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60. 日常
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「あらおはよう、佑。なんかえらく早いのね?」
「ああおはよう、母さん。うーんなんか目が覚めちゃって」
未だ重く感じる瞼をなんとかこじ開けながら、俺はイスに座る。そこには既に朝ごはんが用意されていた。
「…まあ今日から二学期だし、早いに越したことはないわよ」
「まあそうだな。んじゃ、いただきますと」
軽く合唱したのち、俺はゆっくりと朝ごはんを食らうのだった。
そして、数十分後。用意が済んだ俺は鞄を背中に、玄関へと歩を進めていった。と、ここで。俺の頭の中には一つの心配事で埋め尽くされる。
それは、いつものような光景がドアの先に広がっているのかどうかということ。もっとわかりやすく言うならば、茜と一緒に登校できるのかどうか分からないと言うことだ。
星本先輩と佐伯姉妹を再会させたあの花火大会。あの日を境に俺と茜は喋らなくなった。だけど、小さな偶然のようなものが重なり、俺と茜はついこの間久しぶりに喋ったのだ。まあまた、あの日から俺たちは実際に会話を交わしてないのだが…。
だけど、花火大会の後の空白の1ヶ月とついこの間のちょっとした空白における明確な違いというものを挙げるとするならば、この前のちょっとした空白の間はメールで多少やり取りをしていたということ。1ヶ月の空白に俺は少し反省し、あの散歩まがいなことが終わった後、頻度は多少落ちたかもしれないが、確かに連絡は取り合っていた。
しかし、そのメールのやり取りの中に今日一緒に登校するのかという旨の内容の話は出てきていなかった。散歩まがいなことをした日は、自身ではいつも通り茜とする会話ができていたような気がしたが…。茜からしたら俺と感じるものは違ってくるのだろうか。
「…ふぅ」
俺はドアの前で軽く息をついた。まあ、その答えなんてこのドアを開けてみれば分かることだ。そう思った俺はドアにゆっくりと手をかけて──。
「…あ、おはよっ!」
まだ暑さが抜けない9月の空気を一気に打ち払うような声が俺の耳に入ってくる。俺の視線の先には、隣に住む、あいつがにこにことした笑顔で俺を出迎えてくれた。
刹那、俺の心の中は安堵という言葉で埋め尽くされた。それは、ズシリと言葉と比にならない何かが、胸に詰まっていくような感じで。
「…おはよ、茜」
俺は相変わらずテンションの高いやつだな、と。そう軽く思いながら、彼女に返事を返す。
「んー?なんかテンション低くないかー?佑。今日から2学期なんだ!テンションあげてこーぜー!」
「いやだからお前のテンションにはいつまで経ってもついていける気がしないんだって…」
「え、じゃあこれくらいのテンションで行こうか」
「いやそれもなんか変だから…。程よいテンションで行ってくれ~」
今日の俺の目の前には俺が1番よく知る茜の姿があった。なんか…ちょっと安心した。花火大会で2人になった時のあの雰囲気や散歩まがいなことをした時の最後のあの雰囲気など、それを引きずっているのならちょっとこっちとしてもどう話せばいいのか迷うところであったが、俺のよく知るこの茜ならきっと俺自身も大丈夫だろう。
というわけで、久しぶりに学校へと茜と共に向かう。学校まであと半分くらいの距離になったところで茜はそういえば、と話題転換をしてきた。
「なぁ佑。宿題は終わったか?」
「…うん、オワッタヨ?」
「なんでカタコトなんだ…。それは絶対に終わってないだろ!」
「い、いやー?分かんないだろ?俺が嘘をつけいているかも」
「いや、佑は嘘つくのヘタッピだから絶対に終わってないって確信できる!こんしゅーむ!」
「こ、こんしゅーむ?って何?」
いきなりどうした?と心中で思いながら俺は思わず聞き返す。
「え?"確信する"って意味の英単語だぞ?ふふん、えらいだろ!僕はちゃんと夏休み中に英単語覚えたんだぞっ!佑と違って、なっ!」
