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第七話 お客さん

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 本当に嬉しそうに、優しい笑顔を浮かべる婆さん。たがそれで満足してもらっちゃあ困るぜ? 俺は今度は中学生くらいの女の子にネックレスを渡す。

「にゃおーーん」
「クロにゃん、私にはこれ? わぁ、可愛い! お婆さん、これください!」
「はいよぉ、七百円だよ」
「そんなに安いんですか!?」
「なに、しがない婆が手慰みに作っただけじゃからの」
「あの、お婆さん、もし良かったらこれの作り方教えてくれませんか?」
「もちろん構わんよ。こんな婆の相手をしてくれるなら大歓迎じゃ」

 人間ってのは不思議なもんで、人が買う姿を見ると自分も欲しくなっちまうもんなのさ。流れに逆らえない生き物とでも言うのか、とにもかくにも二人の女の子に続くようにしてお客様方は次々に店に入っていき商品を買っていく。
 中には女の子達と同じように、婆さんに作り方を乞うやつまで現れた。

「にゃーーん」

 ふっふっふっ、計画通りってやつだな。俺の狙いは商品を買わせることじゃなかったのさ。そもそも婆さんは商品が売れないことを嘆いてたわけじゃあないからな。お客が来ないのが、人と関われないのが悲しかったってぇわけさ。つまりは婆さんが求めてたのは金じゃなく人との繋がり、その温かみなのさ。

 だから商品を買わせるだけじゃあ足りねぇ。その後も続く関係じゃないと意味が無い。見てみろよ、あの婆さんの満足そうな顔。シワだらけの顔をさらにしわくちゃにしてやがる。モナリザも真っ青の最高の笑顔だな。

「ありがとうねぇ、クロ助」
「にゃん」

 いいってことよ。俺はただ恩を返しただけなんだからな。だから婆さんも他の誰かに恩を返してくれりゃ、それでいい。

 そうは言いつつも、俺は自分の手をじっと見つめる。何も起こらない。ま、そりゃそうか。このくらいじゃ俺が受けた恩は返せねぇ。そもそも今のは女子高生のくれた猫缶の恩返しだしな。
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