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45. 放課後
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結局、俺と先輩の件の話は学校規模までことが進み、何か自分の知らない人にも謎に注目されるようになった。その中にも話しかけてくる人もいたから大変な、その日々を過ごしたのだが…。
さらに、俺が茜と下校しているのを目撃されてから、茜にも注目が行くようになってしまった。同じ卓球部に3年生の男子の先輩に元木先輩という先輩がいるのだが、その先輩は言ってた。茜も可愛いと3年生や2年生に噂が広まっているから狙ってる人がいるのだと、でも俺がいるから、やっぱり星本先輩だなと…。可愛いかったらなんでもいいんでしょうか…。俺はそう心の中で愚痴った。
第一、あの日にあの数分だけ先輩といただけでそこまで噂が流れるとは…。それだけあの先輩は人気というか、学校のマドンナ的存在だったのだろう。
「…大変なことになってますねぇ」
すると、隣の席からかかる声があった。
「ああ、椛か…。大変だよ本当に…。ここまでことが進むとは…」
「まだ2時限目終わったとこなのに佐野くん、めっちゃ疲れてるね…。今日も部活でしょ?しかも今日で1学期終わりだから、部活時間長いんじゃないの?」
「そうだなぁ、あの日からはちょうど1週間か…。何かめっちゃ長く感じたわ…」
長く感じたり短く感じたり。今の俺の体内時計は狂いに狂いまくっているようだ。まるで、動き方を忘れた秒針のように…。
「ま、まあ…。一応、誤解は解けたんでしょ?ならいいんじゃないの?」
「よ、よくねぇよ。部活がしにくいしにくい。あとほら、ドア付近見てみろよ」
「え?」
俺は苦笑いをしながら教室の前のドアを指差した。
「あ、誰かいる。…誰?」
「さぁな、これもあの先輩の逆効果だ。茜を見にくる3年の先輩が多々いるらしい…」
「今は茜トイレだからいないけど…。そんなに人気なのか、あの子も。大変だねぇ」
「他人事みたいに言うなよ…」
本当にこっちは大変なんだから、今学校に流行りみたいなものがあるとしたら間違いなくこれだろう。某動画サイトでもいるだろう?一時期めっちゃ流行ってすぐ消えていく動画投稿者が。今の状況はまさしくそのようなものだ。それと同じように今のこの状態もすぐなかったかのようになれば嬉しいのだが…。
「ま、まあ。次の大掃除の時間で学校終わりなんだから、頑張りましょ?…あ、茜が帰ってきた」
椛は俺にそう言葉をかけると、前から茜が少し疲れたような顔をして帰ってきたのに気づいた。
「お、おお…。どうした、体調悪いのか?」
「…いや、トイレから帰ってくる途中にまた知らない人から声かけられて…。対処に困る困る…」
はぁーっと深々しいため息をつきながら茜はそう言う。何か、卓球部とは全く関係のない茜にここまでさせてしまっているのは流石に申し訳なさを感じる…。
「何かごめんな?茜。申し訳ない…」
「いやいや、佑は悪くないぞ。あおちゃんの人気がそこまですごいってことだなこれは、あはは…」
もうすっかり俺の中で定着した、ショートボブの内巻きの髪型をくるくるといじりながら茜は苦笑をこぼした。
俺と先輩の噂が広まった1番の原因は俺と先輩が水道で話しているのを目撃されたかららしい。ちょうど先輩が頬を赤らめていた時があったが、その時に目撃した人がどういうわけか勘違いをして、広まり広まり…。
「全く…。人の噂は七十五日って言うけど…。これは七十五日で収まるとは思えんな…」
前から先生が入ってきたのに気づいた俺は1人小さくそう呟き、大掃除についての説明を受けるのだった。
「おい佐野、なんかお前今有名らしいな?」
「…何かそうみたいだな。お陰で大変だよ」
