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第一章 幼少期
第二十三話 親友
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次の日、日が登る前・・・・・のまだ辺りが暗い時間帯に和麒の家に行くと、出発の時刻である昼にはまだ早いのに荷物を背負った和麒が出て来た。
「出発は昼じゃなかったの?」
僕がそう声をかけると和麒はビクッとして僕を見る
「そ、奏魔!? なんでこんな時間帯に!?」
「和麒のことだからこっそり出て行っちゃうんじゃないかと思ってね。どうやら当たってたみたいだけど」
「はぁ……ったく奏魔にはお見通しってわけか」
和麒がため息をつき、肩をすくめる。
「長い付き合いだしね。そのくらいはわかるよ」
「しんみりした別れが嫌だからこっそり行こうと思ってたのによ」
「すぐに帰ってきてくれるんでしょ? だったらしんみりなんてしないよ」
「そうだな。またすぐ会えるんだし、悲しむことはないよな……んで、その手に持ってる箱はなんなんだ?」
和麒は僕が両手で抱えている、少し古臭い長方形の箱を指さす。
「これは和麒に貸してあげようと思って。僕の宝物だよ」
そう言って僕は箱を地面に置いてから開ける。中から出てきたのは一振りの刀だ。使い込まれてはいるが、丁寧に手入れされている、
「僕が初めて父さんに貰った刀だよ。いわば僕の相棒だよ。最近は使わなくなったけど、それでも大事な僕の宝物だ。ちゃんと返してよね」
和麒は箱に手を伸ばす。一度躊躇ったように手を少し引っ込めたが、大きく息を吐いたあと刀を手にした。
「あぁ、お前の宝物、しっかり受け取ったぜ。すぐに返しに帰ってきてやるよ!」
「うん、絶対だからね」
「おう、絶対だ!」
僕と和麒は拳を合わせる。ガチッという音が早朝の静かな辺りに響き渡る。
「じゃあな!」
和麒はそう言ったあと、一度も振り返らずに里から出ていった。登り始めてきた朝日が、和麒の背中を照らしていた。
和麒が里を出てから三ヶ月が経った。季節は巡り、鮮やかな赤や黄色が木々を彩る。華やかになる風景とは裏腹に僕の気持ちは沈んだままだ。和麒が帰ってこないからだ。
上手くいけば帰れると言っていた時間なのになぁ。父さんに和麒かずきの任務の進行具合を聞いてみると、毒を飲ませ始めた頃だという。まぁ、そう簡単にいくはずがないか。和麒も潜入任務なんて初めてだし、しかたないよね。
それに、あの薬は毎日飲ませると一ヶ月で死ぬらしいから、順調にいけばあと一ヶ月で任務は終わり和麒はかえってくるんだ。一ヶ月くらい気長に待とう。
「そうはいっても……和麒がいないとやっぱり暇なんだよねぇ」
もちろん、父さんとの訓練はあるがそれでも時間が余ってしまう。今まではその時間を和麒と模擬戦をしたり、遊んだりして潰していたが、今は和麒がいないのでそれもできない。
他の友達と遊べば良いだろうと言われるかもしれないけど、他に友達いないんだよね。同年代だと僕の方が圧倒的に強いから、皆僕から距離をとってるんだよ。
仕方ないので一人で訓練をしているが、やはりどこか物足りない。僕にとって和麒って結構大きい存在だったんだなぁ。早く帰って来ないかな……
さらに一ヶ月が経った。でも和麒は帰って来ない。なんでもトラブルがあったらしくて任務が終わらないそうだ。
こっちでは初雪が降ったけど和麒の所ではもう雪は降ってるのかな?
