感じる甘さは、多分おやつに食べたクレープだ。楽しかった今日一日が夢ではなかったのだと証明してくれる匂いに、樹も頷く。
 樹の首に何度か唇を押し付けた後、淳哉は体を起こした。普段では考えられないような乱雑さで服を脱ぎ、ベッドの横に放り投げていく。ずれた眼鏡をむしり取るように外してヘッドボードにたたきつける淳哉の下で、樹はおずおずと自分の服に手をかけた。

「イツキ、待って。俺が脱がせたい」
「あっ……ふぁい!」

 淳哉を見上げると、ちょうど下着まで全部脱ぎ捨てるところだった。ぶるりと飛び出して震える屹立に、樹の目が吸い寄せられる。

「これ、一緒に買った服だろ」
「うん……」
「かわいい。似合ってるよ」

 樹の手を服から外した淳哉が、自分の時とは打って変わって丁寧な手つきでボタンを一つずつ外していく。細いが筋肉がついた胸や、淳哉の呼吸に合わせてかすかに動く喉元を見つめながらも、樹は今見てしまったもののことしか考えられなくなっていた。大きく反り返った、硬そうな……入るだろうか。入れてほしい。お腹の中が熱くなってくる。
 服がはだけられ、ひやりとした空気を肌に感じた。濡れたパンツを押し上げる膨らみを撫でた淳哉は、その中に手を入れてゆっくりと引き下ろした。

「っ、は……ジュン……」

 痛いほどに張り詰めた部分が顕わになる。脚からパンツが引き抜かれる中、樹は先端から溢れた蜜が腹の上に垂れてくるのを感じた。おもむろに樹の股間に顔を近づけた淳哉がその雫を舌ですくい、先端を咥えた。敏感な部分を温かく包まれ、樹の背中を快感が走った。

「あっ、あ、ジュン、だめぇ……」

 伸ばした手が、淳哉の黒い髪を掴む。目を細めた淳哉に先端を吸われた瞬間、樹はその口の中に吐精していた。

「っ……」

 軽く腰を揺らしながら、どろりとした欲望を吐き出す。目を細めた淳哉が、樹を優しく睨みながら先端をもう一度甘く吸い、口を離した。喉仏が上下する。

「……だめって、言ったのにぃ」

 自分でも早すぎると思う射精と、それを飲まれたという喜びや申し訳なさ、達した後の満足感。散らかった感情のまま樹が呟くと、淳哉が頬にキスをしてきた。樹の脇腹に淳哉の屹立がぶつかる。

「嬉しいよ、イツキ。そんなに待っててくれたんだね」
「うん……でも、今日は、ジュンに、僕で……気持ちよくなって、欲しかった……」

 ふわふわとした脱力感に包まれながら告げると、淳哉が小さく息を呑むのが聞こえた。樹に触れたものが硬度を増す。

「……いいの?」

 期待を押し殺した声に、もう一度小さく頷く。

「僕のこと……ジュンのものに、して」

 弾かれたように起き上がった淳哉は、すぐにローションのボトルを持って戻ってきた。広げた足の間にぬるりとした指が伸びてきて、穴の周りにたっぷりと潤滑剤を塗りこまれる。
 穴の入口が、ノックでもするようにつつかれる。何度か軽く押された後、淳哉の指先が抵抗なく樹の中に潜り込んできた。思わず締め付けてしまい、その形をはっきりと意識してしまう。
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