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12. 勘違い

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「ご、ごめんって」
「もー困るぞ…。勘違いされると…」
 放課後。俺は体育の後にクラスの誤解を解き、それでもまだ疑っていた茜に1から10まで説明した。
 すると、茜は分かってくれたようで、俺と普通に話してくれるようになった。
「だ、だって……。お姉ちゃんあんなに叫んでたし…」
「ま、まあそれはしょーがないけどよ…」
 誤解が解けたと言っても、解いてくれたのはほぼ棚橋だ。あいつがちゃんとみんなに納得できるように説明をしてくれたおかげで茜は分かってくれたんだ。
 マジで誤解が解けてよかったぜ…。
「でも雫があんな行動とるなんて驚きだよ」 
「んーまあお姉ちゃんは家じゃとてつもなく甘えん坊だからなぁ…。僕に対してすごいんだぞ?家では」 
 それは分かる…。と、俺は心の中で思った。なんせ、腕にしがみついては…だいしゅきぃぃぃぃだもんな…。
 思い起こせば思い起こすほど本当にあれは寝ぼけていたとはいえ、普段とのギャップが凄すぎると感じてばっかりだ。
「お前らはいつも一緒に寝てるのか??」
 体育の時間、寝ぼけていてあの言葉が出ているのならば、いつも一緒に寝ているのだろうか。そう思った俺は茜に尋ねた。
「んん?僕たち?んー寝ているといえば寝てるけど寝ていないといえば寝ていない」 
「はい?」
 俺の頭はハテナでいっぱいだった。こいつは今何を言ったんだ??
「えーとね、僕たちって同じ部屋なんだよ。で、二段ベットで寝てるんだけど…」
「あーはいはい、なるほどね」
 『二段ベット』という単語が出た瞬間、俺は先程の茜の言い草が繋がった。
「でもお姉ちゃんたまに寝ぼけて下に降りてくるんだ。で、僕のベットに潜り込んでくるんだぞ!」
「お、おう…。そうか」 
 今日の体育の授業で大体そんなとこだろうと思った俺はそんな曖昧な返事しか返せなかった。
「何その反応ーー。まあいいか、もうすぐ家だね」
 今日は水曜日でどちらの部活もオフだったので俺は茜と帰路を辿っていた。そしていつもと同じように、
さっきみたいな雑談を続ける。
「ああそうだな。またあいつと家の前で合流しなかったらいいが……」
「まあ…、今回は状況が状況だし…」
 そんなこんなで家に着く。すると、自転車を止めている1人の少女がいた。
「げっ」
 俺は先程フラグを立ててしまったらしい。今最も俺が会いたくない少女に会ってしまった。
「……!」
 向こうも俺に気づいたのかこっちを見るや否や驚いたと一目で分かる表情をした。やべぇ、想像通り気まずいぞ…。
 その後、逃げるように家に入っていった雫。
「あー……。こんな感じなんだな、今2人って…」
 その様子を俺の横で見ていた茜はボソッと言った。
「そおなんだよーー!どーすりゃいーんだ!野活(野外活動)は1週間後なのに……」
 マジでどうしようか…。いや、今回に限っては俺は悪くないはずだ。だから…。
「茜!雫に上手いこと説得してくれないか…?」
 今回の件はクラスの人からも誤解されたが、弁明すれば誤解だったということに気づいてもらえた。だから、雫にも誤解を解きたい。
 すると、茜は即答で、
「うん、いいぞ!まあ今回はお姉ちゃんが完全に悪い方向だからな…。僕に任せろ!」
 と、言ってくれた。
「ありがとな、助かるよ…。ちなみにさ、お前あの佐川ってやつと楽しそうに話してたな」
「えっ??」
 突如俺がそう尋ねると茜は素っ頓狂なそんな声を出したあと、
「……、、、」
 なぜか黙り込んでしまった。え?何?なんなの?
照れてるの?????え?
「茜?」
 顔を見ると顔が赤くなっており、それは照れてるように見えた。やっぱり照れてた…?
「バババババババカじゃないのか!?そそそそんなあいつなんかと楽しい会話って……。そそそう見えた?」
「おおお、なんだその分かりやすい動揺は…。そして最後何かまんざらでもなく嬉しそうだったな…?」
 照れてるのか嬉しいのかよく分からない表情になった茜に俺はイジるように言った。
「そそそんなことないぞ?」
「分かりやすすぎだろ…。まあいいけどよ」
 はぁ、とため息をついた俺はそう言った。
「た、佑もいい感じじゃないか!お、お姉ちゃんと」
「いや、どこがだよ…。動揺してわけわからん事言ってる状況になってるぞお前…」
 まあでもあいつには茜が謝ってくれるからいいか。
…いや、今回は向こうが悪かったとしても一応、嫌な思いはされただろーし…。俺がやっぱり雫に謝るべきか。
 そう考えた俺はまだ少し顔の赤い茜に言った。
「茜、やっぱり俺が自分で言うよ」
「お、おおそそそうか」
「いやお前いつまで動揺してんだよ…」
まあ一応俺の話は聞いてくれたかな。うーん、でも佐伯姉妹の連絡先、妹の茜のものしか持ってないんだよな…。
「茜、6時くらいに電話かけてきてくれ」
 自分からかけるとちょっと気まずいので、電話だけかけてもらうことにした。あと、俺からかけても絶対にあいつは電話には出ないだろう。
「う、うん。分かった。6時だな?」
 今の時間は5時前くらい。少し落ち着いてから話そうと思った。
「じゃあ入ろうかね」
 言うことも言ったので家に入ろうとした俺に茜は声をかけた。
「佑ー」
「ん?なんだ?」
「えっと…、す、好きじゃないからな!?さ、佐川くんのこと…」
「いや俺何も言ってないんだが……」
 少し食い気味に、焦り気味にいう茜。
「いや、何か好きみたいな感じになってたじゃん!?だから言っとかないとなーって…」
「あ、ああ。そうかい。そりゃどーも」
 茜の言葉を軽く流した俺は家に入るのだった。
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