和麒が里を出てから半年が経った。和麒は帰って来ない。雪が降り積もり、僕の朝の日課に雪掻きが追加された。去年はこの雪掻きも和麒と一緒にふざけながら楽しくやっていたのにね……今は一人で楽しさなんて感じられない。
和麒に会えない日が十ヶ月続いた。任務の期限まではあと二ヶ月だというのに和麒は帰って来ない。でも、トラブルの処理は終わり、なんとか期限までに任務を完遂することが出来そうだと報告が来たらしい。
まったく、和麒のヤツすぐに帰ってくるって言っときながら結構かかってるじゃないか。帰ってきたら文句の一つでも言ってやらないとね。
なんて思いながら、僕は和麒が帰ってきたら何をしようかとあれこれ考えていた。自然と頬が緩むのがわかる。
それから一ヶ月経った。数日前から里が慌ただしくなり、大人達の中でもかなりの実力者たちが次々と里を出て行った。僕の父さんもそのなかの一人で、二日前に出て行った。理由を聞いても大したことではないと言うだけで教えてくれないので、僕はあまり気にしないことにした。
その日の晩、誰かが家に向かって走ってくる気配を感じ、僕は目を覚ます。念の為、戦闘準備を整えてから扉を開く。するとこちらに向かって来ていたのは一族の大人だった。
「里の機密情報が盗まれた。先ほど奪還の為に数名送ったが、連絡がつかない。返り討ちにあった可能性が高い。そこで里の中でもかなりの実力を持つ君に、機密情報の奪還及び盗んだ者の始末をするよう命令が下った。もちろん他にも増援は送っている」
その男は走ってきたのにも関わらず、息切れ一つ起こさずに淡々と述べる。そこに焦りの色はないが、全力で走ってきたことから、ことは急を要するのだろう。
機密情報というと多分、依頼者のリストや一族の者の個人情報だろう。誰がどこにいて、なんの任務を行っているのかなどの情報載っているから――このままだと和麒も危ない!?
「犯人の現在地点はここで、北西方面に逃亡中だ」
男は僕に地図を見せながら説明する。幸い、盗まれてから時間はそう経っていないらしく示された場所は近かった。これならすぐに追いつけそうだ。標的は一族の大人達の相手をしながら逃げているんだから、速度はかなり落ちているはずだし。
「わかりました、すぐに追いかけます」
僕はそう言うと走り出す。この男の気配がしてから戦闘準備は整えているし、なにより今は時間が大事だ
「出発は昼じゃなかったの?」
僕がそう声をかけると和麒はビクッとして僕を見る
「そ、奏魔!? なんでこんな時間帯に!?」
「和麒のことだからこっそり出て行っちゃうんじゃないかと思ってね。どうやら当たってたみたいだけど」
「はぁ……ったく奏魔にはお見通しってわけか」
和麒がため息をつき、肩をすくめる。
「長い付き合いだしね。そのくらいはわかるよ」
「しんみりした別れが嫌だからこっそり行こうと思ってたのによ」
「すぐに帰ってきてくれるんでしょ? だったらしんみりなんてしないよ」
「そうだな。またすぐ会えるんだし、悲しむことはないよな……んで、その手に持ってる箱はなんなんだ?」
和麒は僕が両手で抱えている、少し古臭い長方形の箱を指さす。
「これは和麒に貸してあげようと思って。僕の宝物だよ」
そう言って僕は箱を地面に置いてから開ける。中から出てきたのは一振りの刀だ。使い込まれてはいるが、丁寧に手入れされている、
「僕が初めて父さんに貰った刀だよ。いわば僕の相棒だよ。最近は使わなくなったけど、それでも大事な僕の宝物だ。ちゃんと返してよね」
和麒は箱に手を伸ばす。一度躊躇ったように手を少し引っ込めたが、大きく息を吐いたあと刀を手にした。
「あぁ、お前の宝物、しっかり受け取ったぜ。すぐに返しに帰ってきてやるよ!」
「うん、絶対だからね」
「おう、絶対だ!」
僕と和麒は拳を合わせる。ガチッという音が早朝の静かな辺りに響き渡る。
「じゃあな!」