ニッと歯を見せながら人差し指をピンと俺に向けて茜はそう言った。そんな彼女に俺は苦笑いして、
「えっ…と、ちなみに何単語?」
「150単語!」
「いや少な…」
思わずツッコんでしまった。そんなに言うなら1000語は覚えていると思ったが…。
「後ちなみにさ…。"確信する"って意味の英単語はcertainな…。これは動詞じゃなくて形容詞。そんでさっき茜が言ってたこんしゅーむ(consume)は"消費する"って意味の英単語だ。加えて言っておくと、これは動詞だ…」
「え…?」
「いやだから、確信するって意味の英単語は──」
「も、もちろん分かってたぞ!さーていん?だよな、うんうん。あれだぞあれ、佑を試すためにこう言ったんだぞぞぞ?ほんとにほんとに」
途端とんでもない早口で捲し立てるように話す茜。なんか一瞬、雫と話してるように感じたのは気のせいだろうか。
「お、おお。そうかそうか…。ありがとな?」
「いやなんで引いてるんだよ!」
「別に引いてないわ…」
目の前の信号の色を確認し、俺たちはゆっくりと自転車を一時停止させる。1学期中には何度もあった信号で止まる機会だったが、こんな何ともないことでも日常が返ってきたんだなと、俺はふと1人感情に浸る。
「佑ー、青になったぞ!行こ!」
「お、了解ー」
茜の声に我に返った俺は、ペダルに足を乗せる。
「そーいえばさ」
「うん?どうした」
少し伸びた気もするボブの髪を風に軽くなびかせる茜は俺に尋ねた。
「佑って誕生日いつなんだ?」
随分と唐突だな、とそう思いつつ俺は彼女に言う。
「…俺の誕生日?あれ、1学期とかにそれ喋らなかったっけ?」
「いやー、僕の脳にはそのような記憶がござらず…」
「最後忍者みたいになってたのは気のせい?」
俺は思わず笑みをこぼしながら茜にそう言った。
「……俺の誕生日は12月25日だよ」
「え、12月25日ってクリスマスの日じゃん!じゃああれか?誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント一緒にされるのか?」
「そう言われると思ったよ…。ま、俺の両親は優しくてな、そういうのは別々に1つずつくれるんだ」
去年もらったマフラーとイヤホンのことを思い出しながら、俺はそう言う。まあ、マフラーをつけるほど今の季節は全然涼しくなってないんだけどな…。
「へぇ!いいご両親だな!あーでも、野活の時に文句ひとつなく車に乗せてくれたこと考えたら、妥当なのかもな!」
にひひーと白い歯を見せながら微笑する茜。気のせいか茜、笑顔の回数が増えた気がする…?
「まあなー。じゃあ茜、お前の誕生日はいつなんだ?まあ双子の姉の雫も同じ誕生日だろうが…」
誕生日関連で気になった俺は茜に尋ねてみた。
「……僕の誕生日?言ってなかったっけ?」
「いやさっきの俺のマネしなくていいから…」
「んーじゃあ当ててよ!ちなみにヒントは無しな!」
「いや無しかよ!じゃあ無理じゃないか!」
「えー?わがままだなぁ。じゃあヒントは佑と同じ誕生日じゃないぞ!」
「いや分かんねえから!候補が365日ある中、1日消えただけだから!」
「もう、ぶーぶー文句ばっかだなぁ。あ!ちなみに学校着くまでに僕の誕生日当てられなかったら佑のジュース奢りな!」
「いや聞いてねえよ!しかもそれお前に有利すぎじゃねえかよ!」
「だーもう朝からうるさいな佑…。もう少し静かにしてくれないか?」
「いやお前のせいだろ!!!」
俺の渾身のツッコミが入ったところで、俺たちは学校前の最後の一本道に自転車を走らせるのだった。
財布から、ジュース一本分の小銭が消えたのはまた別のお話である…。
「佐野ー、準備しろよ」
「おおー、今行く」
放課後。おそらく日常と言ってもいいくらい浸透したこの卓球場で俺は部活の準備を始める。俺に声をかけたやつ、須山は既に着替えが完了しており、ピンポン玉やラケットを準備していた。
