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45. 月満ちる(後)
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「カイ、ち……ちょっと、待って……今、僕も……」
次はカイを気持ちよくさせたかったが、その気持ちに体がついてこない。それどころか、今にも意識が飛んでしまいそうだった。必死で目を開けながら荒い息を吐いていると、熱い塊がヴィクトールの下腹部に当たった。まだ残っていたヴィクトールのシャツに手が掛けられ、手際悪くそのボタンが外されていく。
「ヴィクトールさん、今日は俺にやらせてくださいって言ったじゃないですか」
「う、んっ……あぁん……」
露出した乳首を摘ままれ、舌先で嬲られる。そこから走るピリピリとした感覚にヴィクトールは喘いだ。精を出して萎れたはずの股間に、また熱が集まっていくのを感じる。カイはその頬に軽くキスをして、それからヴィクトールをうつぶせにさせて自分は体を起こした。
「ちょっと待っててください」
素足で部屋の中を歩く足音がして、クッションを抱えたヴィクトールの横にカイが戻ってくる。手の中にある小瓶が、ちらりと光った。
冷たいものがヴィクトールの尻に垂らされた。すぐに温かな手で伸ばされ、互いの体温と馴染み合う。ヴィクトールは自分の少し落ち着いてきた呼吸の向こうに、カイの緊張した息遣いを聞いた。不安げに尻の間に伸びてきたカイの指先がヴィクトールの後孔を刺激し、その指先を中にめり込ませてきた。
「いいよ……うん、その調子、っ」
入口の締まった部分を、何度もカイの指先が行き来した。最初は遠慮するように控えめだった動きも、「そこ」「もっと」とねだるうちに段々と大胆になり、動きが激しくなっていく。指の数を増やされるごとに、ヴィクトールの中の異物感が強くなり、奥がカイを求めて疼いた。
「カイ……お願い。来て」
3本に増やされた指が難なく出し入れできるようになったとき、ヴィクトールは自ら腰を上げてカイに催促した。無言のまま指が引き抜かれ、カイが上に覆いかぶさってくる。
あてがわれた熱はヴィクトールには見えなかったが、どんな状態であるか想像することは容易かった。血管が浮き彫りになるほど硬くなり、大きく天を指しているに違いない。
「入れますよ、ヴィクトールさん」
「ん、っ」
耳元で囁かれた声は、いつもより低く艶っぽい。自分だけが聞くであろうその声が嬉しくて、カイの手に指を絡める。
熱の塊が隘路を押し広げ、ゆっくりと中に入ってきた。浅く息をついて力を抜き、カイを受け入れる。
「っ、は、ふは、あうぅ」
「わ、すご、きつ……熱……気持ちいい、です……」
半ば強引にねじ込まれ、深まる繋がりに喘ぐ。限界まで拡げられて苦しさと同時に、この上もない幸福があった。
やがてカイの下生えがヴィクトールの尻に触れた。ヴィクトールの背中にカイの胸が密着し、背後から抱きしめられた。
「入っちゃいましたよ、全部」
「そうだね」
言わなくても分かることを口にして、お互い笑う。微笑みながら振り向くと、それを待っていたかのように優しく唇を吸われた。何回か角度を変えて唇を重ねると、「いいですか?」とその間から吐息とともに漏れ聞こえた。
「うん……カイの好きにしてくれていいから……」
他の答えなどあるはずがない。頷くと、カイの瞳が獰猛に光った。ベッドにうつ伏せになった上に体重をかけられ、身動きが取れなくなる。抜けそうになるぎりぎりまで腰を引いたカイが、また中へと彼を沈み込ませてきて、ヴィクトールは為すすべもなく声を上げた。
「好きです、ヴィクトールさんっ、愛してますっ」
耳の後ろからも、熱に浮かされたように呟くカイの声が聞こえる。
「あ、僕、もっ」
腰の動きが徐々に早くなっていく。背中からのしかかられ、下から突き上げられたヴィクトールは口を開け閉めするものの、胸まで空気が入ってこなかった。奥を突かれる度に快感の呻きと涙が溢れ、目の前に白く星が瞬いた。互いが渾然一体となり、最早どちらのものかわからない熱で体がいっぱいになる。
ひっきりなしにカイがかけてくる声がさざ波のように耳を打つ。だがその音の響きが意味になる前に、靄のかかった頭の中でほどけて消えていく。先程の鋭く激しいものとは違う、大きく熱い快感が腹の奥で渦巻いてその勢いを増した。濡れた音とともに打ち付けられる杭が奥を叩き、その開放を促す。
やがてその奔流が、閾値を超えた。
「――――っ!」
昇りつめたヴィクトールは、声も出せないまま身をのけぞらせ、体を震わせた。意思とは関係なく強く締め付けた内側でカイが大きく膨らみ、そして爆ぜるのを感じる。
はふ、と満足したような吐息と共に欲望を出し切ったカイのものが小さくなり、締め付けに押し出されるように抜けていく。横にカイが倒れ込み、ようやくヴィクトールは深く息を吸い込んだ。
「ヴィクトールさん……」
ずっと握り合っていた手が解かれ、手の甲に口付けられる。ん、と答えながらヴィクトールは抗いがたい誘惑に目を閉じ、ゆっくりと眠りに落ちていった。
