お山の狐は連れ添いたい

にっきょ

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45 月夜に岩、そして彼方で

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 赫が身を起こす気配に修造が目を開けた時、部屋の中は真っ赤に染まっていた。すわ火事か、と一瞬で覚醒するが、焦げ臭い匂いも火の粉の弾ける音もしない。どうやら朝焼けが差しているだけのようだ。安心して布団を被り直すと、隣の赫が振り向いた。朝焼けと同じ色の目が、修造を見て細められる。

「あ……修造、起こしたかな」
「いや」

 今日ぐらいゆっくり寝ていても構わないだろう。また目を閉じようとした修造は、おかしなことに気がついた。
 静かすぎるのだ。
 宴会はもう終わったのかもしれないが、それにしても生き物の気配というものがない。人だけではなく、蛙の声も鳥の囀りも聞こえないのだ。辛うじて水音だけがかすかに響いている。
 垂れ池の畔で感じたものと、同じ静けさだった。

「修造、大丈夫?」

 気味の悪さに身体を起こすと、心配そうに赫が修造の背に手を当ててくる。

「……ん」

 いつの間にか着させられている寝間着越しに触れられ、昨晩の愛撫を思い出した修造は頬が熱くなった。結局足腰が立たなくなるまで赫に求められ、身体を清めてもらっているうちに寝てしまったのだ。まだ下腹部に残る違和感がなんだかむずむずする。
 だが、あの時の疲労困憊ぶりが嘘のように、修造は体中に生気が満ち溢れているのを感じていた。もしかすると、深く繋がり合うことで強くなれるのは、妖狐側だけではないのかもしれない。

「なあ赫、この静けさって」

 声を出すことも憚られ、ひそひそと小声で修造は赫に問うた。無言のまま頷く赫に、修造も頷き返す。

「黎が……来てるんだと思う」
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