確か先輩とペアを組んだ日に須山は休んでいたので、そのニュースが耳に飛び込んでくるのは一段階遅かったのだろう。
「で、お前星本先輩といい感じらしいな?」
「何だよそれ、誰情報だよ?」
「そりゃーだってお前、学年じゃねぇぞ、学校のマドンナ、星本先輩とあれだけの時間喋って、なおかつめちゃめちゃ楽しそうにしてたって目撃が入るなら、誰だって気になるって!」
「え、お前俺の質問内容聞いてた?」
話がアン◯ャッシュのコントほど噛み合ってないことに気づいた俺は失笑しながら須山にはそうツッコんだ。あれだけの時間って…。数分だぞ?じゃあ放課後に2回2人きりで喋ってたのもみんなにバレたらもっとやばいことになりそうだな…。
「ま、それはともかく。今日で1学期が終わったな!そして夏祭りまであと約1週間!楽しみだぜー」
「そうだよな、お前は茜と楽しんでくるもんな」
「…いやなんで知ってんだよ!」
あの時の電話のそばに俺がいたからだよ、という言葉を胸に秘めて、俺は無言を返した。
「まあまあ、今は茜もすっかり有名人になっちゃってるからなぁ」
「そうだな、確かに…」
「はいはーい、みんな。練習始めるよ、集合!」
いつものごとく、ピンクのヘアバンドをしたキャプテン、星本先輩が部員に声をかける。学校の、マドンナねぇ…。そこまで言われると、少しは意識してしまうかな…。
そんなことを俺は考えながら部活動は今日も今日とて始まるのだった。まあ、今日は昼からだからすぐ終わりそうだな…。
「どひゃー、今日も疲れたなぁ」
「どんな声出すんだ…。まあそうだ、疲れたな」
部活をした後では絶対に見ることのできない、こんなに明るい空を見ながら、俺と須山は駐輪場へと歩を進めた。結局部活は4時には終わり、そこからはもう各自解散ということで、俺は実質オフのようなものを体感していた。
「お、佑!実くん!」
自分達のクラスの駐輪場に行くと、茜が既に自転車の横でスマホをいじりながら待っていた。軽く手を振ってくる彼女に、俺と須山は小さなそぶりで反応する。
「…テニス部もこの時間終わったのか?」
「うん!今日は早かったぞー?パパッのパッだ!」
「うんどういう擬態語?」
自転車のカゴに荷物を乗せながら俺は茜にツッコむ。すると、先に用意を終えた須山がチャリにまたがり言う。
「じゃあな!茜、佐野!」
「うん!」
そして須山は颯爽と自転車を走らせていった。その背中を見て、俺は茜に一言。
「いい感じだな、お前ら。仲が戻ってきているようで本当に安心してるよ」
「まあ、実くんが花火大会誘ってくれたってのもあるし、そこから彼とも普通に話せるようになったし…」
「そうか…。あ、花火大会といえば」
俺はあることを思い出し、茜に尋ねる。
「なあ茜。花火大会の日さ、ちょっと時間あるかな?」
「え?いや僕実くんと回るんだぞ?」
「あーいや、それは分かってる。最初15分か、須山と解散した後の15分、どっちかの時間だけ欲しいんだ」
「15分…?何で?」
「うーん、それは今はまだ、言えないかなぁ」
「何じゃそりゃ…。でもまあとにかく、考えとく」
「ほいほい、ありがとな。んじゃ、帰ろうぜー。気のせいだか知らんが、ちょくちょく視線が…さ」
周りをチラッと見ながら俺はそう言った。何人か首を向こうにそらす人がいる時点で、俺の気は間違ってなかったみたいだ。
「そ、そうだな…。と言いたいところなんだけどさ」
「うん?どうした?」
俺がそう尋ねると、茜はポケットからスマホを取り出し、慣れた手つきで、ある画面を表示。その画面を俺に見せた。
「ここ、美味しそうじゃない?それで…、よかったら今から一緒に行かないか?」
「ほー、新オープンのジェラート屋か。いいじゃん、今日も蒸し暑いし、アイス食って涼しくなるか!」
「ノンノン佑、ジェラート、な?」
