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「大好きな君に」
しおりを挟む私は君が好きだ。
仕草が好きだ。しなやかに伸びる白魚のような手で、繊細にティーカップを持ち上げる。そして艶めかしく紅茶を飲むその様は芸術のようだ。
笑う顔が好きだ。満ち溢れた自信が表れる、人生を謳歌している者にしか出来ない笑顔。その笑顔に、全てのものが惹き付けられる。
歩き方が好きだ。気取った歩き方でありながら、実に様になっている。考え尽くされた歩き方なのではとさえ思える。
容姿が好きだ。神が創りたもうたと言われても疑う余地のない完璧さ。そしてそれを更に美しく演出する洗練された服装。君は自分を理解している。
「あぁ、会いたいな……」
会うことが叶えば、どれだけ幸せなのだろうか。
大好きな君に────
私はゆっくりと手を伸ばし、君のその頬へと触れようとする。しかし、指先から返ってくるのはひんやりとして硬質な感触。
私は大きな鏡を見つめながら、自身が身を置かれた悲劇に想いを馳せる。
鏡越しに私と指先を触れ合わせる君も、悲しそうに顔を歪める。その顔すらも愛おしい。
「あぁ、どうして君は、私なのだろうね……」
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