須山は夏休み中の部活で嫌というほど顔を合わせてきたが、俺は久しぶりに見るクラスメイトに少し嬉しさを感じた。それこそ、椛や棚橋といった夏休み中あまり接していない人たちとの会話を楽しみ、同時に課題テストが近いことを知って絶望したりした。
まあそんな午前中の短い学校を終え、今からは2学期初の部活が始まろうとしていた。2学期最初の部活も、あの人の声から始まる。
「はいはーい。始めるよみんな」
声のした方には、相変わらずのピンクのヘアバンドを頭に身につけた星本先輩の姿があった。あれ、でも…。
「なあ佐野、星本先輩ちょっと髪型変わってねえか?」
「お、おう…。ちょっと俺も思った」
「なんか知ってるの?先輩の彼氏の佐野くーん」
「うん、どういう繋がりでそうなった?…とりあえず集合かかってるから行くぞ」
須山の言葉に俺は苦笑いしながら先輩らが作る輪に入っていった。先輩の"変わった髪型"というのは、今までは茜と似たボブヘアーだったものが、少し髪が伸びた影響か、ショートポニーテール?のような髪型になっていた。後頭部からぴょいっと飛び出している髪に、俺は似合ってるな、と。心の中で思う。
やがて先輩の話も終わり、俺たちは各々の卓球台へと移動した。まあいつも通りの先輩の話だったのだが、俺としては一つ、咳が多いのが気になった。何回か後ろを向いて咳き込む場面があり、その都度謝っていたので、大丈夫かなと俺は少し心配になったのだが…。
「なあ須山、先輩なんか咳多くなかったか?」
「うん、そうだな。確か、夏休みの終わりかけくらいからじゃなかったか?」
「え、そうだったの?お前すげぇな須山」
「ま、誰かさんと違って視野広いしなー」
「…誰のこと言ってる?」
こっちをニヤニヤしながら見てくる須山に俺は思わず苦笑しながら彼にそう言うのだった。
そして、夏休みと同じメニューをこなした俺たちは、部室まで移動して、やや疲れながらも帰る用意をしていた。その時俺は気づく。
「あ、やべ。タオル忘れてきた」
「ん?タオル?いいじゃん明日取りに行けば」
「そーだそーだ。忘れるお前が悪い」
「明日もそのタオルで汗ふけー、でも頼むからそのタオル絶対俺に近づけんなよ」
めんどくさそうな表情をしながら須山と他の卓球部員は俺にそう言う。まあ、それだけ学校の後の部活というものは疲れるのかな…?
「今から取ってくるよ…。お前らは先帰ってていいぞ。すぐ見つかるといいけど…」
「りょうかーい」
須山のそんな返事を背に、俺は卓球場へと足を進めた。近くまで行った時にふとピンポン玉の跳ねる音が聞こえた。カコンコン、カコンコンと。ラリーとはまた違った球の音が。
「ん、誰か居残り練習してるのかな」
一人呟きながら、入口からそっと中を覗く。するとそこには、
「先輩…?」
こちらに背を向けて、星本先輩が一人球を打っていた。見た感じ、サーブ練習だろうか?
黙々と一人で数をこなしているので、邪魔になると悪いと思い、俺はゆっくりと卓球場内に入ったのだが…。
「…っ、はっくしゅっ!」
唐突に鼻が痒くなり、くしゃみが出てしまった。先輩は一瞬肩をビクッとさせ、驚いた表情でこちらを振り返る。
「…あれ、佐野くんじゃん。どうしたの?」
そう言った直後に軽く咳き込んだ先輩は不思議そうな顔をした。俺は頭の後ろに手をやりながら、
「…いやぁ、タオルを忘れたので取りに来たんですけど…すみません、邪魔しちゃいましたよね…?ごめんなさい、ささっと見つけて取って帰るので、俺のことはお気になさらず…」
すると先輩は微笑を浮かべながら、
「全然大丈夫だよっ。ちょうど私も休憩しようとしてたし、一緒にタオル探そ?」
「いやいや、悪いですよ。先輩自主練してたのに」
「いいんだよいいんだよー。ちょい待ち、先にピンポン玉拾う…ってあれ、ここにあった」
落ちたピンポン玉を拾おうと屈んだ先輩だったが、同時にそのようなことを彼女は言った。再び立ち上がった先輩の手には、俺のタオルがあった。
「あ、それ。俺のタオルです!ありがとうございます!」