「ああうぜぇ…。ほら、行くぞ!」
苦笑しながら、ペダルに足を乗せ、俺たちは校門を出るのだった。そして、数十分後、新しくオープンしたジェラート屋は意外にも近くにあり、自転車を止めるスペースも十分に完備されていたため、俺たちはそこに自転車を止め、自動ドアの先の店内に入った。空調の効いた部屋で、俺と茜の汗はそこで吹き飛ぶ。
「だはー、涼しい!」
「いやまあ、外が暑すぎるってのもあるけどな…」
お洒落な雰囲気や音楽が流れる店内で、俺と茜は2人席へと足を運んだ。向かい合いの席で、小さな机が用意されていた。
「うわー、背中の汗やばいなぁ」
「え?てことは僕の制服また透けてるんじゃ…」
「大丈夫だよ茜。君の下着は誰も興味──」
「ゴホンゴホン、ん?なんだって?」
「いいえなんでもありません…」
ブラック茜が降臨したところで、俺の笑顔は引っ込むのだった。
このジェラート屋は、ケーキ屋でケーキを買うみたいに、入口すぐにジェラートが並べられていて、全ての味で300円という、都内にしては破格の値段のジェラート屋だった。
少し行列ができていたので、俺と茜は最後尾に並ぶ。
「茜は何味食べるんだ?」
「んー?僕は…。ひみつ!」
唇の前に人差し指をピンと突き立てながら、ニッと笑う茜。…まあ、茜が多々噂になる理由は最初から分かってはいたが…。
やがて、俺たちの番が来た。
「えっと、濃厚バニラジェラートください!」
「いやあんだけ溜めといてバニラかい」
「別にいいだろ!」
「おい殴んな!」
「あのー、バニラでよかったでしょうか?」
「あ、はい…」
あ…。店員さん苦笑い…。申し訳ないです…。
「じゃあ俺は…、抹茶でお願いします」
「抹茶?何か渋くない?佑」
「いいんだよ、これくらいの渋さの方が」
「もうおっちゃんじゃん佑。年齢30歳くらいサバ読んでるだろ?」
「いやなんでだよ!」
「あのー、抹茶とバニラでよろしかったですね?」
「「あ、はい…。すいません」」
10秒間で、同じことで注意される俺と茜なのでした。本当にご迷惑をおかけしました…。
そして、お金を払って、俺たちは注文したジェラートを持って席に戻った。表面に小さな小さな氷が張っているように見えるそれは、美味しそうと感じる以外何も考えさせなかった。
「…今考えたら濃厚バニラジェラートうまそうだな…」
「ふふん、僕の選択は間違ってなかった!」
茜はそう言うと、スプーンでジェラートを掬おうとしたが、スプーンはそこで静止した。
「あれ、硬った!…まあそうか、冷やしてたんだもんな」
「え?でもこっちの抹茶はすぐ食えそうだぞ?」
俺もジェラートを掬おうとしたが、普通に掬えた。あれ、何でだろうか。
「えーずるい!」
「じゃあ先に食べますー。いただきます!」
そう言って俺はジェラートを口の中に言える。刹那、冷たさが口の中で暴れて、頭の中ではその冷たさのことしか考えられなくなった。そして遅れて抹茶の甘さがやってくる。
「うっめえ!これすごいな茜、いい店見つけたな!」
「えへへ、そうだろって僕まだ食べてないんだから分かるかー!」
すると、そんなツッコミと共に茜は身を乗り出して言った。
「なぁー、ちょっと佑の抹茶くれよー。僕のバニラ溶けるまで待ちきれないぞー」
「えー、まあいいけど、じゃあスプーンで掬えよ」
「えー?めんどくさいなぁ。ほら、あー」
その瞬間、茜は口を小さく開けた。
「え?」
「え、だからいや。くれよ、あー」
脳内の処理がバグる。こいつは今…。何をしようとしているんだ?
「だーもう察しが悪いな佑!女の子がこうしたらあーんだろうが!もたもたすんな!オラァ!」
「そんなに言葉遣いが荒い子を女の子って呼んでいいのか…??」
苦笑しながら俺はそうツッコむ。俺は、まあ…。構わないが、茜はその、大丈夫なのだろうか?
