お山の狐は連れ添いたい

にっきょ

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37 今度こそ

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 一緒にいて、寝食を共にするだけでは伝わらないことのほうが多い。トヨと宗二郎が何も言わずとも伝わり合っているように見えるのは、今までに長い間言葉を交わし続けて、お互いの心を通わせてきたからなのだ、とようやく修造は気が付いた。

「悪いね、今まで復讐しか考えてこなかったもんで、そういうのにはどうも慣れてなくて。赫を悲しませてばっかり……」

 言いながら目を戻すと、ぽかんと目と耳も大きく開けた赫が修造を見つめていた。柄にもないことを言ったので変に思われたか、と顔が赤くなる。

「な、い、いいだろたまにはよ!」

 照れ隠しに赫の長い耳を掴むが、赫はそれには反応せずゆっくりと瞬きをした。

「修造、ぼくのこと、夫だと思ってくれてたの?」
「え? は、はあ? 夫じゃなきゃ何なんだよ」
「だって修造、ぼくと『サンコンノギ』してないだろ」
「あぁ? ……あ」

 修造は顎に手を当てた。確かに言われてみれば、杯を交わす前に赫のことを殴ってしまった記憶がある。

「だから、本当はこの前帰ってこれたら、改めて修造に結婚してくれって言うつもりだったんだけど……黎兄さんのことも結局中途半端なままだし、何より黎兄さんが修造の家族を奪った犯人だって聞いて、どうしたらいいか分からなくなって……」
「確かに、あの時なんか言いかけてたな」

 今度こそ、と言いかけていた記憶がある。あれは「今度こそ、結婚してくれ」の意だったのか。修造が考え込んでいると、潤んでいた赫の瞳からボロボロと雫がこぼれ始めた。

「お、おい……」
「ああ、でも、そっか、け、結婚してたんだね、ぼく、修造と……ずっと……」
「か、赫」

 なぜ赫が突然泣き始めたのか分からず、修造はおろおろと視線をさまよわせた。二人しかいない家で、誰が見ているわけでもないがばつが悪い。とりあえず膝の間に抱え込み、とめどなく溢れてくる涙を拭う。

「ど、どうした、何で泣くんだ」
「わ、わかんない」

 きゅん、と鳴いた赫は修造の首に腕を回し、顔を押し付けてきた。

「なんか、すっごく嬉しくて、でも悲しくて、いっぱいいっぱいで、苦しいの」
「そうか……」

 説明されてもよく分からない。だが言葉を尽くして語ろうとする赫が愛おしくて、ひく、ひくと不規則に震える背中を修造は撫でた。しなやかで野性味のある体は、修造の腕の中にすっぽりと納まってしまいそうに小さい。今度こそこの温もりを放したくない、そう感じて自分のすぐ横にある赫の唇を吸う。

「や、んんっ……」

 赫は甘い吐息を発し、修造の背中に回した指に力を込めた。その様子に限界のきた修造は、自分の股間に手を突っ込んだ。脱ぐのももどかしく、褌の横から取り出した屹立をしごき始める。赫の手がそれを強い力で押しとどめた。

「もう、修造、駄目だってばぁ」
「無理だ、もう……これ以上お前一緒にいながら、我慢なんて……できるわけねえだろっ」

 暫く放っていなかったせいで、擦れる衣にすら暴発してしまいそうである。赫に頭を押し付けて苦しさを訴えると、赤い爪が修造の胸に触れた。

「うん……ぼくももう、我慢できない」

 袖先で涙を拭った赫は、妖艶に微笑んで修造の足の間に顔を埋めた。屹立の先端に熱い舌先が触れ、それから口内に包みこまれる。

「んふっ」

 尻尾を揺らし、修造にしゃぶりつく赫は幸せそうに目を細めた。当たり前のように赫も待ってくれていたということが、何より嬉しい。
 先端を吸われ、柔らかい頬の内側が優しく修造を包み込む。深く飲み込んだ赫に奥で先端を刺激され、修造はすぐに達した。

「っ、はあっ……!」

 小さな頭を抱えこみ、いつもより多く、濃い液体を赫の喉奥に吐き出す。赫は恍惚とした表情で、最後の一滴まで啜りつくそうとしてきた。果てたばかりで敏感な部分を口でいじられ、あられもない声を上げながら修造は体を震わせた。

「赫、かくぅ……」

 久しぶりの快感に、頭がぼうっとする。炎色の髪を撫でながら、心が満たされるような余韻に浸っていると、赫がそっと畳の上に修造を押し倒した。いつの間にか取り出されていた赫の屹立が眼の前に突きつけられ、濡れた先端が修造の唇に押し付けられる。口を開くと、塩辛い味とともに太い雁首が修造の中に差し入れられた。

「ん……ふ……」

 大きな熱の塊に舌を這わせ、垂れてくる蜜を舐めとる。小柄で細身の赫からは想像もできない雄の部分に、これを知っているのは自分だけなのだという優越感に満たされていく。赤々と火のように輝く目はまさに獲物を狙う肉食獣のそれで、射殺されそうな眼光に心が震えた。
 先端を修造に咥えさせたまま、赫は自分の剛直を激しくしごいた。細くたおやかな指が、男の象徴を握りしめて上下する。

「修造、すごいよ、きもちい……あ、ぼくも、もう……!」
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