1 / 21
序章 全てを失った日
絶望の日々
しおりを挟む
失ってみてわかることがある。
おれは佐藤 尊(さとう たける)38歳、妻 彩綾(さあや)28歳と5歳の長女優衣(ゆい)と3歳の次女優奈(ゆうな)を交通事故で失った。避けようのない突然の事故だった。
俺だけが運転席の後席に乗っていたせいか軽症で助かり、運転していた妻と娘2人を失った。なんで俺だけ助かってしまったのか、毎日襲ってくる懺悔からくる虚無感、胸に穴が空いたような味わったことのない喪失感、周りは慰めてはくれるが、そんなことでこの胸の痛みが癒えることはなかった。
事故から二週間後、仕事に復帰し、休みは家でテレビを見たり、気にかけてくれた友人とお酒を飲んで気晴らししたりしていた。
よく時間が解決すると言うけれど、それから何ヶ月たっても、この喪失感を埋めることができなかった。
それどころか更に心の穴が拡がっていくような絶望感が毎日襲ってくるのだ。
それからは毎日毎日子供たちの写真を見ては泣き崩れる日々に、俺は悟ってしまったのだ。
このまま生きていても仕方がないな、と。
そう考えるようになり、それからの日々はどう死んだらいいかを考える日々、飛ぶ鳥あとを濁さずではないけれど、友人や親戚に迷惑をかけないように部屋を片付けたり、預金もなるべく親に残せるように遺書を考えたり、あとはなるべく汚くない死に方、苦しくない死に方を追求するようになって、サイトで色々調べたりしてる時だけは気が楽になることに気がついた。
もう少しでパパも優衣(ゆい)と優奈(ゆうな)の所にいけるよ。俺だけ生き残ってごめんな彩綾(さあや)、もう1人だけ生きてることが許せないんだ。
死んだら会えるなんて思ってないけど、それでも、もしかしたらって思ってしまって・・・死んだ後のことは誰にもわからない、よく無になるだけなんて言うけど、それでも可能性0かもしれないけど、このまま生きてこの世界にいるよりは、また家族に会えるんじゃないか?なんて妄想ばかり考えてしまって死んでからの期待が膨らんでしまうんだ。
だから死ぬことに対する恐怖は全くなかった。
職場ではもう吹っ切れた雰囲気で仕事をして、周りには悟られず、一か月ほど普通に生活し、全ての準備が整ったあと俺は予定通り自殺した。
これでこの苦しみから解放される。
はずだった。自殺した後に暗闇が襲い、意識を失ったあとに、眩い光を感じ、目を開けるとそこには見たこともない風景が広がっていた。
ぼやけてよくは見えないが、とてつもなく広く、豪華な建造物があるような、いやそれすらも本当なのかわからない。
ここは、どこだ?天国なのか?
あたりを見渡しても誰もいない。自分を見てみると何も着ていないが、体が透けてるような、ただ意識をすると服をきたり、また裸になったり、なんなんだここは?
「ここは天国ではないが、その前の世界、想いの力で顕(あらわ)される世界」
え?頭に声が響いてくる。誰だ?
「私は天界第七階位の天使ウリエル、あなたをここに導いた者
よく聞いてほしい。あの事故はこちらの不手際で起きてしまったもの。その責任を取ってあなたの家族は、普通は魂が浄化され、輪廻の輪に組み込まれるところを記憶を残したまま異世界に転生してもらったのだ。
あなただけが生き残ってしまったので、申し訳ないことをしたとは思ってはいたが、地上には干渉することが出来ず、あなたの様子を伺っていたのだが、大変申し訳ないことをしたと思っている。それであなたの魂も輪廻の輪に組み込まれる前にこちらに導いたのだ。」
異世界転生?俺の家族は元の世界には戻れなかったのか?
「地上への干渉はこちらでは難しいと説明したが、パラレルワールドのような異世界であれば話は別、ある程度の力を与え、転生させることは比較的に容易なのだ。あなたの家族にも了承を得て、三人一緒に転生してもらったのだ、あなたのことは彩綾さんも気にかけていた。だからあなたが自殺してここにきたことは非常に残念でならない。」
俺もその異世界に行くことはできますか?
また妻と娘に会えますか?