「ちょっと早くしてくれよー。この格好で待つのも結構恥ずかしいんだぞ?」
「じゃあ自分のスプーンで俺の抹茶掬えばいいだろ…」
「もうめんどくさくなっちゃった。ほら、早く」
「…………」
はーっと横を向いてため息をしたのち、俺は自分のスプーンで抹茶を一口掬い、茜の口のそばに持っていった。茜はそれを小さな口で躊躇なくパクッと食べる。瞬間、茜の目が見開いた。
「な、何だこの抹茶!めちゃめちゃ美味しいじゃないか!もう一口くれよ!」
「ダメだ。それでもう一口あげたらお前次々言って結局十口くらい食うだろ!」
「な、なぜバレてるし…」
それはそうとて、さりげなく茜は俺のをパクッと食べたが…。うん、これって…。
「な、なあ…、茜。これってさ、そ、その…。間接──」
すると、茜は右手の人差し指で俺の唇の前に軽く手を添え、
「それ以上は、言わせないぞ?僕はただ単に佑のジェラートが食べたかっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「…いやなんか頬赤くない?お前も意識してない?」
「…へっ!?こ、これは…。ほら、外が暑かったから、まだ暑いなーって…」
わざとらしく茜は手を仰ぐ。
「ったく…。恥ずかしいならしなければいいのに…」
「しょ、しょうがないだろ!気分だ気分!」
「気分ねぇ…」
俺の独り言が聞こえたのか、ムキになって反応する茜。気分でそこまでするもんかね普通…。
「…お、茜。お前のアイ…、じゃなかった。ジェラート。そろそろいい感じなんじゃ?」
「え?あ、本当だ」
気がつくと、そのジェラートはいい感じの溶け具合になっていた。おお、白色の光沢が輝いてるぞ。やっぱり濃厚バニラうまそうだなあ。
そんな俺の思いの先に、茜はスプーンでジェラートを掬い、口に持っていく。
「ん?んー!めちゃめちゃ美味しい!やっぱりアイスは王道バニラでしょ!」
「いやアイス言うてるがな茜さん…」
「あ、あはは…。失敬失敬」
あれだけこだわっておいて自分もミスるんかい。
「お?佑。その顔は…」
すると茜は分かりやすくニヤッとして、
「僕の濃厚バニラ欲しい感じですな?」
「ぐっ……」
やっぱり顔に出てたか?でもそれだけ美味しそうなんだもん…。
「べ、別に…」
「にひひっ。…ほら佑?」
俺が心中バレないようにしていると、茜は一つ微笑して、バニラを掬ったスプーンを目の前に差し出してくる。
「…なんだよ」
「ほら、食べないのか?ほらほーら」
「自分のスプーンで掬うって…」
「へぇ、人が善意でわざわざ佑の前まで持ってきたって言うのに、その善意に答えないんだ?」
ニヤッと俺をからかうかのような表情で俺を見る茜。でも、小さなスプーンの上に乗るジェラートはとても美味しそうだ…。
「………もう」
と、俺はため息のような、漏れてしまった笑みというかそのようなものをついて、
「……ん」
パクッと、茜の差し出したスプーンを咥えた。瞬間、いつも家で食べているアイスとは比べ物なならないような甘ずっぱさが口の中に広がった。抹茶とはまた違う甘さだ、本当に美味しい…!
「う、うまい…!」
俺は思わずそう口に出した。それは、茜に感想を伝えるのも兼ねてそう言ったのだが…。
「あ、あうぅ……」
「え?」
俺の目の前の少女は何故か顔を先程よりも紅く染めて、スプーンは俺の目の前で静止していた。俺が困惑していると、やがて茜は恥ずかしそうに小さく口を開いて、
「た、佑こんな恥ずかしいことしたのか…?」
「いや、これはお前が勝手に…」
頬に分かりやすい桃色の照れ顔を見せる茜。だから、恥ずかしいならなんでしたんだ…。
「む、むぅ…。なんで僕まで恥ずかしい思いをしなくちゃ…。というか…、これって、か、間接──っ…‼︎」
「おーい、茜ー?」
何やら1人の世界に入ってしまった茜。頬を両手で覆い、頭を下げて1人でぶつぶつ何か言っている。ん?湯気が出てる?え、なんで?