すると先輩はまた一度後ろを向き、何回か咳き込んだ後、俺にとことこと近づいて、
「えっ」
「はい、どーぞっ!」
わざわざタオルを広げ、俺の首に巻いてくれた。一瞬、ふわっといい匂いが香る。それにしても…、なんだろうか、近い…。
「ち、近いですよ先輩…。あと別に肩にかけてくれなくても、そのまま手に渡してくれたらよかったのに…」
「ふふっ、いいんだよ。ほんと──」
瞬間、先輩は下を向き、その直後に、今まで聞いた中で1番大きいと感じる咳がこの卓球場に響いた。先輩は何回か深くゆっくりと深呼吸をしたあと、
「ご、ごめん…。佐野くんが近くにいるのに…」
「だ、大丈夫ですけど。風邪ですか?先輩」
流石に心配になった俺はおずおずとそう尋ねた。
「気づいてた子は気づいてたかもしれないけど、そうっぽいんだよね…。ちょっと前から身体が重くてさ…。あはは」
「…体調が悪いのに、部活したんですか?」
「…だ、だって。新人戦近いんだもんっ…」
いや、だもんって。そんな上目遣いで俺のこと見られても、俺どうすりゃいいんだこれ…。とりあえず俺は先輩が心配だ…。頑張って説得してみよう。
「…でも、その新人戦で活躍するためには体調管理も大事ですよ!だからサーブ練とかも大切かもしれませんけど、体調崩せばそのサーブすら打てなくなっちゃうんですから…。今日はもう帰った方がいいですよ」
「……君、私のお母さんだったっけ?」
直後、ぷっと吹き出す先輩。こっちは心配したんだから、笑うのはどうなんだと一瞬思ったが、目の前の先輩の笑顔を見ると、そんな気持ちはすぐにどこかへと吹き飛んでしまった。
「…まあ、とりあえず帰る準備したほうがいいですよ」
「そこまで言うなら帰る用意するよ…。むー、もっと練習してたかったのになー」
「相変わらず体力お化けですね…。ま、それも先輩らしいっちゃらしいんですけどね。あはは」
「あ、笑ったね?その心、笑ってるね?」
「…ツッコミませんからね」
「…それより、手伝ってよー。1人で片付けるのはちょっと大変だよー?」
ラケットとピンポン玉を片付けた先輩は、卓球台のそばに行って、俺にそう言った。
「あ、ああ。すいません。じゃあ片付けましょうか」
そして、俺たちは卓球台とついでに窓などの施錠も2人で終わらせた。だが、その数十分の最中にも、先輩は何度か咳き込んでおり、その咳の回数が増えるほど、俺の心配も少しずつ高まっていってしまった。
そんな先輩は、ヘアバンドをゆっくりと外しながら、
「…ありがと、佐野くん。お陰で早めに片付けが終わったよ」
「いえいえ、早く帰るよう促したのは俺ですし…。手伝うのは当然ですよ。では、俺はこれで」
先輩に見つけてもらったタオルを片手に、俺はそう言いながらこの卓球場を後にしようとした。
「…ねぇ、佐野くん」
俺の足が止まったのは、その先輩の声が背中に届いた時だった。俺は身体を反転させ、
「はい?」
「……あの、今日は1人で帰るの?」
「あ、いや…。今多分校門で茜待たせちゃってるので、1人ではないですかね。どうしたんですか?」
俺がそう言うと先輩は、
「な、なんでもないない!ちょっと気になっただけ!」
と、胸の前で手を突き出してどこか申し訳なさそうにそう言った。んー、なんか変な先輩だなぁ。やっぱり掴みどころが見つからないや…。
「…そうですか?…では、多分結構待たせちゃっているので…、お先に失礼します。あ、それと。体調には気をつけてくださいよ?早く寝るんですよ?」
「……だから君私のお母さんだっけ?…あははっ」
先輩に対して俺は心配しすぎたろうか、またもや先輩に笑われてしまった。
「こっちは心配してるんですよ…。…まあ、とりあえず。今日はお疲れ様でした。先輩!お大事にです!」
「…うん。またね、佐野くん!」
苦笑いしながらそう先輩に言った俺は、この卓球場を後にするのだった。先輩、早く体調良くなってくれたらいいんだけどな…。と、そんなことを思いながら…。
「ああおはよう、母さん。うーんなんか目が覚めちゃって」
