上 下
11 / 73

10. 6限目

しおりを挟む
 黒歴史というものは突然のごとく誕生してしまうものだ。それに同じく、俺の黒歴史がまたまた誕生してしまった。なんか転校してから黒歴史ができるスパンが早くなった気がする。
「はぁー、恥ずかしかったなぁ」
 5時限目の国語が終わり、俺は教科書等を引き出しにしまいながらそう呟いた。
 すると、その俺の独り言に反応する奴がいた。
「は、恥ずかしかったのは僕もなんだぞー!なんだ!1人だけ恥ずかしかったみたいなこと言うな!」
 頬を膨らませ、反論するように茜は言った。なんだろう、恐らく本人は怒っているんだろうが、怒りや怖さが全く伝わってこないので全然平気だ…。
「なんで怒ってんだよ…」
 ちなみに、あのことによって起きた気まずさとかは全くなかった。今もこのように平然と話している。
「別に怒ってない!ただ、あのタイミングで佑が変なことを言うからぁ!」
「やめろやめろ…。ほら、また視線が…」
「は、はぅぅ…」
 と、俺がいうとさっきまでの勢いはどこへやら、茜はすぐにしょげてまた恥ずかしがっていた。
「はは…。まさに青菜に塩だな…」
 昼休みの件があり、クラスメイトや棚橋に妙な誤解を招かれてしまったので、俺と茜が喋っていると、されたくないのに、注目されるようになってしまった。注目されるのは悪くないと思ってはいたが、ここまでに恥ずかしい注目はあまり浴びたくない。
 そんな感じで恥ずかしがる茜を見ながらそう考えていると、
「あんたらさー」
 と、もう聞き慣れた関西弁で話しかけてくる奴がいた。
「おお、棚橋」
「もう、付き合ってるのんとちゃいまっか?そこら辺はどーなのよ、佑」
 もうわざと、わざととしか言いようがないニヤニヤ度で聞いてくる棚橋。
「もうよしてくれ…。茜のメンタルがもたないぞ…。そのうちイジメ相談アンケートに書かれるかもな…」
「うえっ!?そ、それは勘弁やなぁ…。ごめんな?茜」
 と、俺の言葉に少し恐怖を覚えたのか、割と真面目な顔で照れる茜に謝る棚橋。
「いや別に大丈夫だけどー、もうなんか居づらくなっちゃってんだぞ!」
「まあそうだな…。それは俺もだ…」
 ようやく気持ちを落ち着かせることができたのか、顔の色が戻った茜はそう言い、それに俺も共感した。
「そういえば、次の6限目の授業ってなんや?」
 突如、棚橋がそう俺に尋ねた。
「次は体育だな。まあ、ペア発表した日に体育ですぐ踊るっていうのはあれだが…」
「まあまあ、後野外活動まで1週間なんだから、しょーがないと僕は思うぞ!」
「そうだな…。というかお前は知らない奴と組むんだ、緊張とかないのか?茜」
 知らない奴と組むにしては妙に組む前の緊張感というか、そういったものが茜からは感じられない。
「もちろん緊張してるけど…。喋ることができる新しい人ができるってことだから、緊張の反面、少し楽しみだ!」
「そうかそうか」
「おいー、佑ー!はやくきーや!」
 突然声が聞こえたのでそっちを見ると、体操服を持った棚橋がいた。
「女子は教室で着替えるんやろー?ほら、早く出るで!」
「おーすまんすまん!じゃな、茜」
「うん、また会えたら後でな」
 呼ばれた俺は体操服を持ち、棚橋とこの教室を後にするのだった。今の俺の心境は緊張よりも不安の指数の方が上になっている。
 ついに…、あいつと会い、踊る時が来たか…。うまくいくかなぁ…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...