そんな茜に俺は、先ほどのことを思い出しながらポツリと一言。
「…間接、キ、キス…。しちゃったのかな。これ…」
互いに互いを意識してしまって今まさに溶けに溶けまくっているジェラートなど視界に入らない俺たちなのであった──。
さらに、俺が茜と下校しているのを目撃されてから、茜にも注目が行くようになってしまった。同じ卓球部に3年生の男子の先輩に元木先輩という先輩がいるのだが、その先輩は言ってた。茜も可愛いと3年生や2年生に噂が広まっているから狙ってる人がいるのだと、でも俺がいるから、やっぱり星本先輩だなと…。可愛いかったらなんでもいいんでしょうか…。俺はそう心の中で愚痴った。
第一、あの日にあの数分だけ先輩といただけでそこまで噂が流れるとは…。それだけあの先輩は人気というか、学校のマドンナ的存在だったのだろう。
「…大変なことになってますねぇ」
すると、隣の席からかかる声があった。
「ああ、椛か…。大変だよ本当に…。ここまでことが進むとは…」
「まだ2時限目終わったとこなのに佐野くん、めっちゃ疲れてるね…。今日も部活でしょ?しかも今日で1学期終わりだから、部活時間長いんじゃないの?」
「そうだなぁ、あの日からはちょうど1週間か…。何かめっちゃ長く感じたわ…」
長く感じたり短く感じたり。今の俺の体内時計は狂いに狂いまくっているようだ。まるで、動き方を忘れた秒針のように…。
「ま、まあ…。一応、誤解は解けたんでしょ?ならいいんじゃないの?」
「よ、よくねぇよ。部活がしにくいしにくい。あとほら、ドア付近見てみろよ」
「え?」
俺は苦笑いをしながら教室の前のドアを指差した。
「あ、誰かいる。…誰?」
「さぁな、これもあの先輩の逆効果だ。茜を見にくる3年の先輩が多々いるらしい…」
「今は茜トイレだからいないけど…。そんなに人気なのか、あの子も。大変だねぇ」
「他人事みたいに言うなよ…」
本当にこっちは大変なんだから、今学校に流行りみたいなものがあるとしたら間違いなくこれだろう。某動画サイトでもいるだろう?一時期めっちゃ流行ってすぐ消えていく動画投稿者が。今の状況はまさしくそのようなものだ。それと同じように今のこの状態もすぐなかったかのようになれば嬉しいのだが…。
「ま、まあ。次の大掃除の時間で学校終わりなんだから、頑張りましょ?…あ、茜が帰ってきた」
椛は俺にそう言葉をかけると、前から茜が少し疲れたような顔をして帰ってきたのに気づいた。
「お、おお…。どうした、体調悪いのか?」
「…いや、トイレから帰ってくる途中にまた知らない人から声かけられて…。対処に困る困る…」
はぁーっと深々しいため息をつきながら茜はそう言う。何か、卓球部とは全く関係のない茜にここまでさせてしまっているのは流石に申し訳なさを感じる…。
「何かごめんな?茜。申し訳ない…」
「いやいや、佑は悪くないぞ。あおちゃんの人気がそこまですごいってことだなこれは、あはは…」
もうすっかり俺の中で定着した、ショートボブの内巻きの髪型をくるくるといじりながら茜は苦笑をこぼした。
俺と先輩の噂が広まった1番の原因は俺と先輩が水道で話しているのを目撃されたかららしい。ちょうど先輩が頬を赤らめていた時があったが、その時に目撃した人がどういうわけか勘違いをして、広まり広まり…。
「全く…。人の噂は七十五日って言うけど…。これは七十五日で収まるとは思えんな…」
前から先生が入ってきたのに気づいた俺は1人小さくそう呟き、大掃除についての説明を受けるのだった。
「おい佐野、なんかお前今有名らしいな?」
「…何かそうみたいだな。お陰で大変だよ」
確か先輩とペアを組んだ日に須山は休んでいたので、そのニュースが耳に飛び込んでくるのは一段階遅かったのだろう。