未だ重く感じる瞼をなんとかこじ開けながら、俺はイスに座る。そこには既に朝ごはんが用意されていた。
「…まあ今日から二学期だし、早いに越したことはないわよ」
「まあそうだな。んじゃ、いただきますと」
軽く合唱したのち、俺はゆっくりと朝ごはんを食らうのだった。
そして、数十分後。用意が済んだ俺は鞄を背中に、玄関へと歩を進めていった。と、ここで。俺の頭の中には一つの心配事で埋め尽くされる。
それは、いつものような光景がドアの先に広がっているのかどうかということ。もっとわかりやすく言うならば、茜と一緒に登校できるのかどうか分からないと言うことだ。
星本先輩と佐伯姉妹を再会させたあの花火大会。あの日を境に俺と茜は喋らなくなった。だけど、小さな偶然のようなものが重なり、俺と茜はついこの間久しぶりに喋ったのだ。まあまた、あの日から俺たちは実際に会話を交わしてないのだが…。
だけど、花火大会の後の空白の1ヶ月とついこの間のちょっとした空白における明確な違いというものを挙げるとするならば、この前のちょっとした空白の間はメールで多少やり取りをしていたということ。1ヶ月の空白に俺は少し反省し、あの散歩まがいなことが終わった後、頻度は多少落ちたかもしれないが、確かに連絡は取り合っていた。
しかし、そのメールのやり取りの中に今日一緒に登校するのかという旨の内容の話は出てきていなかった。散歩まがいなことをした日は、自身ではいつも通り茜とする会話ができていたような気がしたが…。茜からしたら俺と感じるものは違ってくるのだろうか。
「…ふぅ」
俺はドアの前で軽く息をついた。まあ、その答えなんてこのドアを開けてみれば分かることだ。そう思った俺はドアにゆっくりと手をかけて──。
「…あ、おはよっ!」
まだ暑さが抜けない9月の空気を一気に打ち払うような声が俺の耳に入ってくる。俺の視線の先には、隣に住む、あいつがにこにことした笑顔で俺を出迎えてくれた。
刹那、俺の心の中は安堵という言葉で埋め尽くされた。それは、ズシリと言葉と比にならない何かが、胸に詰まっていくような感じで。
「…おはよ、茜」
俺は相変わらずテンションの高いやつだな、と。そう軽く思いながら、彼女に返事を返す。
「んー?なんかテンション低くないかー?佑。今日から2学期なんだ!テンションあげてこーぜー!」
「いやだからお前のテンションにはいつまで経ってもついていける気がしないんだって…」
「え、じゃあこれくらいのテンションで行こうか」
「いやそれもなんか変だから…。程よいテンションで行ってくれ~」
今日の俺の目の前には俺が1番よく知る茜の姿があった。なんか…ちょっと安心した。花火大会で2人になった時のあの雰囲気や散歩まがいなことをした時の最後のあの雰囲気など、それを引きずっているのならちょっとこっちとしてもどう話せばいいのか迷うところであったが、俺のよく知るこの茜ならきっと俺自身も大丈夫だろう。
というわけで、久しぶりに学校へと茜と共に向かう。学校まであと半分くらいの距離になったところで茜はそういえば、と話題転換をしてきた。
「なぁ佑。宿題は終わったか?」
「…うん、オワッタヨ?」
「なんでカタコトなんだ…。それは絶対に終わってないだろ!」
「い、いやー?分かんないだろ?俺が嘘をつけいているかも」
「いや、佑は嘘つくのヘタッピだから絶対に終わってないって確信できる!こんしゅーむ!」
「こ、こんしゅーむ?って何?」
いきなりどうした?と心中で思いながら俺は思わず聞き返す。
「え?"確信する"って意味の英単語だぞ?ふふん、えらいだろ!僕はちゃんと夏休み中に英単語覚えたんだぞっ!佑と違って、なっ!」
ニッと歯を見せながら人差し指をピンと俺に向けて茜はそう言った。そんな彼女に俺は苦笑いして、
「えっ…と、ちなみに何単語?」
「150単語!」
「いや少な…」
思わずツッコんでしまった。そんなに言うなら1000語は覚えていると思ったが…。
