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第一章 幼少期

第六十一話 身体強化魔法

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 僕はフューを母さんに渡し二人に別れを告げ、村の中央へと向かった。

 「さて、と。ソル、身体強化魔法はどのくらい使える?」
『半分程度だ』
 「意外と使えるんだね」
『身体強化魔法はどっちかと言うと魔法というより技術と言った方が近いからな。魂への負荷はそれほど大きくねぇんだ』
 「なら好都合だ。じゃあちょっと試してみようか。ソル、身体強化魔法よろしく」

 ソルが身体強化魔法を使うのを確認した後、僕は全力で地を蹴った。
 体に凄まじい風圧を受けながら、僕はぐんぐんと地上から離れていく。家がバスケットボールくらいの大きさに見えるほどの高さになると、ようやく上昇が収まった。
 前に初めて身体強化魔法を使ってジャンプした時とは比べ物にならないくらいの跳躍力だ。

 着地の大きな衝撃を膝を曲げることで軽減し、着地に成功した僕は冷や汗を流しながらソルに聞く。

 「ソル、なんで半分くらいしか使えないはずなのに前より強力になってるの? それもとてつもなく」
『オレが使ったってことを差し引いてもありえねぇ……。お前こそ心当たりはねぇのか』
 「重りを付けて筋トレみたいな事をしてたけど……それだけじゃこんなことにはならないよね?」

 身体強化魔法は元の身体能力を掛け算するように跳ね上げさせる魔法だから、筋トレすれば魔法の効力は大きくなるが、ここまで常識外れなことにはならないはずだ。

『そうだな……あの馬鹿みたいな重さの重りを付けてた時はオレがこまめに回復魔法をかけてやってはいたが、それは関係あるのか?』
 「へぇ、ソルそんなことしてくれてたんだ。優しいね……って! それだ!」
『あぁん? どういうことだよ』
 「筋肉って言うのは傷ついた後、その傷を修復することで強くなっていくんだよ。本来筋肉の回復にはそれなりの時間が必要なんだけど、傷ついた筋肉をソルが魔法で治したから、傷つき、回復し、傷つき、回復しっていうのを短い期間に何度も繰り返していたんだ! だからあの短い期間でも何ヶ月分の筋トレをしたことになってたんだよ!」
『元の筋力が跳ね上がったから、こんなことになったってわけか』

 さっきの戦闘で気づくだろって言われそうだけど、いつもより調子がいいとは思っていても、それはソルの身体強化魔法のおかげだと思って気にしていなかったんだよね。ソルも多分、魔法をそんなに強くかけてなかったんだろう。

 これは嬉しい誤算だ。これからする作戦が随分と楽になる。



 魔法の確認も終わり、戦闘前の準備は完全に整った。後は魔物達が来るのを待つだけだ。
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