「で、お前星本先輩といい感じらしいな?」
「何だよそれ、誰情報だよ?」
「そりゃーだってお前、学年じゃねぇぞ、学校のマドンナ、星本先輩とあれだけの時間喋って、なおかつめちゃめちゃ楽しそうにしてたって目撃が入るなら、誰だって気になるって!」
「え、お前俺の質問内容聞いてた?」
話がアン◯ャッシュのコントほど噛み合ってないことに気づいた俺は失笑しながら須山にはそうツッコんだ。あれだけの時間って…。数分だぞ?じゃあ放課後に2回2人きりで喋ってたのもみんなにバレたらもっとやばいことになりそうだな…。
「ま、それはともかく。今日で1学期が終わったな!そして夏祭りまであと約1週間!楽しみだぜー」
「そうだよな、お前は茜と楽しんでくるもんな」
「…いやなんで知ってんだよ!」
あの時の電話のそばに俺がいたからだよ、という言葉を胸に秘めて、俺は無言を返した。
「まあまあ、今は茜もすっかり有名人になっちゃってるからなぁ」
「そうだな、確かに…」
「はいはーい、みんな。練習始めるよ、集合!」
いつものごとく、ピンクのヘアバンドをしたキャプテン、星本先輩が部員に声をかける。学校の、マドンナねぇ…。そこまで言われると、少しは意識してしまうかな…。
そんなことを俺は考えながら部活動は今日も今日とて始まるのだった。まあ、今日は昼からだからすぐ終わりそうだな…。
「どひゃー、今日も疲れたなぁ」
「どんな声出すんだ…。まあそうだ、疲れたな」
部活をした後では絶対に見ることのできない、こんなに明るい空を見ながら、俺と須山は駐輪場へと歩を進めた。結局部活は4時には終わり、そこからはもう各自解散ということで、俺は実質オフのようなものを体感していた。
「お、佑!実くん!」
自分達のクラスの駐輪場に行くと、茜が既に自転車の横でスマホをいじりながら待っていた。軽く手を振ってくる彼女に、俺と須山は小さなそぶりで反応する。
「…テニス部もこの時間終わったのか?」
「うん!今日は早かったぞー?パパッのパッだ!」
「うんどういう擬態語?」
自転車のカゴに荷物を乗せながら俺は茜にツッコむ。すると、先に用意を終えた須山がチャリにまたがり言う。
「じゃあな!茜、佐野!」
「うん!」
そして須山は颯爽と自転車を走らせていった。その背中を見て、俺は茜に一言。
「いい感じだな、お前ら。仲が戻ってきているようで本当に安心してるよ」
「まあ、実くんが花火大会誘ってくれたってのもあるし、そこから彼とも普通に話せるようになったし…」
「そうか…。あ、花火大会といえば」
俺はあることを思い出し、茜に尋ねる。
「なあ茜。花火大会の日さ、ちょっと時間あるかな?」
「え?いや僕実くんと回るんだぞ?」
「あーいや、それは分かってる。最初15分か、須山と解散した後の15分、どっちかの時間だけ欲しいんだ」
「15分…?何で?」
「うーん、それは今はまだ、言えないかなぁ」
「何じゃそりゃ…。でもまあとにかく、考えとく」
「ほいほい、ありがとな。んじゃ、帰ろうぜー。気のせいだか知らんが、ちょくちょく視線が…さ」
周りをチラッと見ながら俺はそう言った。何人か首を向こうにそらす人がいる時点で、俺の気は間違ってなかったみたいだ。
「そ、そうだな…。と言いたいところなんだけどさ」
「うん?どうした?」
俺がそう尋ねると、茜はポケットからスマホを取り出し、慣れた手つきで、ある画面を表示。その画面を俺に見せた。
「ここ、美味しそうじゃない?それで…、よかったら今から一緒に行かないか?」
「ほー、新オープンのジェラート屋か。いいじゃん、今日も蒸し暑いし、アイス食って涼しくなるか!」
「ノンノン佑、ジェラート、な?」
「ああうぜぇ…。ほら、行くぞ!」