「後ちなみにさ…。"確信する"って意味の英単語はcertainな…。これは動詞じゃなくて形容詞。そんでさっき茜が言ってたこんしゅーむ(consume)は"消費する"って意味の英単語だ。加えて言っておくと、これは動詞だ…」
「え…?」
「いやだから、確信するって意味の英単語は──」
「も、もちろん分かってたぞ!さーていん?だよな、うんうん。あれだぞあれ、佑を試すためにこう言ったんだぞぞぞ?ほんとにほんとに」
途端とんでもない早口で捲し立てるように話す茜。なんか一瞬、雫と話してるように感じたのは気のせいだろうか。
「お、おお。そうかそうか…。ありがとな?」
「いやなんで引いてるんだよ!」
「別に引いてないわ…」
目の前の信号の色を確認し、俺たちはゆっくりと自転車を一時停止させる。1学期中には何度もあった信号で止まる機会だったが、こんな何ともないことでも日常が返ってきたんだなと、俺はふと1人感情に浸る。
「佑ー、青になったぞ!行こ!」
「お、了解ー」
茜の声に我に返った俺は、ペダルに足を乗せる。
「そーいえばさ」
「うん?どうした」
少し伸びた気もするボブの髪を風に軽くなびかせる茜は俺に尋ねた。
「佑って誕生日いつなんだ?」
随分と唐突だな、とそう思いつつ俺は彼女に言う。
「…俺の誕生日?あれ、1学期とかにそれ喋らなかったっけ?」
「いやー、僕の脳にはそのような記憶がござらず…」
「最後忍者みたいになってたのは気のせい?」
俺は思わず笑みをこぼしながら茜にそう言った。
「……俺の誕生日は12月25日だよ」
「え、12月25日ってクリスマスの日じゃん!じゃああれか?誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント一緒にされるのか?」
「そう言われると思ったよ…。ま、俺の両親は優しくてな、そういうのは別々に1つずつくれるんだ」
去年もらったマフラーとイヤホンのことを思い出しながら、俺はそう言う。まあ、マフラーをつけるほど今の季節は全然涼しくなってないんだけどな…。
「へぇ!いいご両親だな!あーでも、野活の時に文句ひとつなく車に乗せてくれたこと考えたら、妥当なのかもな!」
にひひーと白い歯を見せながら微笑する茜。気のせいか茜、笑顔の回数が増えた気がする…?
「まあなー。じゃあ茜、お前の誕生日はいつなんだ?まあ双子の姉の雫も同じ誕生日だろうが…」
誕生日関連で気になった俺は茜に尋ねてみた。
「……僕の誕生日?言ってなかったっけ?」
「いやさっきの俺のマネしなくていいから…」
「んーじゃあ当ててよ!ちなみにヒントは無しな!」
「いや無しかよ!じゃあ無理じゃないか!」
「えー?わがままだなぁ。じゃあヒントは佑と同じ誕生日じゃないぞ!」
「いや分かんねえから!候補が365日ある中、1日消えただけだから!」
「もう、ぶーぶー文句ばっかだなぁ。あ!ちなみに学校着くまでに僕の誕生日当てられなかったら佑のジュース奢りな!」
「いや聞いてねえよ!しかもそれお前に有利すぎじゃねえかよ!」
「だーもう朝からうるさいな佑…。もう少し静かにしてくれないか?」
「いやお前のせいだろ!!!」
俺の渾身のツッコミが入ったところで、俺たちは学校前の最後の一本道に自転車を走らせるのだった。
財布から、ジュース一本分の小銭が消えたのはまた別のお話である…。
「佐野ー、準備しろよ」
「おおー、今行く」
放課後。おそらく日常と言ってもいいくらい浸透したこの卓球場で俺は部活の準備を始める。俺に声をかけたやつ、須山は既に着替えが完了しており、ピンポン玉やラケットを準備していた。
須山は夏休み中の部活で嫌というほど顔を合わせてきたが、俺は久しぶりに見るクラスメイトに少し嬉しさを感じた。それこそ、椛や棚橋といった夏休み中あまり接していない人たちとの会話を楽しみ、同時に課題テストが近いことを知って絶望したりした。
まあそんな午前中の短い学校を終え、今からは2学期初の部活が始まろうとしていた。2学期最初の部活も、あの人の声から始まる。
