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第三章 蒼い髪の少女~朴念仁と可憐な護衛対象~
第三十話 連結と少女の変身
しおりを挟む「なんだ、あれは?」
巨大ムカデの赤黒い顎にサイキックの炎塊をぶつけて怯ませつつ、西の空を仰いだダーンは空からこちらに向かってくる黒い異形を認め不安を漏らした。
近付くにつれ分かったのは――――
肥大化した馬の全身は黒く艶のある羽毛のような物で覆われており、その背中から巨大な漆黒の翼が生えている。
よく見れば、馬の頭は変形し、鋭い嘴を持った鳥類の頭部だった。
さらに虚空を駆けるその脚は六本に増えており、前脚には蹄ではなく鳥類が持つ鋭い鉤爪になっている。
『合成魔獣のようですが……なるほど、そこにいた馬と恐らくはカラスを魔力合成したようですね』
ソルブライトの分析に、ミランダはいつも浮かべていた微笑を崩し不快を露わにした。
「悪趣味きわまりないですわ……そこにいる者の所業でしょうけど、そろそろお顔くらい拝見させていただけないかしら」
そう言ってミランダは右の方――――風化した大理石の円柱が立ち並ぶ遺跡の一角を見やると、柏手を打つ。
するとその遺跡の一角が陽炎のように歪んで、風化した円柱が粉々に崩れ落ちた。
「おっかない女ね、貴女何者よ?」
崩れた遺跡の土煙の中から、不快感を覚える女性の声が響いてくる。
「貴女の邪魔をする存在ですよ、異界の者よ」
ミランダは冷徹な声で答えて不敵に笑ってみせると、その右手を土煙の方向にかざした。
かざした手のひらから空間の歪みが生じ、その歪みが突風のように突き進んでいき、土煙を一瞬でなぎ払うと、晴れた視界に流血の深紅を彷彿とさせる赤い髪が揺れて見え始める。
「この力……指定した極小範囲での超重力操作かしらねェ。なーるほど、貴女がこの地に伝承で謳われてる女神サマか……確か大地母神のガイアだったっけ?」
相手を小馬鹿にするような軽い口調で話す赤い髪の女は、ミランダが作りだした空間の歪みとは異質の歪みをその周囲に防護幕として展開し、ゆっくりとミランダの立つ方向に歩き出した。
「私を御存知で? ですが、こちらは貴女のことを聞いたこともありませんが……異界では『女神』と言うことになるのでしょうか」
「クククッ……私のことを『女神』だなんて笑わせてくれるわ……そんな冗談言う馬鹿は流石にいないと思うけどぉ。まあ『魔神』とはよく言われるけど」
喉を鳴らし妖艶に笑いながら応じる赤い髪の女は、さらに、
「一応、この地の女神サマに敬意を払って教えてあげるわ……私の名はリンザー・グレモリー、貴女たちが『異界』とか呼ぶ世界では『公爵』という身分にあるんだけどって言えば、こっちの人には分かりやすい?」
グレモリーと名乗った女は、砕けた物言いで細めた目線をミランダに向けて嘲笑する。
「なるほど、貴女方の世界も貴族や領主といった支配階級があるようですが……どうやら高貴な立場にそぐわない下劣な志をお持ちですのね」
ミランダの柔らかい口調による辛辣な言葉に、グレモリーは眉根を上げて、その視線に明らかな怒りを含めた。
「土着の女神風情が言ってくれるじゃないの……」
「いえね……、如何に異世界とは言え、そこに生けとし生物はその世界のかけがえなき宝です。それをこのように弄ぶような所業は下劣と吐き捨てるのが私の流儀ですの」
「クックックッ……それなら趣の違いということかしらぁん。私は他人の大切にしてる宝を見つけて奪うなり蹂躙するなりが得意だし、それこそが至高の嗜みと考えてるのン。今だぁって、その小娘を狙っているのは、そういった趣なのよぉ」
妖艶な笑みを浮かべ、グレモリーは愉悦に潤んだ視線を蒼い髪の少女に向ける。
その視線の先では、上空から不快な羽音をたてて襲いかかろうとする巨大なカマキリに向かい、涙目になって《衝撃銃》を打ちまくるステフの姿があった。
「…………。そのために、あの銀髪の少女も利用しているようですが……ならばせめて、ご自分から動いて挑めばいかかです?」