苦笑しながら、ペダルに足を乗せ、俺たちは校門を出るのだった。そして、数十分後、新しくオープンしたジェラート屋は意外にも近くにあり、自転車を止めるスペースも十分に完備されていたため、俺たちはそこに自転車を止め、自動ドアの先の店内に入った。空調の効いた部屋で、俺と茜の汗はそこで吹き飛ぶ。
「だはー、涼しい!」
「いやまあ、外が暑すぎるってのもあるけどな…」
お洒落な雰囲気や音楽が流れる店内で、俺と茜は2人席へと足を運んだ。向かい合いの席で、小さな机が用意されていた。
「うわー、背中の汗やばいなぁ」
「え?てことは僕の制服また透けてるんじゃ…」
「大丈夫だよ茜。君の下着は誰も興味──」
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「いいえなんでもありません…」
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少し行列ができていたので、俺と茜は最後尾に並ぶ。
「茜は何味食べるんだ?」
「んー?僕は…。ひみつ!」
唇の前に人差し指をピンと突き立てながら、ニッと笑う茜。…まあ、茜が多々噂になる理由は最初から分かってはいたが…。
やがて、俺たちの番が来た。
「えっと、濃厚バニラジェラートください!」
「いやあんだけ溜めといてバニラかい」
「別にいいだろ!」
「おい殴んな!」
「あのー、バニラでよかったでしょうか?」
「あ、はい…」
あ…。店員さん苦笑い…。申し訳ないです…。
「じゃあ俺は…、抹茶でお願いします」
「抹茶?何か渋くない?佑」
「いいんだよ、これくらいの渋さの方が」
「もうおっちゃんじゃん佑。年齢30歳くらいサバ読んでるだろ?」
「いやなんでだよ!」
「あのー、抹茶とバニラでよろしかったですね?」
「「あ、はい…。すいません」」
10秒間で、同じことで注意される俺と茜なのでした。本当にご迷惑をおかけしました…。
そして、お金を払って、俺たちは注文したジェラートを持って席に戻った。表面に小さな小さな氷が張っているように見えるそれは、美味しそうと感じる以外何も考えさせなかった。
「…今考えたら濃厚バニラジェラートうまそうだな…」
「ふふん、僕の選択は間違ってなかった!」
茜はそう言うと、スプーンでジェラートを掬おうとしたが、スプーンはそこで静止した。
「あれ、硬った!…まあそうか、冷やしてたんだもんな」
「え?でもこっちの抹茶はすぐ食えそうだぞ?」
俺もジェラートを掬おうとしたが、普通に掬えた。あれ、何でだろうか。
「えーずるい!」
「じゃあ先に食べますー。いただきます!」
そう言って俺はジェラートを口の中に言える。刹那、冷たさが口の中で暴れて、頭の中ではその冷たさのことしか考えられなくなった。そして遅れて抹茶の甘さがやってくる。
「うっめえ!これすごいな茜、いい店見つけたな!」
「えへへ、そうだろって僕まだ食べてないんだから分かるかー!」
すると、そんなツッコミと共に茜は身を乗り出して言った。
「なぁー、ちょっと佑の抹茶くれよー。僕のバニラ溶けるまで待ちきれないぞー」
「えー、まあいいけど、じゃあスプーンで掬えよ」
「えー?めんどくさいなぁ。ほら、あー」
その瞬間、茜は口を小さく開けた。
「え?」
「え、だからいや。くれよ、あー」
脳内の処理がバグる。こいつは今…。何をしようとしているんだ?
「だーもう察しが悪いな佑!女の子がこうしたらあーんだろうが!もたもたすんな!オラァ!」
「そんなに言葉遣いが荒い子を女の子って呼んでいいのか…??」
苦笑しながら俺はそうツッコむ。俺は、まあ…。構わないが、茜はその、大丈夫なのだろうか?