「はいはーい。始めるよみんな」
声のした方には、相変わらずのピンクのヘアバンドを頭に身につけた星本先輩の姿があった。あれ、でも…。
「なあ佐野、星本先輩ちょっと髪型変わってねえか?」
「お、おう…。ちょっと俺も思った」
「なんか知ってるの?先輩の彼氏の佐野くーん」
「うん、どういう繋がりでそうなった?…とりあえず集合かかってるから行くぞ」
須山の言葉に俺は苦笑いしながら先輩らが作る輪に入っていった。先輩の"変わった髪型"というのは、今までは茜と似たボブヘアーだったものが、少し髪が伸びた影響か、ショートポニーテール?のような髪型になっていた。後頭部からぴょいっと飛び出している髪に、俺は似合ってるな、と。心の中で思う。
やがて先輩の話も終わり、俺たちは各々の卓球台へと移動した。まあいつも通りの先輩の話だったのだが、俺としては一つ、咳が多いのが気になった。何回か後ろを向いて咳き込む場面があり、その都度謝っていたので、大丈夫かなと俺は少し心配になったのだが…。
「なあ須山、先輩なんか咳多くなかったか?」
「うん、そうだな。確か、夏休みの終わりかけくらいからじゃなかったか?」
「え、そうだったの?お前すげぇな須山」
「ま、誰かさんと違って視野広いしなー」
「…誰のこと言ってる?」
こっちをニヤニヤしながら見てくる須山に俺は思わず苦笑しながら彼にそう言うのだった。
そして、夏休みと同じメニューをこなした俺たちは、部室まで移動して、やや疲れながらも帰る用意をしていた。その時俺は気づく。
「あ、やべ。タオル忘れてきた」
「ん?タオル?いいじゃん明日取りに行けば」
「そーだそーだ。忘れるお前が悪い」
「明日もそのタオルで汗ふけー、でも頼むからそのタオル絶対俺に近づけんなよ」
めんどくさそうな表情をしながら須山と他の卓球部員は俺にそう言う。まあ、それだけ学校の後の部活というものは疲れるのかな…?
「今から取ってくるよ…。お前らは先帰ってていいぞ。すぐ見つかるといいけど…」
「りょうかーい」
須山のそんな返事を背に、俺は卓球場へと足を進めた。近くまで行った時にふとピンポン玉の跳ねる音が聞こえた。カコンコン、カコンコンと。ラリーとはまた違った球の音が。
「ん、誰か居残り練習してるのかな」
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「先輩…?」
こちらに背を向けて、星本先輩が一人球を打っていた。見た感じ、サーブ練習だろうか?
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「…っ、はっくしゅっ!」
唐突に鼻が痒くなり、くしゃみが出てしまった。先輩は一瞬肩をビクッとさせ、驚いた表情でこちらを振り返る。
「…あれ、佐野くんじゃん。どうしたの?」
そう言った直後に軽く咳き込んだ先輩は不思議そうな顔をした。俺は頭の後ろに手をやりながら、
「…いやぁ、タオルを忘れたので取りに来たんですけど…すみません、邪魔しちゃいましたよね…?ごめんなさい、ささっと見つけて取って帰るので、俺のことはお気になさらず…」
すると先輩は微笑を浮かべながら、
「全然大丈夫だよっ。ちょうど私も休憩しようとしてたし、一緒にタオル探そ?」
「いやいや、悪いですよ。先輩自主練してたのに」
「いいんだよいいんだよー。ちょい待ち、先にピンポン玉拾う…ってあれ、ここにあった」
落ちたピンポン玉を拾おうと屈んだ先輩だったが、同時にそのようなことを彼女は言った。再び立ち上がった先輩の手には、俺のタオルがあった。
「あ、それ。俺のタオルです!ありがとうございます!」
すると先輩はまた一度後ろを向き、何回か咳き込んだ後、俺にとことこと近づいて、
「えっ」
「はい、どーぞっ!」
わざわざタオルを広げ、俺の首に巻いてくれた。一瞬、ふわっといい匂いが香る。それにしても…、なんだろうか、近い…。