和麒はそう言ったあと、一度も振り返らずに里から出ていった。登り始めてきた朝日が、和麒の背中を照らしていた。
和麒が里を出てから三ヶ月が経った。季節は巡り、鮮やかな赤や黄色が木々を彩る。華やかになる風景とは裏腹に僕の気持ちは沈んだままだ。和麒が帰ってこないからだ。
上手くいけば帰れると言っていた時間なのになぁ。父さんに和麒かずきの任務の進行具合を聞いてみると、毒を飲ませ始めた頃だという。まぁ、そう簡単にいくはずがないか。和麒も潜入任務なんて初めてだし、しかたないよね。
それに、あの薬は毎日飲ませると一ヶ月で死ぬらしいから、順調にいけばあと一ヶ月で任務は終わり和麒はかえってくるんだ。一ヶ月くらい気長に待とう。
「そうはいっても……和麒がいないとやっぱり暇なんだよねぇ」
もちろん、父さんとの訓練はあるがそれでも時間が余ってしまう。今まではその時間を和麒と模擬戦をしたり、遊んだりして潰していたが、今は和麒がいないのでそれもできない。
他の友達と遊べば良いだろうと言われるかもしれないけど、他に友達いないんだよね。同年代だと僕の方が圧倒的に強いから、皆僕から距離をとってるんだよ。
仕方ないので一人で訓練をしているが、やはりどこか物足りない。僕にとって和麒って結構大きい存在だったんだなぁ。早く帰って来ないかな……
さらに一ヶ月が経った。でも和麒は帰って来ない。なんでもトラブルがあったらしくて任務が終わらないそうだ。
こっちでは初雪が降ったけど和麒の所ではもう雪は降ってるのかな?
和麒が里を出てから半年が経った。和麒は帰って来ない。雪が降り積もり、僕の朝の日課に雪掻きが追加された。去年はこの雪掻きも和麒と一緒にふざけながら楽しくやっていたのにね……今は一人で楽しさなんて感じられない。
和麒に会えない日が十ヶ月続いた。任務の期限まではあと二ヶ月だというのに和麒は帰って来ない。でも、トラブルの処理は終わり、なんとか期限までに任務を完遂することが出来そうだと報告が来たらしい。
まったく、和麒のヤツすぐに帰ってくるって言っときながら結構かかってるじゃないか。帰ってきたら文句の一つでも言ってやらないとね。
なんて思いながら、僕は和麒が帰ってきたら何をしようかとあれこれ考えていた。自然と頬が緩むのがわかる。
それから一ヶ月経った。数日前から里が慌ただしくなり、大人達の中でもかなりの実力者たちが次々と里を出て行った。僕の父さんもそのなかの一人で、二日前に出て行った。理由を聞いても大したことではないと言うだけで教えてくれないので、僕はあまり気にしないことにした。
その日の晩、誰かが家に向かって走ってくる気配を感じ、僕は目を覚ます。念の為、戦闘準備を整えてから扉を開く。するとこちらに向かって来ていたのは一族の大人だった。
「里の機密情報が盗まれた。先ほど奪還の為に数名送ったが、連絡がつかない。返り討ちにあった可能性が高い。そこで里の中でもかなりの実力を持つ君に、機密情報の奪還及び盗んだ者の始末をするよう命令が下った。もちろん他にも増援は送っている」
その男は走ってきたのにも関わらず、息切れ一つ起こさずに淡々と述べる。そこに焦りの色はないが、全力で走ってきたことから、ことは急を要するのだろう。
機密情報というと多分、依頼者のリストや一族の者の個人情報だろう。誰がどこにいて、なんの任務を行っているのかなどの情報載っているから――このままだと和麒も危ない!?
「犯人の現在地点はここで、北西方面に逃亡中だ」
男は僕に地図を見せながら説明する。幸い、盗まれてから時間はそう経っていないらしく示された場所は近かった。これならすぐに追いつけそうだ。標的は一族の大人達の相手をしながら逃げているんだから、速度はかなり落ちているはずだし。
「わかりました、すぐに追いかけます」
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