穏やかで心地いい、温かな幸福の中で。
次はカイを気持ちよくさせたかったが、その気持ちに体がついてこない。それどころか、今にも意識が飛んでしまいそうだった。必死で目を開けながら荒い息を吐いていると、熱い塊がヴィクトールの下腹部に当たった。まだ残っていたヴィクトールのシャツに手が掛けられ、手際悪くそのボタンが外されていく。
「ヴィクトールさん、今日は俺にやらせてくださいって言ったじゃないですか」
「う、んっ……あぁん……」
露出した乳首を摘ままれ、舌先で嬲られる。そこから走るピリピリとした感覚にヴィクトールは喘いだ。精を出して萎れたはずの股間に、また熱が集まっていくのを感じる。カイはその頬に軽くキスをして、それからヴィクトールをうつぶせにさせて自分は体を起こした。
「ちょっと待っててください」
素足で部屋の中を歩く足音がして、クッションを抱えたヴィクトールの横にカイが戻ってくる。手の中にある小瓶が、ちらりと光った。
冷たいものがヴィクトールの尻に垂らされた。すぐに温かな手で伸ばされ、互いの体温と馴染み合う。ヴィクトールは自分の少し落ち着いてきた呼吸の向こうに、カイの緊張した息遣いを聞いた。不安げに尻の間に伸びてきたカイの指先がヴィクトールの後孔を刺激し、その指先を中にめり込ませてきた。
「いいよ……うん、その調子、っ」
入口の締まった部分を、何度もカイの指先が行き来した。最初は遠慮するように控えめだった動きも、「そこ」「もっと」とねだるうちに段々と大胆になり、動きが激しくなっていく。指の数を増やされるごとに、ヴィクトールの中の異物感が強くなり、奥がカイを求めて疼いた。
「カイ……お願い。来て」
3本に増やされた指が難なく出し入れできるようになったとき、ヴィクトールは自ら腰を上げてカイに催促した。無言のまま指が引き抜かれ、カイが上に覆いかぶさってくる。
あてがわれた熱はヴィクトールには見えなかったが、どんな状態であるか想像することは容易かった。血管が浮き彫りになるほど硬くなり、大きく天を指しているに違いない。
「入れますよ、ヴィクトールさん」
「ん、っ」
耳元で囁かれた声は、いつもより低く艶っぽい。自分だけが聞くであろうその声が嬉しくて、カイの手に指を絡める。
熱の塊が隘路を押し広げ、ゆっくりと中に入ってきた。浅く息をついて力を抜き、カイを受け入れる。
「っ、は、ふは、あうぅ」
「わ、すご、きつ……熱……気持ちいい、です……」
半ば強引にねじ込まれ、深まる繋がりに喘ぐ。限界まで拡げられて苦しさと同時に、この上もない幸福があった。
やがてカイの下生えがヴィクトールの尻に触れた。ヴィクトールの背中にカイの胸が密着し、背後から抱きしめられた。
「入っちゃいましたよ、全部」
「そうだね」
言わなくても分かることを口にして、お互い笑う。微笑みながら振り向くと、それを待っていたかのように優しく唇を吸われた。何回か角度を変えて唇を重ねると、「いいですか?」とその間から吐息とともに漏れ聞こえた。
「うん……カイの好きにしてくれていいから……」
他の答えなどあるはずがない。頷くと、カイの瞳が獰猛に光った。ベッドにうつ伏せになった上に体重をかけられ、身動きが取れなくなる。抜けそうになるぎりぎりまで腰を引いたカイが、また中へと彼を沈み込ませてきて、ヴィクトールは為すすべもなく声を上げた。
「好きです、ヴィクトールさんっ、愛してますっ」
耳の後ろからも、熱に浮かされたように呟くカイの声が聞こえる。
「あ、僕、もっ」
腰の動きが徐々に早くなっていく。背中からのしかかられ、下から突き上げられたヴィクトールは口を開け閉めするものの、胸まで空気が入ってこなかった。奥を突かれる度に快感の呻きと涙が溢れ、目の前に白く星が瞬いた。互いが渾然一体となり、最早どちらのものかわからない熱で体がいっぱいになる。
ひっきりなしにカイがかけてくる声がさざ波のように耳を打つ。だがその音の響きが意味になる前に、靄のかかった頭の中でほどけて消えていく。先程の鋭く激しいものとは違う、大きく熱い快感が腹の奥で渦巻いてその勢いを増した。濡れた音とともに打ち付けられる杭が奥を叩き、その開放を促す。
やがてその奔流が、閾値を超えた。
「――――っ!」
昇りつめたヴィクトールは、声も出せないまま身をのけぞらせ、体を震わせた。意思とは関係なく強く締め付けた内側でカイが大きく膨らみ、そして爆ぜるのを感じる。
はふ、と満足したような吐息と共に欲望を出し切ったカイのものが小さくなり、締め付けに押し出されるように抜けていく。横にカイが倒れ込み、ようやくヴィクトールは深く息を吸い込んだ。
「ヴィクトールさん……」
ずっと握り合っていた手が解かれ、手の甲に口付けられる。ん、と答えながらヴィクトールは抗いがたい誘惑に目を閉じ、ゆっくりと眠りに落ちていった。
穏やかで心地いい、温かな幸福の中で。
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