「ち、近いですよ先輩…。あと別に肩にかけてくれなくても、そのまま手に渡してくれたらよかったのに…」
「ふふっ、いいんだよ。ほんと──」
瞬間、先輩は下を向き、その直後に、今まで聞いた中で1番大きいと感じる咳がこの卓球場に響いた。先輩は何回か深くゆっくりと深呼吸をしたあと、
「ご、ごめん…。佐野くんが近くにいるのに…」
「だ、大丈夫ですけど。風邪ですか?先輩」
流石に心配になった俺はおずおずとそう尋ねた。
「気づいてた子は気づいてたかもしれないけど、そうっぽいんだよね…。ちょっと前から身体が重くてさ…。あはは」
「…体調が悪いのに、部活したんですか?」
「…だ、だって。新人戦近いんだもんっ…」
いや、だもんって。そんな上目遣いで俺のこと見られても、俺どうすりゃいいんだこれ…。とりあえず俺は先輩が心配だ…。頑張って説得してみよう。
「…でも、その新人戦で活躍するためには体調管理も大事ですよ!だからサーブ練とかも大切かもしれませんけど、体調崩せばそのサーブすら打てなくなっちゃうんですから…。今日はもう帰った方がいいですよ」
「……君、私のお母さんだったっけ?」
直後、ぷっと吹き出す先輩。こっちは心配したんだから、笑うのはどうなんだと一瞬思ったが、目の前の先輩の笑顔を見ると、そんな気持ちはすぐにどこかへと吹き飛んでしまった。
「…まあ、とりあえず帰る準備したほうがいいですよ」
「そこまで言うなら帰る用意するよ…。むー、もっと練習してたかったのになー」
「相変わらず体力お化けですね…。ま、それも先輩らしいっちゃらしいんですけどね。あはは」
「あ、笑ったね?その心、笑ってるね?」
「…ツッコミませんからね」
「…それより、手伝ってよー。1人で片付けるのはちょっと大変だよー?」
ラケットとピンポン玉を片付けた先輩は、卓球台のそばに行って、俺にそう言った。
「あ、ああ。すいません。じゃあ片付けましょうか」
そして、俺たちは卓球台とついでに窓などの施錠も2人で終わらせた。だが、その数十分の最中にも、先輩は何度か咳き込んでおり、その咳の回数が増えるほど、俺の心配も少しずつ高まっていってしまった。
そんな先輩は、ヘアバンドをゆっくりと外しながら、
「…ありがと、佐野くん。お陰で早めに片付けが終わったよ」
「いえいえ、早く帰るよう促したのは俺ですし…。手伝うのは当然ですよ。では、俺はこれで」
先輩に見つけてもらったタオルを片手に、俺はそう言いながらこの卓球場を後にしようとした。
「…ねぇ、佐野くん」
俺の足が止まったのは、その先輩の声が背中に届いた時だった。俺は身体を反転させ、
「はい?」
「……あの、今日は1人で帰るの?」
「あ、いや…。今多分校門で茜待たせちゃってるので、1人ではないですかね。どうしたんですか?」
俺がそう言うと先輩は、
「な、なんでもないない!ちょっと気になっただけ!」
と、胸の前で手を突き出してどこか申し訳なさそうにそう言った。んー、なんか変な先輩だなぁ。やっぱり掴みどころが見つからないや…。
「…そうですか?…では、多分結構待たせちゃっているので…、お先に失礼します。あ、それと。体調には気をつけてくださいよ?早く寝るんですよ?」
「……だから君私のお母さんだっけ?…あははっ」
先輩に対して俺は心配しすぎたろうか、またもや先輩に笑われてしまった。
「こっちは心配してるんですよ…。…まあ、とりあえず。今日はお疲れ様でした。先輩!お大事にです!」
「…うん。またね、佐野くん!」
苦笑いしながらそう先輩に言った俺は、この卓球場を後にするのだった。先輩、早く体調良くなってくれたらいいんだけどな…。と、そんなことを思いながら…。
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高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
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