「あら……こうして私自ら動いてるじゃない」
「傀儡を見破れぬとでもお思いで?」
ミランダは低く言い放つと、グレモリーの立つ大地に鋭い視線を向け、そこに特殊な念を送り込んだ。
瞬間、グレモリーの身体が下から強烈に引き寄せられたかのように、赤い髪も着ている服も下に引き延ばされたが、当のグレモリーはその愉悦に溢れた表情を全く崩さなかった。
「アハハハッ……さっすが女神ねえ。この身体が作り物ってすぐ分かるなんて……。貴女の宿に張られた妙な結界も、この私ですら破れない厄介な物だったし、なかなか楽しい余興だったわ。それに、こんな手品まで見せてくれるなんてサービスいいわ」
グレモリーの楽しそうなその言葉の直後、彼女の立つ地面から灼熱の光が立ち上り、一瞬でその肉体を分解した。
それは、極小の超重力の塊、マイクロブラックホールを相手の足下に発生させた後、それを蒸発させることで発生した輻射熱の熱線だった。
その瞬間、どんな防護幕をも無意味と化す爆発的な熱量が発生し、グレモリーの肉体を構成していた原子そのものを崩壊させる。
さらに、そのまま全てのエネルギーを別の次元へと転移させて、周囲に被害が及ばないようにしていた。
まさに神業をさらりとやって見せた大地母神たるミランダは、一瞬だけその表情を嫌悪に歪ませた後、視線をステフとダーンに走らせる。
ダーンは長剣とサイキックを巧みに使い分け、近接する巨大ムカデに少なからずのダメージを与えているようだ。
さらに接近するカラスと馬の合成魔獣を《真空の刃》のサイキックで牽制している。
初級クラスの物とはいえ、いつの間にか風属性のサイキックまで使いこなすダーンの天賦の才に半ば驚愕するミランダだが――――
彼自身にとっては、昨夜花弁の魔物と戦ったときのステフとサイキックの《ユニゾン》をしたことで風のイメージングは要領を掴んでおり容易いことだった。
問題はもう一方の戦闘だ。
ステフはよほど虫系統の魔物が苦手のようで、巨大なカマキリを自身に近づけないように《衝撃銃》を乱射し、光のサイキックを派手に放っていた。
当然のことながら、冷静さを欠いていてその狙いも粗く、まるで効果がない。
そしてついに――――
「弾切れ? ヤバッ……」
主武装である《衝撃銃》のエネルギーが底をついてしまった。
『無闇矢鱈に撃ちまくるからです! 銃を持ったら常に冷静にというのが、貴女の座右の銘ではなかったのですか』
「そんな物騒な座右の銘を掲げた覚えはないわよッ。人をなんだと思ってるの?」
『貴女から銃を取ったら、その無闇矢鱈に揺れまくる胸しか残らないでしょうに……』
「契約早々、いきなり喧嘩売る気? お母様が大事にしていた《神器》だからって、あんまり生意気だと分解してやるわよッ」
『形なき存在の私をどう分解するのです?』
「念話出来るんだから、サイキック方面のありとあらゆる方法を試すのよッ」
胸元のソルブライトと妙な口喧嘩をするステフだったが、その間に上空を飛んでいたカマキリは狙いを定め、彼女の方に急降下しつつその巨大な鎌を振り下ろしてきた。
耳障りな羽音と大鎌が空を切り裂く風切り音が重なって頭上から迫り、ステフは危機感を覚え咄嗟に後ろに飛び退くが……。
「きゃあッ!」
大鎌本体が彼女を傷つけることはなかったが、凄まじい勢いで振り下ろされたその刃は真空の刃を纏っていて、すんでの所で躱した彼女のブラウスを襟元から胸元にかけて引き裂いた。
露わになりかけた胸元を両腕で抱いて隠すステフに、カマキリの追撃が迫る。
衣服を裂かれ怯んでいたため、咄嗟の動きが出来ずに固まってしまったステフは、迫る巨大な鎌を見つめることしかできず息をのんだ――――が、その視界に白刃が夕日の赤を反射して舞い込んだ。
「喧嘩してる場合かッ」
ムカデの相手をしていたダーンが強引にカマキリとステフの間に割り込んで、巨大な鎌を長剣で受け止め、そのまま力の限り押し返して弾く。
その彼の背中は、厚手の麻製の被服が破れうっすらと血が滲んでいる。