「あなたが望むのであれば同じ異世界に行くことは可能だ。ただあなたの世界とは時間軸がずれていてあちらの世界ではだいぶ時間が経ってしまっている、何よりあの世界はあなたの世界とはだいぶ違うのだ。あなたの世界でいうところのファンタジー世界なのだ、生活レベルは低いものの魔法や魔物がいる少し危険な世界、それに異世界転生させることは可能だが、指定しての転生は出来ずどこの国の誰に転生するのかはわからないのだ、彩綾さんと娘さんに関してはこちらも異世界の神にだいぶ交渉し、なるべく三人が離れないように考慮していただいたが、一度転生したあとはこちらからの手出しは出来なくなるのがルールで、今どうしているかはわからない。だからあなたを転生させることは出来るが、あなたが家族に再び会えるかどうかは保証できないのだ。すまない。それでも転生するか?それとも全てを忘れ浄化され輪廻の輪に入り、再び元の世界に転生するのを待つかね?」
転生すればまた彩綾や娘達が生きてる世界に行けるんでしょ?だったら、転生して探します。必ず会います。俺も異世界に転生させてください。
「わかった。あなたが家族に会えるように私も力を尽くそう。異世界で生きていけるように世界標準言語の獲得、異世界ナビ、記憶の保持、身体能力向上、スキルポイントの取得2倍などの能力を私の権限で与えよう、あとは異世界に行ったあとに異世界ナビに従ってほしい。
あなたの家族にも同様な能力を与えているので、向こうの世界でも上手くやっているはずだが、あなたが転生することは知りようがないし、姿かたちが転生の影響で多少補正されて変わっているかもしれない。
それでもあなたの熱意があれば会えると信じているぞ。」
あの三人が生きていることだけでも知れてよかった。
必ず必ず探し出してまた会います。その可能性をくれてありがとう。
「うむ、それではあなたを異世界に転生させる。
今回はこちらの不手際で申し訳なかった。
あなたの二度目の人生に幸あらんことを」
天使がそういうと眩い光があたりを包み、気がつくと俺は流星になっていた。
周りに星が見える。ほんの一瞬ではあったがそう記憶している。
そのまま俺は一筋の光のかけらとなり、大きな星のどこかに落ちていくのがわかった。
この世界に彩綾と優衣と優奈がいる。
どんな困難があっても必ず会いにいくよ。
俺の胸にポッカリと開いていた穴は、いつの間にか完全に塞がっていたのだった。
おれは佐藤 尊(さとう たける)38歳、妻 彩綾(さあや)28歳と5歳の長女優衣(ゆい)と3歳の次女優奈(ゆうな)を交通事故で失った。避けようのない突然の事故だった。
俺だけが運転席の後席に乗っていたせいか軽症で助かり、運転していた妻と娘2人を失った。なんで俺だけ助かってしまったのか、毎日襲ってくる懺悔からくる虚無感、胸に穴が空いたような味わったことのない喪失感、周りは慰めてはくれるが、そんなことでこの胸の痛みが癒えることはなかった。
事故から二週間後、仕事に復帰し、休みは家でテレビを見たり、気にかけてくれた友人とお酒を飲んで気晴らししたりしていた。
よく時間が解決すると言うけれど、それから何ヶ月たっても、この喪失感を埋めることができなかった。
それどころか更に心の穴が拡がっていくような絶望感が毎日襲ってくるのだ。
それからは毎日毎日子供たちの写真を見ては泣き崩れる日々に、俺は悟ってしまったのだ。
このまま生きていても仕方がないな、と。
そう考えるようになり、それからの日々はどう死んだらいいかを考える日々、飛ぶ鳥あとを濁さずではないけれど、友人や親戚に迷惑をかけないように部屋を片付けたり、預金もなるべく親に残せるように遺書を考えたり、あとはなるべく汚くない死に方、苦しくない死に方を追求するようになって、サイトで色々調べたりしてる時だけは気が楽になることに気がついた。
もう少しでパパも優衣(ゆい)と優奈(ゆうな)の所にいけるよ。俺だけ生き残ってごめんな彩綾(さあや)、もう1人だけ生きてることが許せないんだ。
死んだら会えるなんて思ってないけど、それでも、もしかしたらって思ってしまって・・・死んだ後のことは誰にもわからない、よく無になるだけなんて言うけど、それでも可能性0かもしれないけど、このまま生きてこの世界にいるよりは、また家族に会えるんじゃないか?なんて妄想ばかり考えてしまって死んでからの期待が膨らんでしまうんだ。
だから死ぬことに対する恐怖は全くなかった。
職場ではもう吹っ切れた雰囲気で仕事をして、周りには悟られず、一か月ほど普通に生活し、全ての準備が整ったあと俺は予定通り自殺した。
これでこの苦しみから解放される。
はずだった。自殺した後に暗闇が襲い、意識を失ったあとに、眩い光を感じ、目を開けるとそこには見たこともない風景が広がっていた。
ぼやけてよくは見えないが、とてつもなく広く、豪華な建造物があるような、いやそれすらも本当なのかわからない。
ここは、どこだ?天国なのか?