「ちょっと早くしてくれよー。この格好で待つのも結構恥ずかしいんだぞ?」
「じゃあ自分のスプーンで俺の抹茶掬えばいいだろ…」
「もうめんどくさくなっちゃった。ほら、早く」
「…………」
はーっと横を向いてため息をしたのち、俺は自分のスプーンで抹茶を一口掬い、茜の口のそばに持っていった。茜はそれを小さな口で躊躇なくパクッと食べる。瞬間、茜の目が見開いた。
「な、何だこの抹茶!めちゃめちゃ美味しいじゃないか!もう一口くれよ!」
「ダメだ。それでもう一口あげたらお前次々言って結局十口くらい食うだろ!」
「な、なぜバレてるし…」
それはそうとて、さりげなく茜は俺のをパクッと食べたが…。うん、これって…。
「な、なあ…、茜。これってさ、そ、その…。間接──」
すると、茜は右手の人差し指で俺の唇の前に軽く手を添え、
「それ以上は、言わせないぞ?僕はただ単に佑のジェラートが食べたかっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「…いやなんか頬赤くない?お前も意識してない?」
「…へっ!?こ、これは…。ほら、外が暑かったから、まだ暑いなーって…」
わざとらしく茜は手を仰ぐ。
「ったく…。恥ずかしいならしなければいいのに…」
「しょ、しょうがないだろ!気分だ気分!」
「気分ねぇ…」
俺の独り言が聞こえたのか、ムキになって反応する茜。気分でそこまでするもんかね普通…。
「…お、茜。お前のアイ…、じゃなかった。ジェラート。そろそろいい感じなんじゃ?」
「え?あ、本当だ」
気がつくと、そのジェラートはいい感じの溶け具合になっていた。おお、白色の光沢が輝いてるぞ。やっぱり濃厚バニラうまそうだなあ。
そんな俺の思いの先に、茜はスプーンでジェラートを掬い、口に持っていく。
「ん?んー!めちゃめちゃ美味しい!やっぱりアイスは王道バニラでしょ!」
「いやアイス言うてるがな茜さん…」
「あ、あはは…。失敬失敬」
あれだけこだわっておいて自分もミスるんかい。
「お?佑。その顔は…」
すると茜は分かりやすくニヤッとして、
「僕の濃厚バニラ欲しい感じですな?」
「ぐっ……」
やっぱり顔に出てたか?でもそれだけ美味しそうなんだもん…。
「べ、別に…」
「にひひっ。…ほら佑?」
俺が心中バレないようにしていると、茜は一つ微笑して、バニラを掬ったスプーンを目の前に差し出してくる。
「…なんだよ」
「ほら、食べないのか?ほらほーら」
「自分のスプーンで掬うって…」
「へぇ、人が善意でわざわざ佑の前まで持ってきたって言うのに、その善意に答えないんだ?」
ニヤッと俺をからかうかのような表情で俺を見る茜。でも、小さなスプーンの上に乗るジェラートはとても美味しそうだ…。
「………もう」
と、俺はため息のような、漏れてしまった笑みというかそのようなものをついて、
「……ん」
パクッと、茜の差し出したスプーンを咥えた。瞬間、いつも家で食べているアイスとは比べ物なならないような甘ずっぱさが口の中に広がった。抹茶とはまた違う甘さだ、本当に美味しい…!
「う、うまい…!」
俺は思わずそう口に出した。それは、茜に感想を伝えるのも兼ねてそう言ったのだが…。
「あ、あうぅ……」
「え?」
俺の目の前の少女は何故か顔を先程よりも紅く染めて、スプーンは俺の目の前で静止していた。俺が困惑していると、やがて茜は恥ずかしそうに小さく口を開いて、
「た、佑こんな恥ずかしいことしたのか…?」
「いや、これはお前が勝手に…」
頬に分かりやすい桃色の照れ顔を見せる茜。だから、恥ずかしいならなんでしたんだ…。
「む、むぅ…。なんで僕まで恥ずかしい思いをしなくちゃ…。というか…、これって、か、間接──っ…‼︎」
「おーい、茜ー?」
何やら1人の世界に入ってしまった茜。頬を両手で覆い、頭を下げて1人でぶつぶつ何か言っている。ん?湯気が出てる?え、なんで?
そんな茜に俺は、先ほどのことを思い出しながらポツリと一言。
「…間接、キ、キス…。しちゃったのかな。これ…」
互いに互いを意識してしまって今まさに溶けに溶けまくっているジェラートなど視界に入らない俺たちなのであった──。
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女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
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※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
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