ここに割り込むまでに、強引にムカデの脇を抜けた際、無防備になったところにムカデの節足が襲ったのだろう。
「ご、ごめんダーン。その……背中大丈夫なの?」
すまなそうに声を落として尋ねつつ、ステフは服のはだけたこともあって顔を赤らめていた。
「このくらい大丈夫だ、毒がある口顎の方じゃなかったからな。……ミランダさん、ちょっと分の悪い闘いになりそうだ。手を貸してくれ」
「今し方貸したばかりなのですけど……。そもそも、私たち精霊王は人々の争い事への直接干渉は避けているのですが……。まあ、仕方がありませんね。今回だけ契約にかかる初回サービスということにしましょう」
溜め息交じりに呟いたミランダは、右手のひらをカマキリの方にかざし念を込める。
すると、ダーンにはじき飛ばされた後、再び舞い上がりステフの頭上に鎌を振り上げていたカマキリは、突然その身が石になったように固まり、耳障りな羽音を止めて地に落ちた。
その様子を見たダーンも、再び巨大ムカデの方に走っていき長剣を振り上げる。
カラス馬の方は、ダーンのサイキックの牽制を受けた後、再度上空高く舞い上がって機を窺っているようだ。
「今のうちです! ソルブライト」
『分かりました。ステフ、事態が切迫していますので詳しい説明は後ほど。これから大地母神の力の一部を借用利用します。本来の私の機能とも言うべきものですが、宜しいですね』
ミランダの声に応じ、ソルブライトはステフに早口で問いかける。
「何をするの?」
『大地母神の得意とする物質錬成と大地の《#活力_マナ__#》の応用活用を行います。現時点における私の機能を最大限に発動するのですが、実際にやってもらった方が早いです』
「いいわ。この状況を打開できるならどんなことでも試してみるわ」
『了解です。それでは発動のキーワードを――――』
今や神秘なる神器となった胸元の淡く輝く緋色の宝玉、そこに宿る《意識》から蒼い髪の少女の意識に、とある《言葉》が瞬時に流れ込む。
それは、少女達が日常慣れ親しんでいる言語とは異質の《言葉》。
さらにその言葉が、《連結》や《融合》といった意義を持つものであることと、その発音が情報としてもたらされた。
その情報は、《発動の言葉》以外は本当に漠然とし、また朧気なものだったが――――
それでいて情報を提供するその《意識》に対して、途方もないほどの存在感と、柔らかで暖かみのある絶対的な信頼感を覚えさせた。
このあまりに唐突に沸き上がってきた感覚はなんだろうか。
何故、こんなにも、その《意識》を信頼し、また期待するのだろうか?
ただ単に、自らの母が若き頃に愛用していた《神器》だからなのだろうか?
少女は、不可思議で筆舌に尽くしがたい妙な感覚のなか、胸の奥から沸き上がってくる高揚感にその身を歓喜で震えさせていた。
全身を駆け巡る全能感に身を任せて、蒼い髪の少女は、神秘なる《神器》が示した発動の言葉を声高らかに発する。
「LINKAGE!」
☆
次の瞬間、ステフの胸元にあるペンダント、その宝石が眩い光を放ち、周囲にいる者を怯ませるほどの光量を放った球体が彼女の身体を包む。
そしてその球体内に、淡く光る桜の花びらが無数に現れ、その花びらによる吹雪が巻き起こった。
舞い吹雪く花びらは、ステフの身体に纏わり付くようになると、一気に彼女の――――いや、彼女の纏う物質に顕著な変化が起こった。
襟元を引き裂かれたブラウス、履いていたローズレッドのミニスカートや、その下の下着類に至るまで、彼女の衣服が全て粉々になって、一瞬一糸まとわぬ姿を晒したのだ。
やがて、吹雪く桜の花びらが彼女の肉体を包み込むと、その花びらが変質して素早く彼女の肉体に新たな被服らしきものを形成していき、長く蒼い髪は不思議な力で結い上げられていく。
自分の身に起こる変化に悲鳴を上げる余裕もなく、ステフはそれらを甘んじて受け入れるしかなかった。
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