あたりを見渡しても誰もいない。自分を見てみると何も着ていないが、体が透けてるような、ただ意識をすると服をきたり、また裸になったり、なんなんだここは?
「ここは天国ではないが、その前の世界、想いの力で顕(あらわ)される世界」
え?頭に声が響いてくる。誰だ?
「私は天界第七階位の天使ウリエル、あなたをここに導いた者
よく聞いてほしい。あの事故はこちらの不手際で起きてしまったもの。その責任を取ってあなたの家族は、普通は魂が浄化され、輪廻の輪に組み込まれるところを記憶を残したまま異世界に転生してもらったのだ。
あなただけが生き残ってしまったので、申し訳ないことをしたとは思ってはいたが、地上には干渉することが出来ず、あなたの様子を伺っていたのだが、大変申し訳ないことをしたと思っている。それであなたの魂も輪廻の輪に組み込まれる前にこちらに導いたのだ。」
異世界転生?俺の家族は元の世界には戻れなかったのか?
「地上への干渉はこちらでは難しいと説明したが、パラレルワールドのような異世界であれば話は別、ある程度の力を与え、転生させることは比較的に容易なのだ。あなたの家族にも了承を得て、三人一緒に転生してもらったのだ、あなたのことは彩綾さんも気にかけていた。だからあなたが自殺してここにきたことは非常に残念でならない。」
俺もその異世界に行くことはできますか?
また妻と娘に会えますか?
「あなたが望むのであれば同じ異世界に行くことは可能だ。ただあなたの世界とは時間軸がずれていてあちらの世界ではだいぶ時間が経ってしまっている、何よりあの世界はあなたの世界とはだいぶ違うのだ。あなたの世界でいうところのファンタジー世界なのだ、生活レベルは低いものの魔法や魔物がいる少し危険な世界、それに異世界転生させることは可能だが、指定しての転生は出来ずどこの国の誰に転生するのかはわからないのだ、彩綾さんと娘さんに関してはこちらも異世界の神にだいぶ交渉し、なるべく三人が離れないように考慮していただいたが、一度転生したあとはこちらからの手出しは出来なくなるのがルールで、今どうしているかはわからない。だからあなたを転生させることは出来るが、あなたが家族に再び会えるかどうかは保証できないのだ。すまない。それでも転生するか?それとも全てを忘れ浄化され輪廻の輪に入り、再び元の世界に転生するのを待つかね?」
転生すればまた彩綾や娘達が生きてる世界に行けるんでしょ?だったら、転生して探します。必ず会います。俺も異世界に転生させてください。
「わかった。あなたが家族に会えるように私も力を尽くそう。異世界で生きていけるように世界標準言語の獲得、異世界ナビ、記憶の保持、身体能力向上、スキルポイントの取得2倍などの能力を私の権限で与えよう、あとは異世界に行ったあとに異世界ナビに従ってほしい。
あなたの家族にも同様な能力を与えているので、向こうの世界でも上手くやっているはずだが、あなたが転生することは知りようがないし、姿かたちが転生の影響で多少補正されて変わっているかもしれない。
それでもあなたの熱意があれば会えると信じているぞ。」
あの三人が生きていることだけでも知れてよかった。
必ず必ず探し出してまた会います。その可能性をくれてありがとう。
「うむ、それではあなたを異世界に転生させる。
今回はこちらの不手際で申し訳なかった。
あなたの二度目の人生に幸あらんことを」
天使がそういうと眩い光があたりを包み、気がつくと俺は流星になっていた。
周りに星が見える。ほんの一瞬ではあったがそう記憶している。
そのまま俺は一筋の光のかけらとなり、大きな星のどこかに落ちていくのがわかった。
この世界に彩綾と優衣と優奈がいる。
どんな困難があっても必ず会いにいくよ。
俺の胸にポッカリと開いていた穴は、いつの間にか完全に塞がっていたのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる