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第一章 幼少期

第五十四話 双眼鏡

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 セリアを送った後、家に帰った僕は早々に眠りについた。寝さえすれば、アゼニマーレの神域で訓練ができるからだ。
 僕は神域で、魔法を使わずに戦う訓練をした。ソルが作ったゴーレムと呼ばれる土の人形を相手にする訓練は鈍った僕の勘を取り戻すのに最適だった。
 どうやっているのかゴーレムには意思があるようで、
 ソルが操らずとも僕に襲いかかってきた。ソルの操作が要らないということは、数を増やしても問題ないということだ。
 それを知った僕はソルに頼んで、大量のゴーレムを作ってもらった。多分、その数は百を超えていたと思う。
 僕がゴーレム相手にド派手なバトルを繰り広げている間、ソルはフューに魔法を教えていた。片手間に、僕めがけて魔法を放ってきたりもした。

 やっぱり訓練はこのくらいじゃないとね!






 次の日、朝食を食べ終えた僕は庭に出ていた。

「ねぇ、ソル。今ってどのくらいの魔法が使えるの?」

 魔物との戦闘で、どの強さの魔法を使えるかは非常に重要な事だろう。戦闘が始まる前に聞いておかなければならなかった。

『あぁ? そうだな、ほとんど使えねぇな。単純に魔力で強化するのと、水を出したり、火をつけたりくらいは出来るが、それ以上は魂を傷つけちまう』
「え? フラムと戦って魂がボロボロになったときから四、五日経ったよね? 一週間で崩壊寸前の魂が治るんだから、もうほとんど治ってるはずでしょ?」
『あー、今の状況は魂にヒビが入っているようなもんなんだ。魂の力である魔法を使うと、オレ達の魂は反発し合って、内側から圧力が発生しやがるんだ。普段なら大した問題じゃねぇんだが、魂にヒビが入ってるとなれば話は別だ。小さな力でもそのヒビは広がっていく』

 なるほどね。だからほとんど治っているのにも関わらず、弱い魔法しか使っちゃダメなのか。完治して、ヒビが無くなるまでは無茶できないんだね。

「それじゃあフラムの襲撃時には魔法は使えなさそうだね……」
『いや、そうとも限らねぇぞ?』
「何か考えでもあるの?」
『まぁ、な。気になるだろうが、それは今晩のお楽しみってことで』

 スライムを創ったときの仕返しのつもりか、今教えてくれる気は無いようだ。
 ソルって意外と子供だよね。口に出してしまえば確実に怒られるようなことを考えてしまう。

「むぅ。わかったよ。楽しみにしとく」

 不満がある僕とは真逆に、ソルは満足気に笑い声を漏らす。そんなソルを気にしないようにして、フラム対策を考えるために頭を切り替える。

「……氷も出せるよね? その氷をセリアがくれた人形みたいに溶けないようにすることは?」
『できるぜ』
「それじゃあ一つ、試してみたいことがあるんだ」
『試してみたいことだぁ?』

 ソルが訝しそうに、けれど興味深そうに聞き返してくる。

「双眼鏡って作れないかな?」
『双眼鏡っていうと、遠くが見えるヤツだったか? 確かにアレが出来れば魔物共が来るタイミングがわかるな』

 ソルに化学の話をしたとき双眼鏡のことも教えたため、すぐに理解してくれた。

『……試す価値はあるな』

 頭の中で可能かどうかを考えていたのだろう。しばらくしてソルがそう呟いた。

「でしょ! やってみようよ!」

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